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第4章 ダンジョン攻略
119.師匠の研究成果
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オセアン大陸七つの国は、東西に長い大陸を時計に見立てると、10年ほど前までは中心にメール国があり、時計回りにピティ、トル、パエ、マハ、オノ、ホエに囲まれていたのだが、メール国が全ての国を支配下に置いて帝国を宣言して以降はピティとトルの一部を直轄領と定め、海に面した東端に遷都し、ここを帝都ラックと称した。
近隣諸外国との交易の中心地とし、オセアン大陸全土に、ある程度は平等にあらゆる物資が届くよう取り計らうためである。
何故なら現皇帝マルシャル・ヌダム・ラファエリ・メールが大陸全土を支配したのは、ピティ、トル両国が貿易を独占し王侯貴族が私腹を肥やす事に邁進していたからだ。
西の4か国と手を組んだメールは半年も掛けずに2つの国に敗北宣言を出させた。
それほどに圧倒的だったのだか、戦後の関係が友好的になるかと言えばそんな事は決してなく、メールはもちろんのこと西側4カ国でも警戒を緩めることはなかったという。
そんな最中に判明した、トル国王太子殿下が獄鬼に憑かれているという醜聞。
彼の側近としてついて来た者達が焦るのも当然だ。
「獄鬼に憑かれていることは証紋では確認出来なくても、何か悪いことをしていれば反応しますよね? 例えば既に誰かを……とか」
「無理だよ」
グランツェが断じる。
「素手で人を殴ったとか、素手で盗んだなら、獄鬼の意思でも身体を使っているから犯罪歴に反映される可能性はあるけど、基本的には獄鬼に憑かれた時点で器となった人は死んだものと扱われる。死んでしまえば証紋の情報はそれ以上更新されないんだ」
体が本人だから証紋によって本人だと確認されるけれど、中身が獄鬼であることは判らないし、獄鬼特有の術を使われれば罪として認識されない。
何故ならそれを判断出来るのは僧侶だけ、というのが決まり事だからだ。
「証紋を照合する魔導具って主神様直々に齎されたものなんじゃ?」
「そうだけど、あれはあくまで魔力で起動するからね」
だから普通は獄鬼はどこにも入り込める。
トゥルヌソル――いまとなってはプラーントゥ大陸が例外中の例外だ。
「となると、トル国の王太子殿下がいつから憑かれていたのかは本人に聞かないと判りませんね」
「ああ」
王太子を牢から出せ、無理だと言い合う陛下とトル国のおじさん達に、見張り役をしていた僧侶も「獄鬼を解放するなんて有り得ません」と強硬姿勢を崩さない。
当然だ。
僧侶にしか判らないっていうことは、僧侶だからこそ目の前に横たわっている11人の憑かれた人々がどれほど危険なのか判るということ。
一方で、王太子殿下なんて身分を持つ彼を他の10人と一緒に浄化してしまえば、陛下がトル国側から難癖を付けられるだろうことは想像に難くない。
「……獄鬼に事情聴取って出来ますか?」
「なんて?」
「いつから憑かれていたとか、これまでに何をして来たとか、自白させられますか?」
「獄鬼相手に?」
ものすごく驚いた顔をされて、こっちの常識では有り得ないのだという事がよく判った。絶対悪だから見つけ次第即滅殺が基本だもんな。
でも、今回はこのまま浄化するのではダメな気がする。
完全に俺の勘なんだけど……ロテュスに来てからはこの勘が侮れない。
「試してみませんか、事情聴取」
「本気かい?」
「はい。少しばかり嫌な予感がするので」
声を潜めて言うと、俺に身近な面々が難しい顔で考え込んでしまった。
と、不意に声を上げたのはヒユナ。
「あれを使ったらどうですか?」
「あれ?」
「セルリーさんとレンくんが開発していた、あの魔導具」
そう言われたら思い浮かぶのはただ一つ。
主神様の角を使ったアレだ。
「獄鬼に憑かれていない人には何にもならないけど、獄鬼には劇的な効果が出るはずなんですよね?」
「……設計上では」
プラーントゥ大陸から獄鬼がいなくなってしまったため、そんな基本さえ実験出来ずにいる試作品。
「だったら、せっかくですし」
ヒユナが言い、グランツェ達も「まぁ、有りか無しで言えば有りかな。いまなら陛下に貸しが作れそうだし」と。
貸し、か。
そういうのもちゃんと考えないとダメなんだろうなと思いつつ、うちの大臣さんに手招きしてみる。
――結果「実験してみましょう」という何とも非人道的な答えが返って来たのだった。獄鬼相手だから良いのかな……?
