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第5章 マーへ大陸の陰謀
閑話:クルトの視点から『脆さ』※R18
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バルドルに小声で何かを伝えて去ってしまったレンくんの背中を見送るも、俺の心臓は今にも爆発しそうなくらい忙しなく動いていて、躊躇いがちに部屋に戻って来たバルドルを直視は出来なかった。
「あいつ、なんて?」
「ぇっ、あ……」
「……ゆっくりでいい」
とん、とベッドに座らされるだけでも動揺してしまう俺とは真逆に、バルドルは落ち着いた様子で返答を待っている。
……恥ずかしい。情けない。
俺ばかりが意識している。
「クルト?」
「っ……レンくんは、……主神様が借りを返したいって言っているからって……」
「借り?」
「そう。それで……」
――……リーデン様がクルトさんに借りを返したいんですって。だから、バルドルさんに正直に自分の気持ちを言えたら願い事を叶えてくれるそうです! だから、頑張って! あんまり待たせたらバルドルさんに怒られそうなのでもう行きますね……
拳を握って応援してくれたレンくんだけど、意味が解らない。
そもそも借りって何。
「主神様に貸しを作ったのか? 誰が?」
「……俺が?」
「いつ」
「さ、さぁ……」
バルドルの頭上に「?」が飛び交っている気がする。だって俺も同じ気分だ。というか、その前に言われた内容にも驚きしかなくて、正直、何を言われたのか全く理解出来ていない。
――……リーデン様からクルトさんが自力で発情を抑え込んでる、抑えが利かなくなった時に暴走して死んじゃうかもしれないって聞かされて驚いたんですからね! 無茶しないでください、薬だってあるって言ったのに頼ってくれないし……あ、その抑制剤の事なんですけど、バルドルさんに内緒にしていたの知らなくて喋っちゃったんで、フォローしておいてください……
情報が多い。
そもそも主神様って、ロテュスの創造神で、生と死を司る男神で、レンくんの番で、全部同一人物? そんな人が、神様が、俺なんかにどうするって?
暴走とか、死んじゃうとか、怖い単語がいくつも。
「どういうこと……」
改めてレンくんの言葉を思い出してみるけれど、彼を心配させて、バルドル相手に素直になれず、発情に関して頼りにしなかったから俺が暴走して死ぬ?
魔力暴走ってことだろうか。
否、暴走したからって命が脅かされるような量の魔力は持っていない。
だったら、なに。
生と死を司る主神様の借りの返し方が「死」ってこと?
願いを叶えるって、死んだら楽になるぞ、とか。
そういう……?
「ど、どうしよう……俺、死ぬのかな……?」
「な……死、って、どういうことだよ!」
「っ……」
真正面から両腕を掴まれて、驚いて顔を上げたら、思いがけず真剣な目と視線が重なった。
怒ってる……?
そうだ。
レンくんもバルドルが怒りそうって言ってた気がする。
本当になってる。
だったら、俺は本当に……?
「ご、ごめんバル……こんなことになるなんて、思ってなくて……もう少し、あと少しって、先延ばしにして……逃げてたせいで……っ」
「待て、きちんと落ち着いて話せ! レンは何て言ったんだ?」
「俺が頼らなかったからって。薬のこと」
「薬? 抑制剤のことか?」
「……っ、相談しなかったんじゃないんだ、出来なか……抑えたら、もう口実が、なくなるって」
「は?」
「だって、発情って、誰でもいいんだよ」
相手が雄なら。
体の奥まで暴いて、穿って、突いて、突いて、中に熱いものをぶちまけてくれるなら誰だっていい、それが発情だ。
気持ちなんて関係ない。
だから淫獣って蔑まれる。
こんな浅ましくて呪わしい本能は、イヌ科のそれに比べてあまりにも穢れている。
「同じだけのキレイな気持ちを返せない」
判ってる。
「でも、嬉しかったんだ」
時間が経って冷静になればなるほど自分なんかにバルドルは勿体ないと思った。イヌ科の一途さは知っている。バルドルの気持ちを疑うつもりもない。
だけど、今後もずっと続く発情が彼を裏切らないと自分自身に誓わせてもらえない。
