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第5章 マーへ大陸の陰謀
139.大人の階0.3段※R18
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ふわふわする。
キスされているだけなのに触れ方が変わるとゾクッと来る箇所も違って、そもそも経験の乏しい俺は腕を突っ張るのを我慢するので精一杯だった。
恥ずかしい。
気持ちいい。
逃げたい。
……なのに、止めて欲しくない。
「っは……」
吐く息まで囚われる。
「おいで」
「ぁ……」
腕を引かれて抱き上げられ、気付けばソファに座る彼の膝の上に横抱きにされていたのだが、向きがおかしい。俺の背中にソファの背もたれがある。
腰をしっかりとリーデン様の腕にホールドされ、彼と、ソファの肘置きに体を挟まれてしまっていた。
「あの……」
「この体勢の方が顔が見易い」
「っ」
一気に顔が赤くなり、リーデン様は微笑う。
と、もう一度キスをされる。
下唇を食まれて驚き、開いた口に舌が入って来るけど、どうしたらいいか判らなくて、焦る。邪魔しないように避けておくのが正解なのか、それとも、……それとも?
「ふっ……」
困って手を握ったらリーデン様が笑うのが聞こえる。
腰をホールドしているのとは逆の手が背中を撫で下ろして下着の中に入り、尻を撫でるようにしながら着衣を脱がして――。
「っ、や……んんっ」
思わず上げかけた拒否の言葉を、またキスで奪われた。
口と口を重ねたままリーデン様の手は寝間着から俺の足を抜いてしまう。下着もだ。素肌が外気に晒されてヒヤリとするのに、それが何も身に付けていないせいだと思うと恥ずかしくて火照る。
「ひぃぁ……っ」
ふにっ、て。
物心ついてから初めて他人にそこを触られた。
触られて……っ。
「きちんと剥けているのだな」
「っ……」
そりゃあ毎日ちゃんとお風呂で清潔にしてますから⁈
この身体になって二年半、ちゃんと洗っていれば人並みに剥けるでしょ!
「ふっ……ふふっ……おまえは、何でも顔に出るな」
「ぇ……」
「良い。……せっかくの師からの厚意だ、ありがたく使わせてもらおう」
言ったリーデン様が手を伸ばした先には師匠から渡された薬が並んでいて、その中から手に取ったのは催淫剤入りの粘液……いわゆるローションで。
「待っ、あのっ」
「心配ない、これに含まれている催淫成分など少し温かくなる程度だ」
「あた……?」
温かくなるから何なんだろう。
そんな変化に催淫なんて文字がつく意味が解らない。判らなくて戸惑っている間に栓が抜かれて。
「ひゃっ⁈」
とろりと注がれた先は。
「……っ」
目の前でとろとろの液体を垂らす自分の性器に羞恥を煽られる。
「や、やだリーデン様……!」
逃げようとして、でも腰を抱く腕は決して緩まなくて。
半分くらい中身が残った瓶をテーブルに戻した彼は、空いたその手を当たり前みたいに俺の股間に置いて、粘液で全体を覆うように撫で始めた。
「やっ……ぁ……」
撫でられる。
優しく、ゆっくり、やわやわと。リーデン様の男らしい大きな手に弄ばれる自分の性器に目を奪われて、俺は、彼の視線が自分の顔を観察していることに気付かなかった。
足を閉じても太腿の間から手を差し入れられる。
ローションのせいでどんなに必死に閉じても意味がない。
手で抑えようとしたって、俺の力じゃ敵わない。
……熱い。
腿も、そこも、彼の手も。
「ひぅっ」
「ああ、反応して来たな」
緩く勃ち上がり始めたことを指摘されて顔の熱が増す。もうやめてと言い掛けて、顔を上げた瞬間に重なった視線に全部消えた。
リーデン様はいつもの彼じゃなかった。
優しい瞳じゃない。
でも、俺を。
「っ……」
唇を重ねられ、言葉を奪われ、握られた右手は俺の腰を抱くリーデン様の手に移されて優しく拘束される。
「ぁっ」
もう一方の手はリーデン様の首に回されて、キスされてしまうと、もう俺には身動きのしようがない。
「ふっ……んんっ」