***
万能薬の素材だと伝えた主神様の角だけど、これにはとんでもない難点があった。
何かというと、普通の刃では切れない、削れない、更には燃えない、潰れない。
「さすがは超級、いえっ、神級素材……!」
いろいろ試してゼェゼェ荒い呼吸を繰り返しながら感心する師匠に、リーデン様に加工してもらってくるからどういう状態にして来たら良いか教えてほしいと尋ねたら「……だったらレンが言っていた魔導具を優先しましょう」って返された。
万能薬の素材とはいえ、どうすればいいのかは何一つ判らない。
少しくらいヒントを得てからでないと加工法も決まらないというのが彼女の理由だった。
「街をすっぽりと覆えるような結界が張れる魔導具」
神力で、獄鬼にだけ効く結界。
そこから参考にしたのは冒険者達が野営の時に使う魔獣除けだ。
あれを分解して調べたところ、中に魔獣が嫌がる匂いを放つ木の枝が内臓されており、回路に組み込まれた魔石に魔力を通すことで枝を温め匂いが放たれるようになっていたのだ。
「枝の匂いが消えそうになったら交換時ってことですね」
交換時期を知らせる回路もしっかりと組まれていたから、それを確認して買い替えていたけれど、分解して見てみれば仕組みがよく判った。
というわけで、それを参考に師匠が術式を改造して作ったのが獄鬼除けの魔導具だ。
角はリーデン様に頼み、厚さ1センチ、直径3センチくらいの円形の角を薄っぺらい板状に加工してもらった。
縦横1センチの正方形20枚に姿を変えたそれを一枚ずつ組み込んで、計20個。
もちろんこの時点で魔物除けの術式の使用料は支払い済みだけど、もしもこれが実用化出来るなら改めて契約を交わさなきゃならないらしい。
ロイヤリティはこっちとあっちで7:3くらい?
まぁその辺りはお偉いさんに丸投げ予定だ、俺は専門外だし。
ただ、神力には自信があるので実験データを取るための主力から下りるつもりはない。起動するには神力が絶対に必要だし、師匠の研究データは俺が守ると決めている。
「オセアン大陸で実験出来るかしらねー」
師匠もそう言っていたくらいだから、貸して欲しいと頼めば喜んで貸し出してくれるだろうと思ってはいたけれど、……まさかこれが獄鬼にとっての拷問具になるとは想像していなかった。
***
船から試しに二つだけ持って来てもらい、開発者が最初にどうぞと言われて神力を注いで起動してみたところ、牢の中の11人が一斉に目を開けて飛び退いた。
俺から……違う、俺の持つ魔導具を恐ろしい形相で見つめ、ぶるぶると震え、その表情に明らかな怯えを滲ませて壁にしがみ付いたのだ。
もちろんトル国の王太子殿下も。
「な、なんだそれは……っ」
「止せ、近付くな……!」
「来るな……!!」
牢の中が阿鼻叫喚。
あまりにも煩いので、魔導具に注いだ神力を抜いて自分の中に戻した。途端に膝から崩れ落ちて荒い呼吸を繰り返す獄鬼たち。
……うん、効果は抜群だ。
「試しにヒユナさんも起動してもらえますか? 出来れば他の皆さんも順番に」
実験と割り切ってお願いする。
「い、いいんですか? プラーントゥ大陸の秘密道具なのでは……」
「開発者が順番にって言うんですから良いんですよ」
城勤めの僧侶さんとヒユナが言い合う。
開発者といっても、俺は素材を提供した後は横で眺めていただけ。たまに神力を注いだ程度なんだが……まぁいまはいいか。
その場にいた5人の僧侶全員が順番に力を注いでみたら、面白いくらい結果が違った。
俺は『僧侶の薬』を作るために師匠が身に付けた神力と魔力をきっぱりと分ける技を身に付けたけど、多くの僧侶にとっては神力と魔力の区別なんてないと聞いている。
