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第4章 ダンジョン攻略
110.盛り上がる特別室
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午後5時。
西に沈みゆく太陽に見送られるように出港の汽笛を鳴らす船も、水平線が美しい夕焼けに照らされた海もこれ以上ない美しさだったのだが、俺の部屋に集まった面々はもはやそれどころではなかった。
「誰か魔物の魔石を持っていないかしら⁈」
「文官なら加工前のを持っているかもしれない、幾つか買い取って来る!」
「弱い魔物の魔石にしてよ!」
ものすごい勢いで行動し出す面々に今度は俺の方が呆気に取られてしまったが、その騒ぎに気付いたバルドルやクルト、グランツェたちにも「何事か」と聞かれて事情を説明した事で、オクティバが7つの魔石を持って帰って来た頃には俺の部屋にエレインを含む13人全員が集まっていた。
それでもまだまだ余裕の特別室が広すぎる。
「……マジで出来るのか?」
「俺からしたら、どうして誰も試そうとしたことがないのかが不思議でなりません」
剣と魔法の世界だ。
ファンタジーだ。
ゲームには詳しくないけど、魔物を従えるってかなりの浪漫じゃ?
そう思っていたら各方面からは切実な声が上がる。
「魔石は貴重な収入源だから売る一択だったな」
「魔石が魔導具技師の手元に届かなかったら魔導具が普及されず、生活に困る」
鉄級、銅級ダンジョンで獲れる魔石は庶民の暮らしに必要な魔導具に。
銀級ダンジョンの魔石は貴族の。
金級ダンジョン以上の魔石は王侯貴族、国の発展に必要であるが絶対数が少なく奪い合いが起きている。
ましてや消耗品扱いの魔導具も多い。
魔石はいくらあっても足りないのが現状だ。
「とりあえず7つ……」
オクティバが言いながら7つの魔石をテーブルの上に置いて行った。
「4つはハエ足の魔石で、1つは角兎、2つは牙犬の魔石だそうだ」
「ちょ、なんでハエ足?」
「貴族のご令嬢が、ネックレスを仄かに光らせてデコルテを白く見せたいって注文して来たらしい」
「……それでハエ足?」
「ご令嬢には何の魔石かなんて判らないからね」
「無知って恐ろしいわぁ……」
ハエ足って人の足が生えたハエで、俺が鉄級ダンジョンで最初に遭遇した魔物だ。
観察する前にウーガが灰にしてしまったので、改めて見る機会が出来たのは良かった……かどうか、周囲の反応を見る限りは微妙である。
「ハエ足なら暴れても大したことはないから、実験には丁度いいといえば、そうね」
セルリーが親指と人差し指の間に1ミリくらいの小さな、本当に小さなガラス玉みたいな魔石を挟み、照明を当てて中を確認している。
もしも技師によって術式が組み込まれていると、そうすることによって中が見えるようになるらしい。
「ん。未加工ね」
言い、今度はそれをグランツェに。
彼も同じように魔石の中を確認してからそれを俺に手渡してくれた。
「それじゃあ、早速」
「どうぞ」
全員の視線を浴びてだんだん緊張して来るが、手の上の小さな魔石を壊してしまわないよう魔力操作に集中した。
「……」
ゆっくり、ゆっくりと丁寧に、魔石全体に魔力が行き渡るように。
それでいて神力が混ざらないよう注意しながら。
「ぁ」
もうこれ以上は入らないと魔石側に拒まれる感覚を得た直後に手の中の魔石が一瞬だけ光った。
「!」
その光が治まると、手の上にあったのは魔石ではなく、ハエ足。
「……マジか」
「おお……」
四方八方から吐息のような声が上がる。
ウーガやオクティバら、魔法使いたちが万が一に備えて警戒する中、俺はそっと手を上げる。と、自らの羽で宙に浮くハエ足。ハエに人間の足が6本。うん、決して可愛くはないのだけども……。
「回れるかな?」
指で円を描くと、その通りに回る。
下がって、上がって、左、右。
とても従順で攻撃性も皆無。
「試しにバルドルさんのところに向かうよう指示してもいいですか?」
「おう」
「行け」
ブーンと飛んでいき、バルドルの前で停止。そこで試しにバルドルが指示を出してみるが彼の言うことは聞かなかった。
皆がそれぞれに感心したり、驚いたりしている中、生粋の研究者であるセルリーの目の色だけが違った。
「レン、そのハエ足はとりあえずそのままで、どれくらい姿形が保つかを記録しましょう」
「はい」
「それからヒユナはこれで、レンと同じように出来るか試してみて。レンだけが出来るんじゃ意味がないわ」
「了解ですっ」
別のハエ足の魔石を手渡されたヒユナは、早速挑戦。
「あと……この中で一番魔力が少ないのは誰かしら」
「俺だな」
自ら声を上げたのはグランツェパーティの盾、ディゼル。
「試してみてくれる?」
「もちろんだ」
「あとは魔法使いが良いわね。オクティバ、お願い」
「判りました」
他のハエ足の魔石がそれぞれに渡る頃には、俺の魔力で固形化したハエ足にはテーブルの上に止まっていてもらうことにした。
「レン、魔力はどれくらい使ったかわかる?」
「部屋の電気を付けるのとほとんど変わりません」
「出来ました」
言っていたら、ヒユナ、オクティバ、ディゼルの順に「出来た」と声が上がる。
言う事を聞くかどうか、他人の指示にはどう反応するか、どれくらい保つか。