ゆっくり、ゆっくりと、俺のそこを握ったリーデン様の手が上下に動く。
丁寧に粘液を広げるように、塗りつけるように。
それがあまりにもじれったくて、もっと、って。
「ふっ……」
リーデン様の含み笑い。
あえて耳元に囁くのは彼らしくない物言いの。
「経験などないと言うくせに腰の振り方は知っているのか」
「――っ……!」
ひどい言われように無意識に強請っていた事を思い知らされて、でも悲しいとか恥ずかしいより、体の中心を震わせたのは誤魔化しようのない情欲。
「ぁっ……」
そこはすっかり勃ち上がっていた。
「……レンが責められたいタイプだったとは、な。それとも実際に酷くする方が好みか?」
「違っ……は、恥ずかしくてっ、過剰に反応するだけです!」
「ふはっ。なるほど、物は言い様だ」
「本当に違くて……っ」
チュッ、と。
音を立てて眦に落とされたキス。
「涙も可愛らしいが、……泣かせるのは私の好みではないな。これから二人でちょうどいいところを探っていこう」
「普通でいいです……っ」
「ああ。俺たちの普通を」
言って、またキスされて。
「このまま俺にされるのと、俺に見られながら自分でするのと、どちらがいい?」
「え? っぅ……」
ヌルヌルのそこを上下に撫でながらリーデン様が微笑う。
って、どうもこうもない。
リーデン様にしてもらうか、彼の目の前で自慰するかって、そんな。
「ぃ、意地悪だ……っ」
「くくく……泣かせたくはないが、泣きそうな顔を見るのは好きかもしれない」
「~~っ」
ひどい。
変態。
バカっ!
内心でいろいろ毒づいてみるけど自覚したあれこれで全部ブーメランに乗って返って来る。
「レン、どうする?」
「ぁっ……」
しかも触りながら聞かないで欲しい。
っていうか、そんな、見られながら自分で、なんて無理に決まってる。
「ぉ……お願い、します……っ」
泣きそうになりながら訴えたら、リーデン様はそれはもうイイ笑顔で「素晴らしいな」と宣った。
それから10分ほどかけて、ゆっくりと、丁寧に、絶対に俺が痛がらないよう気を遣いつつも反応を愉しんでいたリーデン様の手で達した。
俺は声を抑えるのに必死で途中から何が何だか分からなくなったけど、対してリーデン様はとても満足そう。
「これで体も大人の仲間入りか、おめでとう」
この人の笑顔がこんなにもイラついたのは初めてかもしれない!
だって当たり前のような顔して手を……俺が出したものが付いてる手を舐めるんだよ、信じられない、こっちの心臓が保たない!
「ほんともう止めてもらって良いですかっ!」
「何故だ。意外に甘いぞ」
「は?」
「舐めてみるか?」
「要りません!!」
指先を差し出されたので全力で拒否した。
自分で出したもの……じ、自分で出し……っ。
「初心者なんですからもう少し加減してください……っ」
「俺も初心者だが」
「絶対に嘘ですね!」
「……ほう? つまりもっと虐めて欲しいと」
「言ってません!!」
いますぐにでもパジャマを着直して隠したいのに、下半身がヌルヌルしているからもう一度お風呂に入る必要があるし、お風呂へ行くには立ち上がらないといけないのに腰が抜けたみたいに動けない。
「俺が落ち着くまでちょっと天界に行っててもらっていいですか」
「イヤだ」
「っ……恥ずかしいので!」
「服を着ればいいだろう」
「こっ、このままじゃ、着れないから……っ」
「あぁそんなことか」
言うが早いか発動される完璧な洗浄魔法。
リーデン様は余裕綽々の顔で笑っているから、俺は内心で吼えるしかない。あああああ。
「少しは落ち着いたか」
「知りませんっ」
せめてもの抵抗で目線を逸らすも、大した効果はないらしい。リーデン様はやっぱり満足そうな笑みを浮かべていて、俺の腰を引き寄せて髪に、頬に、キスをくれる。
「レン」
「……」
「レン。ありがとう」
「……ズルいっ」
「ん?」
「そんなふうに言われたら怒っている俺が悪いみたいじゃないですか」
「とても可愛いと思うが」
「……っ」
こういうの、なんだっけ。
暖簾に腕押し?
