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第6章 変遷する世界
177.出港(1)
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金級冒険者になった。
そして早速の国からの要請だ。
ネットもSNSもない、電話すらない世界だから、送った手紙に反応がなければどうしようもない。しかも話を聞いてみれば、マーヘ大陸カンヨン国の王に手紙を届けた使者のうち、返事を持ち帰る予定だった5名が未帰還だというではないか。
「それは心配ですよね……」
「だな……」
俺の呟きに応えてくれたのはバルドルさん。金級になると同時に正式にレイナルドパーティのメンバーになった彼だけど、合計11人の大所帯。基本的に1班、2班で別れ、2班のリーダーはバルドルさんだ。
ちなみにどっちにも所属して、どっちの後援も担当するのが俺。
僧侶だからね!
閑話休題。
国からの要請は、義務だから「受ける」一択。 レイナルドパーティ及びグランツェパーティに命じられたのはマーヘ大陸東部にあるセイス・スィンコ両国の代表者に接見し、どちらの側に付くのかを確認すること。
獄鬼を滅したい世界か、共存するために他国を支配したいカンヨン国か。
レイナルドさん曰くマーヘ大陸の北側は手遅れだそうで、スィンコ国はほぼ黒だと予想されている。
それから真っ黒な北側三国にはギァリッグの白金級冒険者が。
黒と灰色が混じる西側三国にはキクノ大陸が。
ほぼ白だろう南西側三国は、大陸内での戦及びダンジョン異常の影響で人手が足りていないオセアン大陸。
白黒が不明な南東側三国はグロット大陸が上陸し、それぞれの国の代表者と会い敵味方の区別を付けて行くことになる。
インセクツ大陸は関与しない。
次に狙われるとしたら自分の国だから積極的には動けないというのが彼らの言い分で、理解出来ないでもないけど……なんか、ちょっと、ね。
獄鬼除けの魔導具を返せとは言わないけど。
ともあれ周辺14カ国を抑えれば残るカンヨン国は面積自体それほどでもなく、俺が浄化した後で一週間も寝込んだトル国の浄化範囲に比べれば少し大きい程度。いざとなれば俺が全力でやっちゃっていいと言われている。
「俺たちが一年掛けて得た情報は共有済みだ。上陸のタイミングは8日後。2月の17日朝7時に合わせる」
レイナルドさんが皆に知らせるが「その前に」と。
俺達は今すぐに出港する旨が知らされた。
何故なら一度プラーントゥ大陸のトゥルヌソルに寄って、エレインちゃんと師匠には安全な場所で待機していてもらう事になったからだ。更に言えばエレインちゃんはしばらくレイナルドパーティのクランハウスで、ゲンジャルさんの奥さんや、双子ちゃんたちと一緒に過ごすことになる。何故って、そこならどこでも〇アでいつでもご両親と会えるからだ。
そういうわけで俺たちは船でプラーントゥ大陸を目指す。
順調に進めば約40時間の航海。
4カ月ぶりのトゥルヌソルだ。
***
「オセアン大陸の行くまでの航海でメッセンジャーが完成したようなものなので、ゲン担ぎじゃないですがこの航海中にメッセンジャーを改良したいと思います!」
いつも通りに集まった特別船室。
首を傾げる面々を代表して聞き返してくれたのは師匠だ。
「改良?」
「いまのメッセンジャーだと、例えば俺と師匠で遣り取りをして、俺の方に魔石が残った場合、次回は師匠から会話を始める事が出来ません。必要な時にどちらからでも連絡が取れるようじゃないと本当の意味で役立つとは言えないと思うんです」
「それは、まぁ……」
それぞれに思うところがあったんだろう。
レイナルドさんが難しい顔をする。
「というわけで、三連休の間にリ……主神様に訊いたんですけど、魔石って割れるんです」
「……ん?」
首を傾げるクルトさん。
ミッシェルさんが目を白黒させている。
「割る? 魔石を?」
「……えっと、これも普通は考え付かないんでしょうか」
「魔導具に魔石を設置する場合に、ぴったりと合うように削る事はあるけど、割るっていうのは聞かないかな……」
「うんうん」
ドーガさんとウーガさんが教えてくれる。
そして、アッシュさん。
「魔石を割るってどうやって?」
「魔力操作です。割りたいところにだけ耐久値以上の魔力を流すと、パカッと。せっかくだしやってみますね」
言って、このために準備していた3センチ大の雫型の魔石を採り出す。顕現すると殺人猿が現れるそれは、討滅戦の前の、第22階層で入手したものだ。
「これに、集中して魔力を流します」
普通に魔石に魔力を込めても、許容量を越えれば破裂するのだ。魔石がちょうど縦半分――断面が雫型になるように薄く魔力を流し続ければその部分から割れるのは必至。断面がザラザラになるかツルツルになるかは魔力操作次第だ。
2、3分で、説明していた通りに魔石が割れる。
「おお……」
「また信じられんことを平然と……」
色んな反応が聞こえるけど、今はとりあえず聞き流しておく。
「もとは一つの魔石だから、こうやって割れても見えない繋がりがあるんじゃないかなと思って……それを、ギァリッグ大陸の通話の魔導具、あの術式を使って、線の代わりの繋がりを補強する。その要が、メッセンジャーの術式でも使っている個人の証紋です」
説明しながら紙に書き込んでいくのを、皆が覗き込んで来る。
一つが二つになった魔石。
割れても残る繋がりを、見えない線を、二人分の魔力と証紋が補強する。
「これだと、たぶんメッセンジャーより遠くの人とも話せるような気がするんです。その分だけ魔力も消費するとは思うんですが」
「……試してみる価値はあるな」
皆の目がキラリと輝いた。
そして早速の国からの要請だ。
ネットもSNSもない、電話すらない世界だから、送った手紙に反応がなければどうしようもない。しかも話を聞いてみれば、マーヘ大陸カンヨン国の王に手紙を届けた使者のうち、返事を持ち帰る予定だった5名が未帰還だというではないか。
「それは心配ですよね……」
「だな……」
俺の呟きに応えてくれたのはバルドルさん。金級になると同時に正式にレイナルドパーティのメンバーになった彼だけど、合計11人の大所帯。基本的に1班、2班で別れ、2班のリーダーはバルドルさんだ。
ちなみにどっちにも所属して、どっちの後援も担当するのが俺。
僧侶だからね!