よく解っていないエレイン以外の12人が揃って興奮気味に語り合う光景は異様の一言に尽きると思う。その内側にいた俺でもそう感じたのだけど、この世界に生まれ育った人達にしてみたら、これはそれだけの大発見だったってことだ。
「バルドルは部屋を出て、扉の向こうで待機。見えなくても彼のところまで行くか試してみて」
「はい」
思いつく順番に片っ端から調べていくと、姿が見えていれば部屋の端から端でも飛んでいったが、姿が見えなくなるとダメだった。扉を開けてもダメなので、これではメッセージを届けると言う当初の目的には使えない。
「届け先を何かしらの方法で固定するのは?」
「術式に名前を刻む?」
「でも同じ名前の人だって大勢いるから、固定しようと思ったら条件の付与だけで術式が埋まってしまう。音を録音する術式が入らなかったら、それこそ意味がない」
「メッセージを届けさせるとして、どんな魔物が適当ですか?」
「……やっぱり鳥型かしら。それに、出来れば魔物じゃなく魔獣の姿が良いわね。ダンジョンから魔物が出て来たなんて言われたら大騒ぎよ。そんなの魔物の氾濫だもの」
「ですよね……あ」
言っていたら、魔力が切れたのか俺のハエ足が魔石に戻った。
魔物の姿を保持していたのは30分くらいだろうか。
「ダンジョンではダンジョンの魔力を常に供給しているんでしょうから、供給が無ければ魔石に戻るのはある意味で当然ね……。ヒユナ、試しに10分ごとに魔力を供給してみてくれる?」
「は、はい」
そんなこんなで、船内放送……拡声魔法だけど、それで夕飯の準備が出来たからホールへどうぞという案内が届くまで、部屋の中は大いに盛り上がった。
あれこれ実験をして活動的だった俺のハエ足は30分程度だったが、何も指示をしなかったハエ足は1時間近く保ち、供給をこまめに続けたヒユナのハエ足は供給を止めるまでずっとその姿を保っていた。
結局、睡眠こそ必須だったものの船の中ではほとんどの時間を全員がレンの割り振られた特別室で過ごしひたすら実験の繰り返しだった。
そこで判明したことを纏めれば、角兎、牙犬を含め鉄級ダンジョンの魔物は誰でも魔石に魔力を込めれば顕現出来るということ。
時間を待たなくても魔力を抜けば魔石に戻せること。
敵意は皆無。
魔力の主には忠実。
必要な魔力量はダンジョンでの脅威度に比例するようで、ハエ足<角兎<牙犬の順に高くなったが、最も魔力が少ないと自己申告したディゼルでも余裕で牙犬を顕現させられていた。
魔石に魔力を込められるのは一人。複数人で魔力を流そうとすると魔石側から抵抗を感じる。
更に、ハエ足の魔石でハエを顕現する事も出来た。
要は想像力だ。
普通に飛んでいるそれをイメージしながら魔力を注ぐことで全員が成功したのだから、これは使えるという結論に至ったのは言うまでもない。
ただしどんなに想像力を膨らませても、ハエ足の魔石ではハエ以外にはならなかったことも併せて報告しておこう。鳥、犬、蝶、蟻、大小様々で試してみたが、ハエ以外は実現しないまま割れて粉々になってしまった。
「レン。オセアン大陸でダンジョンの入場許可を得たら鉄級、銅級、ついでに銀級にも挑戦してとにかく魔石を持って帰ってらっしゃい」
「銀級もですか⁈」
「オセアン大陸は水辺のダンジョンが多いのよ、鳥系が本当に多いの! 試さない手はないわ!」
「え、っと……バルドルさん。うちの師匠がこんなことを言っているんですが……」
バルドルに答えを求めたのに、応えたのはグランツェパーティ。
「プラーントゥ大陸の銀級よりは、オセアン大陸の方が難易度は低いな」
「ああ」
「ヒユナも金級を目指して同行したらいいんじゃないか?」
「えっ」
唐突に振られて、ヒユナの顔色が悪くなる。
「無理強いはしないよ」
「挑戦したいと思ったら同行を願い出ればいいさ」
「そ、そうですね……」
それにダンジョンに行くには、まずはその許可を得なければいけないし、銀級ダンジョンに挑むのは鉄級、銅級の後だし、オセアン大陸には鉄級が2カ所ある。
どんなに早くても銀級に挑めるのは4か月も先だ。
「俺たちも行けそうなら行くってことで」
「だな」
そんな会話をしている内に、全面オーシャンビューのガラスの向こうに大陸が見えて来た。
オセアン大陸の中で最も力を持つイルカ科の王が統治する水の都。メール帝国帝都ラックの港が、すぐそこまで近付いていたのだ。
西に沈みゆく太陽に見送られるように出港の汽笛を鳴らす船も、水平線が美しい夕焼けに照らされた海もこれ以上ない美しさだったのだが、俺の部屋に集まった面々はもはやそれどころではなかった。
「誰か魔物の魔石を持っていないかしら⁈」
「文官なら加工前のを持っているかもしれない、幾つか買い取って来る!」
「弱い魔物の魔石にしてよ!」
ものすごい勢いで行動し出す面々に今度は俺の方が呆気に取られてしまったが、その騒ぎに気付いたバルドルやクルト、グランツェたちにも「何事か」と聞かれて事情を説明した事で、オクティバが7つの魔石を持って帰って来た頃には俺の部屋にエレインを含む13人全員が集まっていた。
それでもまだまだ余裕の特別室が広すぎる。
「……マジで出来るのか?」
「俺からしたら、どうして誰も試そうとしたことがないのかが不思議でなりません」
剣と魔法の世界だ。
ファンタジーだ。
ゲームには詳しくないけど、魔物を従えるってかなりの浪漫じゃ?