糠に釘?
「ご機嫌ですね」
「当然だ。レンが好きだと言ってくれたんだぞ」
「だからって……」
「嬉しかったんだ」
真っ直ぐに向けられる温かな眼差し。
「ようやく、本当におまえに選ばれたのだと実感出来たんだ……これを喜ばずしてどうする」
「……待たせてごめんなさい」
「謝る必要などない。はっきりとした言葉が欲しかったのは私の我儘だからな……ただ、おまえの言葉一つに、こんなにも心が温かく、顔が緩むとは思わなかった。自分で思っていた以上におまえに惚れていたらしい」
「っ……」
あーあーあー、もう何なんですかこのひと。
可愛いが過ぎませんかっ。
どんだけですか!
「リーデン様」
「ん?」
「その……儀式を受けるには、教会に行くんですよね? オセアン大陸の帝都では、冬の儀式がいつ行われるかわかりますか?」
「大きな街ならば1月の25日から3日間ではないか」
「ってことは27日が『雌雄別の儀』ですね」
「そうだろうな。だが、レンが行く必要はないだろう」
「で、も……教会が……」
「問題ない、この場で出来る」
「は?」
「俺を誰だと思っているんだ」
びっくりした。
教会に行くように言っていたのはリーデン様なのにと言ったら、あれはこういうふうに一緒に過ごす以前の指示だっただろうと微笑まれた。
「レンは成人の儀を見たのだったか」
「はい」
「あれと変わらぬ。祈る者の頭上から光が吸い込まれ、終わりだ。ただし『雌雄別の儀』を受けた者は夜に体調不良を起こす」
「えっ」
「具合が悪いと思ったら寝れば良い。目が覚めたら体が作り変わっている」
「……それで終わりですか?」
「終わりだ」
「……たった一晩?」
「レンが許可をくれるなら今すぐにでも術式を飲み込ませ、明日の朝には俺を受け入れられる体に変えてしまえるぞ」
「……っ」
「どうする?」
どうするって?
え、そんな簡単に?
動揺し過ぎて考えが纏まらない。
「あの……ちなみに、雌体になったとして、その……相談事が、実はもう一つあって」
「なんだ」
「ロテュスの現状はどこまでご存知なんですか?」
「主神として必要な分はすべて把握している」
「じゃあ、マーヘ大陸との戦争の可能性も……」
「ああ」
「……その、本当に開戦って事になると、誕生日から一週間も休むのは難しくて。雌体になると、いろいろ楽って聞いて……出来ればしょ、初夜? それを前倒しというか……分割してもらう事って出来ませんか……?」
「構わないが」
「やっぱりそうですよね、でも獄鬼の、……え?」
予想外の返答に一瞬だが頭が真っ白になった。
まさかそんなあっさりと受け入れられるとは思わないじゃないか。
「いいんですか?」
「ああ」
「どうしてですか!」
「どうしてとは?」
「だってあんなに……っ、3日じゃダメだ絶対に一週間だって……!」
「それはおまえが「待て」ばかり言うからだ」
「――」
「さっきも言っただろう、誕生日からの一週間はおまえから「したい」と言わせるためのものだったと。事前に決めておけば覚悟も決まり、逃げる事はないだろうと考えた。だが、既に雌体になると決意し、好きだと伝えてくれたおまえは、こうして触れることを許してくれた。あのような薬まで用意して……いつでも構わないと、そういう意味に受け取っていいのだろう?」
その事実があれば充分だと彼は微笑む。
「……そんなに不安だったんですか?」
「ああ」
「神様なのに?」
「おまえの隣では一人の男だ」
「っ……」
くっつきたい。
普段なら躊躇っていたとこだけど、今だけは衝動に従って彼に抱き着いた。
「……大好きです、リーデン様」
「ああ……好きだ……レン。おまえが、好きだ」
抱き締めあって、口付けて。
俺はその場で『雌雄別の儀』をお願いした。
キスされているだけなのに触れ方が変わるとゾクッと来る箇所も違って、そもそも経験の乏しい俺は腕を突っ張るのを我慢するので精一杯だった。
恥ずかしい。
気持ちいい。
逃げたい。
……なのに、止めて欲しくない。
「っは……」
吐く息まで囚われる。
「おいで」
「ぁ……」
腕を引かれて抱き上げられ、気付けばソファに座る彼の膝の上に横抱きにされていたのだが、向きがおかしい。俺の背中にソファの背もたれがある。
腰をしっかりとリーデン様の腕にホールドされ、彼と、ソファの肘置きに体を挟まれてしまっていた。
「あの……」
「この体勢の方が顔が見易い」
「っ」
一気に顔が赤くなり、リーデン様は微笑う。
と、もう一度キスをされる。
下唇を食まれて驚き、開いた口に舌が入って来るけど、どうしたらいいか判らなくて、焦る。邪魔しないように避けておくのが正解なのか、それとも、……それとも?