それでも僧侶の魔法が治療の効果を持つのは魔力に神力が混ざるからだし、神力が少しでも注がれれば魔導具は起動することを、まずは確認。
あとは僧侶の経験値が多い方、年上の方が獄鬼に対する効果が大きいようで、起動と停止の度に牢の中の獄鬼たちが大騒ぎし、倒れ込むという光景には少しばかり同情した。
「僧侶が起動させているのは判るが、この魔導具は一体なんなんだ」
なんの影響もない皇帝陛下が、もう一つの未使用の魔導具を上から下まで確認しつつ聞いてくる。
「師匠と開発しました。獄鬼が侵入して来ないよう街を覆える結界が作れたらいいなと思ったんですけど、さすがに難しいので、魔物除けの魔導具を参考にした試作品です。プラーントゥ大陸では獄鬼がいないので実験も出来なくて……今回、いい機会かなと」
「……なるほど? これが魔獣除けの魔導具を参考にしているというなら、中には何の枝が入っているんだ?」
「枝じゃなくて角です」
「角?」
「はい。主神様の」
「……なんだと?」
「主神様の角です。教会の神像にもありますよね、ここからこう……生えている鹿みたいな枝角」
オセアン大陸の皆さんが口を開けたまま固まっている。
うん、そうなるよね。
トゥルヌソルでも説明の度にそういう顔をされていたので判っていたけど、素材が簡単に手に入ると思われても困るのだ。
「量を持ち込むと世界の魔力と神力のバランスが崩れて魔物の氾濫を起こす危険が高まるため今は手元にある20個が限界なんです」
「20……あの嫌がりようを見るに、門に置いておけば炙り出しには有効のようだが……」
「まだ何の実験データも取れていないのでお勧めはし難いんですが、……試してみますか?」
にっこりと笑い掛ければ、口元が引き攣る皇帝陛下。
気付けば牢の中の11人は息も絶え絶えになっていた。
近隣諸外国との交易の中心地とし、オセアン大陸全土に、ある程度は平等にあらゆる物資が届くよう取り計らうためである。
何故なら現皇帝マルシャル・ヌダム・ラファエリ・メールが大陸全土を支配したのは、ピティ、トル両国が貿易を独占し王侯貴族が私腹を肥やす事に邁進していたからだ。
西の4か国と手を組んだメールは半年も掛けずに2つの国に敗北宣言を出させた。
それほどに圧倒的だったのだか、戦後の関係が友好的になるかと言えばそんな事は決してなく、メールはもちろんのこと西側4カ国でも警戒を緩めることはなかったという。
そんな最中に判明した、トル国王太子殿下が獄鬼に憑かれているという醜聞。
彼の側近としてついて来た者達が焦るのも当然だ。
「獄鬼に憑かれていることは証紋では確認出来なくても、何か悪いことをしていれば反応しますよね? 例えば既に誰かを……とか」
「無理だよ」
グランツェが断じる。
「素手で人を殴ったとか、素手で盗んだなら、獄鬼の意思でも身体を使っているから犯罪歴に反映される可能性はあるけど、基本的には獄鬼に憑かれた時点で器となった人は死んだものと扱われる。死んでしまえば証紋の情報はそれ以上更新されないんだ」
体が本人だから証紋によって本人だと確認されるけれど、中身が獄鬼であることは判らないし、獄鬼特有の術を使われれば罪として認識されない。
何故ならそれを判断出来るのは僧侶だけ、というのが決まり事だからだ。
「証紋を照合する魔導具って主神様直々に齎されたものなんじゃ?」
「そうだけど、あれはあくまで魔力で起動するからね」
だから普通は獄鬼はどこにも入り込める。
トゥルヌソル――いまとなってはプラーントゥ大陸が例外中の例外だ。
「となると、トル国の王太子殿下がいつから憑かれていたのかは本人に聞かないと判りませんね」
「ああ」
王太子を牢から出せ、無理だと言い合う陛下とトル国のおじさん達に、見張り役をしていた僧侶も「獄鬼を解放するなんて有り得ません」と強硬姿勢を崩さない。