そう考えたら……いま死ぬのは、アリなのかな……。
今この瞬間だけなら間違いなくバルドルだけの自分でいられる。
いま、だけなら。
「……好きだよ、バル」
「――」
顔を近付け、唇を重ねる。
「……後できっちりと説明してもらうからな」
生きていれば、って声はバルドルに飲み込まれた。
キスをするたび。
しっとりと汗ばんだ手に、胸に、触れるたび、あんなに拒んできた情欲が体の芯を熱く灯し耐え難い欲求となって襲い掛かって来る。
「んっ……」
何度もキスを繰り返すうちにもっと、もっと、って。
熱い。
辛い。
触って、早く。
頭の中に靄が掛かり始めて気持ち良いしか追いかけられなくなるのは発情が始まった証――。
「バル……っ、バル……」
腰を浮かせ、バルドルの足に下半身の昂ぶりを擦りつけたら、バルドルは喉を鳴らす。
大きな体が足を割って入って来て、少し乱暴に下を剥ぎ取られた。
キスしながら上着も脱がされ、口から顎、耳、首筋、肩……肉厚な舌に舐められ、齧られ、痛みすら快感に変わる。
でも、足りない。
「バルも、脱いで」
やだ。
「肌がいい」
「っ……」
脱いでほしい。
でも、離れるのは、やだ。
引き寄せる。
「待……脱げないだろ」
「ぬいでっ」
「なら少しだけ放せ」
「やっ」
「クルト」
「やだ、離れるのいや……もっと、くっついて」
「っ……おまえなぁ……」
あぁもうって苛立たし気な声がして、びりって、シャツが破けて。
「これでいいな」
「んっ……ん、あったかい……あったかい、好き……」
「……くっそかわだなおまえマジで……っ」
吐息が熱い。
声にも、言葉にもゾクゾクして、腰を揺らしたら気持ちいい熱が擦れて止まらなくなる。
「はんっ、ぁっ、あ、んっ」
「イイか」
「ん、気持ちいっ、もっと、もっとして」
「クルト」
「バル……っ」
雄の証同士が擦れ合って、ぐちゅぐちゅ、ヤラシイ音がする。
気持ち良い。
でも、くれるなら中が良い。
外に出しちゃうのは勿体ない。
「バル、奥……ここ、おく、欲し……っ」
***
読んでいただきありがとうございます。
クルト視点ではエッチなの描くのは限界が! 修行不足です……明日もう一話、俯瞰視点でお届けます。R18です、ご注意下さい。
「あいつ、なんて?」
「ぇっ、あ……」
「……ゆっくりでいい」
とん、とベッドに座らされるだけでも動揺してしまう俺とは真逆に、バルドルは落ち着いた様子で返答を待っている。
……恥ずかしい。情けない。
俺ばかりが意識している。
「クルト?」
「っ……レンくんは、……主神様が借りを返したいって言っているからって……」
「借り?」
「そう。それで……」
――……リーデン様がクルトさんに借りを返したいんですって。だから、バルドルさんに正直に自分の気持ちを言えたら願い事を叶えてくれるそうです! だから、頑張って! あんまり待たせたらバルドルさんに怒られそうなのでもう行きますね……
拳を握って応援してくれたレンくんだけど、意味が解らない。
そもそも借りって何。
「主神様に貸しを作ったのか? 誰が?」
「……俺が?」
「いつ」
「さ、さぁ……」
バルドルの頭上に「?」が飛び交っている気がする。だって俺も同じ気分だ。というか、その前に言われた内容にも驚きしかなくて、正直、何を言われたのか全く理解出来ていない。
――……リーデン様からクルトさんが自力で発情を抑え込んでる、抑えが利かなくなった時に暴走して死んじゃうかもしれないって聞かされて驚いたんですからね! 無茶しないでください、薬だってあるって言ったのに頼ってくれないし……あ、その抑制剤の事なんですけど、バルドルさんに内緒にしていたの知らなくて喋っちゃったんで、フォローしておいてください……
情報が多い。
そもそも主神様って、ロテュスの創造神で、生と死を司る男神で、レンくんの番で、全部同一人物? そんな人が、神様が、俺なんかにどうするって?
暴走とか、死んじゃうとか、怖い単語がいくつも。
「どういうこと……」
改めてレンくんの言葉を思い出してみるけれど、彼を心配させて、バルドル相手に素直になれず、発情に関して頼りにしなかったから俺が暴走して死ぬ?