「ふっ……」
困って手を握ったらリーデン様が笑うのが聞こえる。
腰をホールドしているのとは逆の手が背中を撫で下ろして下着の中に入り、尻を撫でるようにしながら着衣を脱がして――。
「っ、や……んんっ」
思わず上げかけた拒否の言葉を、またキスで奪われた。
口と口を重ねたままリーデン様の手は寝間着から俺の足を抜いてしまう。下着もだ。素肌が外気に晒されてヒヤリとするのに、それが何も身に付けていないせいだと思うと恥ずかしくて火照る。
「ひぃぁ……っ」
ふにっ、て。
物心ついてから初めて他人にそこを触られた。
触られて……っ。
「きちんと剥けているのだな」
「っ……」
そりゃあ毎日ちゃんとお風呂で清潔にしてますから⁈
この身体になって二年半、ちゃんと洗っていれば人並みに剥けるでしょ!
「ふっ……ふふっ……おまえは、何でも顔に出るな」
「ぇ……」
「良い。……せっかくの師からの厚意だ、ありがたく使わせてもらおう」
言ったリーデン様が手を伸ばした先には師匠から渡された薬が並んでいて、その中から手に取ったのは催淫剤入りの粘液……いわゆるローションで。
「待っ、あのっ」
「心配ない、これに含まれている催淫成分など少し温かくなる程度だ」
「あた……?」
温かくなるから何なんだろう。
そんな変化に催淫なんて文字がつく意味が解らない。判らなくて戸惑っている間に栓が抜かれて。
「ひゃっ⁈」
とろりと注がれた先は。
「……っ」
目の前でとろとろの液体を垂らす自分の性器に羞恥を煽られる。
「や、やだリーデン様……!」
逃げようとして、でも腰を抱く腕は決して緩まなくて。
半分くらい中身が残った瓶をテーブルに戻した彼は、空いたその手を当たり前みたいに俺の股間に置いて、粘液で全体を覆うように撫で始めた。
「やっ……ぁ……」
撫でられる。
優しく、ゆっくり、やわやわと。リーデン様の男らしい大きな手に弄ばれる自分の性器に目を奪われて、俺は、彼の視線が自分の顔を観察していることに気付かなかった。
足を閉じても太腿の間から手を差し入れられる。
ローションのせいでどんなに必死に閉じても意味がない。
手で抑えようとしたって、俺の力じゃ敵わない。
……熱い。
腿も、そこも、彼の手も。
「ひぅっ」
「ああ、反応して来たな」
緩く勃ち上がり始めたことを指摘されて顔の熱が増す。もうやめてと言い掛けて、顔を上げた瞬間に重なった視線に全部消えた。
リーデン様はいつもの彼じゃなかった。
優しい瞳じゃない。
でも、俺を。
「っ……」
唇を重ねられ、言葉を奪われ、握られた右手は俺の腰を抱くリーデン様の手に移されて優しく拘束される。
「ぁっ」
もう一方の手はリーデン様の首に回されて、キスされてしまうと、もう俺には身動きのしようがない。
「ふっ……んんっ」
ゆっくり、ゆっくりと、俺のそこを握ったリーデン様の手が上下に動く。
丁寧に粘液を広げるように、塗りつけるように。
それがあまりにもじれったくて、もっと、って。
「ふっ……」
リーデン様の含み笑い。
あえて耳元に囁くのは彼らしくない物言いの。
「経験などないと言うくせに腰の振り方は知っているのか」
「――っ……!」
ひどい言われように無意識に強請っていた事を思い知らされて、でも悲しいとか恥ずかしいより、体の中心を震わせたのは誤魔化しようのない情欲。
「ぁっ……」
そこはすっかり勃ち上がっていた。