当然だ。
僧侶にしか判らないっていうことは、僧侶だからこそ目の前に横たわっている11人の憑かれた人々がどれほど危険なのか判るということ。
一方で、王太子殿下なんて身分を持つ彼を他の10人と一緒に浄化してしまえば、陛下がトル国側から難癖を付けられるだろうことは想像に難くない。
「……獄鬼に事情聴取って出来ますか?」
「なんて?」
「いつから憑かれていたとか、これまでに何をして来たとか、自白させられますか?」
「獄鬼相手に?」
ものすごく驚いた顔をされて、こっちの常識では有り得ないのだという事がよく判った。絶対悪だから見つけ次第即滅殺が基本だもんな。
でも、今回はこのまま浄化するのではダメな気がする。
完全に俺の勘なんだけど……ロテュスに来てからはこの勘が侮れない。
「試してみませんか、事情聴取」
「本気かい?」
「はい。少しばかり嫌な予感がするので」
声を潜めて言うと、俺に身近な面々が難しい顔で考え込んでしまった。
と、不意に声を上げたのはヒユナ。
「あれを使ったらどうですか?」
「あれ?」
「セルリーさんとレンくんが開発していた、あの魔導具」
そう言われたら思い浮かぶのはただ一つ。
主神様の角を使ったアレだ。
「獄鬼に憑かれていない人には何にもならないけど、獄鬼には劇的な効果が出るはずなんですよね?」
「……設計上では」
プラーントゥ大陸から獄鬼がいなくなってしまったため、そんな基本さえ実験出来ずにいる試作品。
「だったら、せっかくですし」
ヒユナが言い、グランツェ達も「まぁ、有りか無しで言えば有りかな。いまなら陛下に貸しが作れそうだし」と。
貸し、か。
そういうのもちゃんと考えないとダメなんだろうなと思いつつ、うちの大臣さんに手招きしてみる。
――結果「実験してみましょう」という何とも非人道的な答えが返って来たのだった。獄鬼相手だから良いのかな……?
***
万能薬の素材だと伝えた主神様の角だけど、これにはとんでもない難点があった。
何かというと、普通の刃では切れない、削れない、更には燃えない、潰れない。
「さすがは超級、いえっ、神級素材……!」
いろいろ試してゼェゼェ荒い呼吸を繰り返しながら感心する師匠に、リーデン様に加工してもらってくるからどういう状態にして来たら良いか教えてほしいと尋ねたら「……だったらレンが言っていた魔導具を優先しましょう」って返された。
万能薬の素材とはいえ、どうすればいいのかは何一つ判らない。
少しくらいヒントを得てからでないと加工法も決まらないというのが彼女の理由だった。
「街をすっぽりと覆えるような結界が張れる魔導具」
神力で、獄鬼にだけ効く結界。
そこから参考にしたのは冒険者達が野営の時に使う魔獣除けだ。
あれを分解して調べたところ、中に魔獣が嫌がる匂いを放つ木の枝が内臓されており、回路に組み込まれた魔石に魔力を通すことで枝を温め匂いが放たれるようになっていたのだ。
「枝の匂いが消えそうになったら交換時ってことですね」
交換時期を知らせる回路もしっかりと組まれていたから、それを確認して買い替えていたけれど、分解して見てみれば仕組みがよく判った。
というわけで、それを参考に師匠が術式を改造して作ったのが獄鬼除けの魔導具だ。
角はリーデン様に頼み、厚さ1センチ、直径3センチくらいの円形の角を薄っぺらい板状に加工してもらった。
縦横1センチの正方形20枚に姿を変えたそれを一枚ずつ組み込んで、計20個。
もちろんこの時点で魔物除けの術式の使用料は支払い済みだけど、もしもこれが実用化出来るなら改めて契約を交わさなきゃならないらしい。
ロイヤリティはこっちとあっちで7:3くらい?