閑話休題。
国からの要請は、義務だから「受ける」一択。 レイナルドパーティ及びグランツェパーティに命じられたのはマーヘ大陸東部にあるセイス・スィンコ両国の代表者に接見し、どちらの側に付くのかを確認すること。
獄鬼を滅したい世界か、共存するために他国を支配したいカンヨン国か。
レイナルドさん曰くマーヘ大陸の北側は手遅れだそうで、スィンコ国はほぼ黒だと予想されている。
それから真っ黒な北側三国にはギァリッグの白金級冒険者が。
黒と灰色が混じる西側三国にはキクノ大陸が。
ほぼ白だろう南西側三国は、大陸内での戦及びダンジョン異常の影響で人手が足りていないオセアン大陸。
白黒が不明な南東側三国はグロット大陸が上陸し、それぞれの国の代表者と会い敵味方の区別を付けて行くことになる。
インセクツ大陸は関与しない。
次に狙われるとしたら自分の国だから積極的には動けないというのが彼らの言い分で、理解出来ないでもないけど……なんか、ちょっと、ね。
獄鬼除けの魔導具を返せとは言わないけど。
ともあれ周辺14カ国を抑えれば残るカンヨン国は面積自体それほどでもなく、俺が浄化した後で一週間も寝込んだトル国の浄化範囲に比べれば少し大きい程度。いざとなれば俺が全力でやっちゃっていいと言われている。
「俺たちが一年掛けて得た情報は共有済みだ。上陸のタイミングは8日後。2月の17日朝7時に合わせる」
レイナルドさんが皆に知らせるが「その前に」と。
俺達は今すぐに出港する旨が知らされた。
何故なら一度プラーントゥ大陸のトゥルヌソルに寄って、エレインちゃんと師匠には安全な場所で待機していてもらう事になったからだ。更に言えばエレインちゃんはしばらくレイナルドパーティのクランハウスで、ゲンジャルさんの奥さんや、双子ちゃんたちと一緒に過ごすことになる。何故って、そこならどこでも〇アでいつでもご両親と会えるからだ。
そういうわけで俺たちは船でプラーントゥ大陸を目指す。
順調に進めば約40時間の航海。
4カ月ぶりのトゥルヌソルだ。
***
「オセアン大陸の行くまでの航海でメッセンジャーが完成したようなものなので、ゲン担ぎじゃないですがこの航海中にメッセンジャーを改良したいと思います!」
いつも通りに集まった特別船室。
首を傾げる面々を代表して聞き返してくれたのは師匠だ。
「改良?」
「いまのメッセンジャーだと、例えば俺と師匠で遣り取りをして、俺の方に魔石が残った場合、次回は師匠から会話を始める事が出来ません。必要な時にどちらからでも連絡が取れるようじゃないと本当の意味で役立つとは言えないと思うんです」
「それは、まぁ……」
それぞれに思うところがあったんだろう。
レイナルドさんが難しい顔をする。
「というわけで、三連休の間にリ……主神様に訊いたんですけど、魔石って割れるんです」
「……ん?」
首を傾げるクルトさん。
ミッシェルさんが目を白黒させている。
「割る? 魔石を?」
「……えっと、これも普通は考え付かないんでしょうか」
「魔導具に魔石を設置する場合に、ぴったりと合うように削る事はあるけど、割るっていうのは聞かないかな……」
「うんうん」
ドーガさんとウーガさんが教えてくれる。
そして、アッシュさん。
「魔石を割るってどうやって?」
「魔力操作です。割りたいところにだけ耐久値以上の魔力を流すと、パカッと。せっかくだしやってみますね」
言って、このために準備していた3センチ大の雫型の魔石を採り出す。顕現すると殺人猿が現れるそれは、討滅戦の前の、第22階層で入手したものだ。
「これに、集中して魔力を流します」
普通に魔石に魔力を込めても、許容量を越えれば破裂するのだ。魔石がちょうど縦半分――断面が雫型になるように薄く魔力を流し続ければその部分から割れるのは必至。断面がザラザラになるかツルツルになるかは魔力操作次第だ。
2、3分で、説明していた通りに魔石が割れる。
「おお……」
「また信じられんことを平然と……」
色んな反応が聞こえるけど、今はとりあえず聞き流しておく。
「もとは一つの魔石だから、こうやって割れても見えない繋がりがあるんじゃないかなと思って……それを、ギァリッグ大陸の通話の魔導具、あの術式を使って、線の代わりの繋がりを補強する。その要が、メッセンジャーの術式でも使っている個人の証紋です」
説明しながら紙に書き込んでいくのを、皆が覗き込んで来る。
一つが二つになった魔石。
割れても残る繋がりを、見えない線を、二人分の魔力と証紋が補強する。
「これだと、たぶんメッセンジャーより遠くの人とも話せるような気がするんです。その分だけ魔力も消費するとは思うんですが」
「……試してみる価値はあるな」
皆の目がキラリと輝いた。
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