「……レンが責められたいタイプだったとは、な。それとも実際に酷くする方が好みか?」
「違っ……は、恥ずかしくてっ、過剰に反応するだけです!」
「ふはっ。なるほど、物は言い様だ」
「本当に違くて……っ」
チュッ、と。
音を立てて眦に落とされたキス。
「涙も可愛らしいが、……泣かせるのは私の好みではないな。これから二人でちょうどいいところを探っていこう」
「普通でいいです……っ」
「ああ。俺たちの普通を」
言って、またキスされて。
「このまま俺にされるのと、俺に見られながら自分でするのと、どちらがいい?」
「え? っぅ……」
ヌルヌルのそこを上下に撫でながらリーデン様が微笑う。
って、どうもこうもない。
リーデン様にしてもらうか、彼の目の前で自慰するかって、そんな。
「ぃ、意地悪だ……っ」
「くくく……泣かせたくはないが、泣きそうな顔を見るのは好きかもしれない」
「~~っ」
ひどい。
変態。
バカっ!
内心でいろいろ毒づいてみるけど自覚したあれこれで全部ブーメランに乗って返って来る。
「レン、どうする?」
「ぁっ……」
しかも触りながら聞かないで欲しい。
っていうか、そんな、見られながら自分で、なんて無理に決まってる。
「ぉ……お願い、します……っ」
泣きそうになりながら訴えたら、リーデン様はそれはもうイイ笑顔で「素晴らしいな」と宣った。
それから10分ほどかけて、ゆっくりと、丁寧に、絶対に俺が痛がらないよう気を遣いつつも反応を愉しんでいたリーデン様の手で達した。
俺は声を抑えるのに必死で途中から何が何だか分からなくなったけど、対してリーデン様はとても満足そう。
「これで体も大人の仲間入りか、おめでとう」
この人の笑顔がこんなにもイラついたのは初めてかもしれない!
だって当たり前のような顔して手を……俺が出したものが付いてる手を舐めるんだよ、信じられない、こっちの心臓が保たない!
「ほんともう止めてもらって良いですかっ!」
「何故だ。意外に甘いぞ」
「は?」
「舐めてみるか?」
「要りません!!」
指先を差し出されたので全力で拒否した。
自分で出したもの……じ、自分で出し……っ。
「初心者なんですからもう少し加減してください……っ」
「俺も初心者だが」
「絶対に嘘ですね!」
「……ほう? つまりもっと虐めて欲しいと」
「言ってません!!」
いますぐにでもパジャマを着直して隠したいのに、下半身がヌルヌルしているからもう一度お風呂に入る必要があるし、お風呂へ行くには立ち上がらないといけないのに腰が抜けたみたいに動けない。
「俺が落ち着くまでちょっと天界に行っててもらっていいですか」
「イヤだ」
「っ……恥ずかしいので!」
「服を着ればいいだろう」
「こっ、このままじゃ、着れないから……っ」
「あぁそんなことか」
言うが早いか発動される完璧な洗浄魔法。
リーデン様は余裕綽々の顔で笑っているから、俺は内心で吼えるしかない。あああああ。
「少しは落ち着いたか」
「知りませんっ」
せめてもの抵抗で目線を逸らすも、大した効果はないらしい。リーデン様はやっぱり満足そうな笑みを浮かべていて、俺の腰を引き寄せて髪に、頬に、キスをくれる。
「レン」
「……」
「レン。ありがとう」
「……ズルいっ」
「ん?」
「そんなふうに言われたら怒っている俺が悪いみたいじゃないですか」
「とても可愛いと思うが」
「……っ」
こういうの、なんだっけ。
暖簾に腕押し?