まぁその辺りはお偉いさんに丸投げ予定だ、俺は専門外だし。
ただ、神力には自信があるので実験データを取るための主力から下りるつもりはない。起動するには神力が絶対に必要だし、師匠の研究データは俺が守ると決めている。
「オセアン大陸で実験出来るかしらねー」
師匠もそう言っていたくらいだから、貸して欲しいと頼めば喜んで貸し出してくれるだろうと思ってはいたけれど、……まさかこれが獄鬼にとっての拷問具になるとは想像していなかった。
***
船から試しに二つだけ持って来てもらい、開発者が最初にどうぞと言われて神力を注いで起動してみたところ、牢の中の11人が一斉に目を開けて飛び退いた。
俺から……違う、俺の持つ魔導具を恐ろしい形相で見つめ、ぶるぶると震え、その表情に明らかな怯えを滲ませて壁にしがみ付いたのだ。
もちろんトル国の王太子殿下も。
「な、なんだそれは……っ」
「止せ、近付くな……!」
「来るな……!!」
牢の中が阿鼻叫喚。
あまりにも煩いので、魔導具に注いだ神力を抜いて自分の中に戻した。途端に膝から崩れ落ちて荒い呼吸を繰り返す獄鬼たち。
……うん、効果は抜群だ。
「試しにヒユナさんも起動してもらえますか? 出来れば他の皆さんも順番に」
実験と割り切ってお願いする。
「い、いいんですか? プラーントゥ大陸の秘密道具なのでは……」
「開発者が順番にって言うんですから良いんですよ」
城勤めの僧侶さんとヒユナが言い合う。
開発者といっても、俺は素材を提供した後は横で眺めていただけ。たまに神力を注いだ程度なんだが……まぁいまはいいか。
その場にいた5人の僧侶全員が順番に力を注いでみたら、面白いくらい結果が違った。
俺は『僧侶の薬』を作るために師匠が身に付けた神力と魔力をきっぱりと分ける技を身に付けたけど、多くの僧侶にとっては神力と魔力の区別なんてないと聞いている。
それでも僧侶の魔法が治療の効果を持つのは魔力に神力が混ざるからだし、神力が少しでも注がれれば魔導具は起動することを、まずは確認。
あとは僧侶の経験値が多い方、年上の方が獄鬼に対する効果が大きいようで、起動と停止の度に牢の中の獄鬼たちが大騒ぎし、倒れ込むという光景には少しばかり同情した。
「僧侶が起動させているのは判るが、この魔導具は一体なんなんだ」
なんの影響もない皇帝陛下が、もう一つの未使用の魔導具を上から下まで確認しつつ聞いてくる。
「師匠と開発しました。獄鬼が侵入して来ないよう街を覆える結界が作れたらいいなと思ったんですけど、さすがに難しいので、魔物除けの魔導具を参考にした試作品です。プラーントゥ大陸では獄鬼がいないので実験も出来なくて……今回、いい機会かなと」
「……なるほど? これが魔獣除けの魔導具を参考にしているというなら、中には何の枝が入っているんだ?」
「枝じゃなくて角です」
「角?」
「はい。主神様の」
「……なんだと?」
「主神様の角です。教会の神像にもありますよね、ここからこう……生えている鹿みたいな枝角」
オセアン大陸の皆さんが口を開けたまま固まっている。
うん、そうなるよね。
トゥルヌソルでも説明の度にそういう顔をされていたので判っていたけど、素材が簡単に手に入ると思われても困るのだ。
「量を持ち込むと世界の魔力と神力のバランスが崩れて魔物の氾濫を起こす危険が高まるため今は手元にある20個が限界なんです」
「20……あの嫌がりようを見るに、門に置いておけば炙り出しには有効のようだが……」
「まだ何の実験データも取れていないのでお勧めはし難いんですが、……試してみますか?」
にっこりと笑い掛ければ、口元が引き攣る皇帝陛下。
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