魔力暴走ってことだろうか。
否、暴走したからって命が脅かされるような量の魔力は持っていない。
だったら、なに。
生と死を司る主神様の借りの返し方が「死」ってこと?
願いを叶えるって、死んだら楽になるぞ、とか。
そういう……?
「ど、どうしよう……俺、死ぬのかな……?」
「な……死、って、どういうことだよ!」
「っ……」
真正面から両腕を掴まれて、驚いて顔を上げたら、思いがけず真剣な目と視線が重なった。
怒ってる……?
そうだ。
レンくんもバルドルが怒りそうって言ってた気がする。
本当になってる。
だったら、俺は本当に……?
「ご、ごめんバル……こんなことになるなんて、思ってなくて……もう少し、あと少しって、先延ばしにして……逃げてたせいで……っ」
「待て、きちんと落ち着いて話せ! レンは何て言ったんだ?」
「俺が頼らなかったからって。薬のこと」
「薬? 抑制剤のことか?」
「……っ、相談しなかったんじゃないんだ、出来なか……抑えたら、もう口実が、なくなるって」
「は?」
「だって、発情って、誰でもいいんだよ」
相手が雄なら。
体の奥まで暴いて、穿って、突いて、突いて、中に熱いものをぶちまけてくれるなら誰だっていい、それが発情だ。
気持ちなんて関係ない。
だから淫獣って蔑まれる。
こんな浅ましくて呪わしい本能は、イヌ科のそれに比べてあまりにも穢れている。
「同じだけのキレイな気持ちを返せない」
判ってる。
「でも、嬉しかったんだ」
時間が経って冷静になればなるほど自分なんかにバルドルは勿体ないと思った。イヌ科の一途さは知っている。バルドルの気持ちを疑うつもりもない。
だけど、今後もずっと続く発情が彼を裏切らないと自分自身に誓わせてもらえない。
そう考えたら……いま死ぬのは、アリなのかな……。
今この瞬間だけなら間違いなくバルドルだけの自分でいられる。
いま、だけなら。
「……好きだよ、バル」
「――」
顔を近付け、唇を重ねる。
「……後できっちりと説明してもらうからな」
生きていれば、って声はバルドルに飲み込まれた。
キスをするたび。
しっとりと汗ばんだ手に、胸に、触れるたび、あんなに拒んできた情欲が体の芯を熱く灯し耐え難い欲求となって襲い掛かって来る。
「んっ……」
何度もキスを繰り返すうちにもっと、もっと、って。
熱い。
辛い。
触って、早く。
頭の中に靄が掛かり始めて気持ち良いしか追いかけられなくなるのは発情が始まった証――。
「バル……っ、バル……」
腰を浮かせ、バルドルの足に下半身の昂ぶりを擦りつけたら、バルドルは喉を鳴らす。
大きな体が足を割って入って来て、少し乱暴に下を剥ぎ取られた。
キスしながら上着も脱がされ、口から顎、耳、首筋、肩……肉厚な舌に舐められ、齧られ、痛みすら快感に変わる。
でも、足りない。
「バルも、脱いで」
やだ。
「肌がいい」
「っ……」
脱いでほしい。
でも、離れるのは、やだ。
引き寄せる。
「待……脱げないだろ」
「ぬいでっ」
「なら少しだけ放せ」
「やっ」
「クルト」
「やだ、離れるのいや……もっと、くっついて」
「っ……おまえなぁ……」
あぁもうって苛立たし気な声がして、びりって、シャツが破けて。
「これでいいな」
「んっ……ん、あったかい……あったかい、好き……」
「……くっそかわだなおまえマジで……っ」
吐息が熱い。
声にも、言葉にもゾクゾクして、腰を揺らしたら気持ちいい熱が擦れて止まらなくなる。
「はんっ、ぁっ、あ、んっ」
「イイか」
「ん、気持ちいっ、もっと、もっとして」
「クルト」
「バル……っ」
雄の証同士が擦れ合って、ぐちゅぐちゅ、ヤラシイ音がする。
気持ち良い。
でも、くれるなら中が良い。
外に出しちゃうのは勿体ない。
「バル、奥……ここ、おく、欲し……っ」
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読んでいただきありがとうございます。
クルト視点ではエッチなの描くのは限界が! 修行不足です……明日もう一話、俯瞰視点でお届けます。R18です、ご注意下さい。
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