糠に釘?
「ご機嫌ですね」
「当然だ。レンが好きだと言ってくれたんだぞ」
「だからって……」
「嬉しかったんだ」
真っ直ぐに向けられる温かな眼差し。
「ようやく、本当におまえに選ばれたのだと実感出来たんだ……これを喜ばずしてどうする」
「……待たせてごめんなさい」
「謝る必要などない。はっきりとした言葉が欲しかったのは私の我儘だからな……ただ、おまえの言葉一つに、こんなにも心が温かく、顔が緩むとは思わなかった。自分で思っていた以上におまえに惚れていたらしい」
「っ……」
あーあーあー、もう何なんですかこのひと。
可愛いが過ぎませんかっ。
どんだけですか!
「リーデン様」
「ん?」
「その……儀式を受けるには、教会に行くんですよね? オセアン大陸の帝都では、冬の儀式がいつ行われるかわかりますか?」
「大きな街ならば1月の25日から3日間ではないか」
「ってことは27日が『雌雄別の儀』ですね」
「そうだろうな。だが、レンが行く必要はないだろう」
「で、も……教会が……」
「問題ない、この場で出来る」
「は?」
「俺を誰だと思っているんだ」
びっくりした。
教会に行くように言っていたのはリーデン様なのにと言ったら、あれはこういうふうに一緒に過ごす以前の指示だっただろうと微笑まれた。
「レンは成人の儀を見たのだったか」
「はい」
「あれと変わらぬ。祈る者の頭上から光が吸い込まれ、終わりだ。ただし『雌雄別の儀』を受けた者は夜に体調不良を起こす」
「えっ」
「具合が悪いと思ったら寝れば良い。目が覚めたら体が作り変わっている」
「……それで終わりですか?」
「終わりだ」
「……たった一晩?」
「レンが許可をくれるなら今すぐにでも術式を飲み込ませ、明日の朝には俺を受け入れられる体に変えてしまえるぞ」
「……っ」
「どうする?」
どうするって?
え、そんな簡単に?
動揺し過ぎて考えが纏まらない。
「あの……ちなみに、雌体になったとして、その……相談事が、実はもう一つあって」
「なんだ」
「ロテュスの現状はどこまでご存知なんですか?」
「主神として必要な分はすべて把握している」
「じゃあ、マーヘ大陸との戦争の可能性も……」
「ああ」
「……その、本当に開戦って事になると、誕生日から一週間も休むのは難しくて。雌体になると、いろいろ楽って聞いて……出来ればしょ、初夜? それを前倒しというか……分割してもらう事って出来ませんか……?」
「構わないが」
「やっぱりそうですよね、でも獄鬼の、……え?」
予想外の返答に一瞬だが頭が真っ白になった。
まさかそんなあっさりと受け入れられるとは思わないじゃないか。
「いいんですか?」
「ああ」
「どうしてですか!」
「どうしてとは?」
「だってあんなに……っ、3日じゃダメだ絶対に一週間だって……!」
「それはおまえが「待て」ばかり言うからだ」
「――」
「さっきも言っただろう、誕生日からの一週間はおまえから「したい」と言わせるためのものだったと。事前に決めておけば覚悟も決まり、逃げる事はないだろうと考えた。だが、既に雌体になると決意し、好きだと伝えてくれたおまえは、こうして触れることを許してくれた。あのような薬まで用意して……いつでも構わないと、そういう意味に受け取っていいのだろう?」
その事実があれば充分だと彼は微笑む。
「……そんなに不安だったんですか?」
「ああ」
「神様なのに?」
「おまえの隣では一人の男だ」
「っ……」
くっつきたい。
普段なら躊躇っていたとこだけど、今だけは衝動に従って彼に抱き着いた。
「……大好きです、リーデン様」
「ああ……好きだ……レン。おまえが、好きだ」
抱き締めあって、口付けて。
俺はその場で『雌雄別の儀』をお願いした。
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