そう思っていたら各方面からは切実な声が上がる。
「魔石は貴重な収入源だから売る一択だったな」
「魔石が魔導具技師の手元に届かなかったら魔導具が普及されず、生活に困る」
鉄級、銅級ダンジョンで獲れる魔石は庶民の暮らしに必要な魔導具に。
銀級ダンジョンの魔石は貴族の。
金級ダンジョン以上の魔石は王侯貴族、国の発展に必要であるが絶対数が少なく奪い合いが起きている。
ましてや消耗品扱いの魔導具も多い。
魔石はいくらあっても足りないのが現状だ。
「とりあえず7つ……」
オクティバが言いながら7つの魔石をテーブルの上に置いて行った。
「4つはハエ足の魔石で、1つは角兎、2つは牙犬の魔石だそうだ」
「ちょ、なんでハエ足?」
「貴族のご令嬢が、ネックレスを仄かに光らせてデコルテを白く見せたいって注文して来たらしい」
「……それでハエ足?」
「ご令嬢には何の魔石かなんて判らないからね」
「無知って恐ろしいわぁ……」
ハエ足って人の足が生えたハエで、俺が鉄級ダンジョンで最初に遭遇した魔物だ。
観察する前にウーガが灰にしてしまったので、改めて見る機会が出来たのは良かった……かどうか、周囲の反応を見る限りは微妙である。
「ハエ足なら暴れても大したことはないから、実験には丁度いいといえば、そうね」
セルリーが親指と人差し指の間に1ミリくらいの小さな、本当に小さなガラス玉みたいな魔石を挟み、照明を当てて中を確認している。
もしも技師によって術式が組み込まれていると、そうすることによって中が見えるようになるらしい。
「ん。未加工ね」
言い、今度はそれをグランツェに。
彼も同じように魔石の中を確認してからそれを俺に手渡してくれた。
「それじゃあ、早速」
「どうぞ」
全員の視線を浴びてだんだん緊張して来るが、手の上の小さな魔石を壊してしまわないよう魔力操作に集中した。
「……」
ゆっくり、ゆっくりと丁寧に、魔石全体に魔力が行き渡るように。
それでいて神力が混ざらないよう注意しながら。
「ぁ」
もうこれ以上は入らないと魔石側に拒まれる感覚を得た直後に手の中の魔石が一瞬だけ光った。
「!」
その光が治まると、手の上にあったのは魔石ではなく、ハエ足。
「……マジか」
「おお……」
四方八方から吐息のような声が上がる。
ウーガやオクティバら、魔法使いたちが万が一に備えて警戒する中、俺はそっと手を上げる。と、自らの羽で宙に浮くハエ足。ハエに人間の足が6本。うん、決して可愛くはないのだけども……。
「回れるかな?」
指で円を描くと、その通りに回る。
下がって、上がって、左、右。
とても従順で攻撃性も皆無。
「試しにバルドルさんのところに向かうよう指示してもいいですか?」
「おう」
「行け」
ブーンと飛んでいき、バルドルの前で停止。そこで試しにバルドルが指示を出してみるが彼の言うことは聞かなかった。
皆がそれぞれに感心したり、驚いたりしている中、生粋の研究者であるセルリーの目の色だけが違った。
「レン、そのハエ足はとりあえずそのままで、どれくらい姿形が保つかを記録しましょう」
「はい」
「それからヒユナはこれで、レンと同じように出来るか試してみて。レンだけが出来るんじゃ意味がないわ」
「了解ですっ」
別のハエ足の魔石を手渡されたヒユナは、早速挑戦。
「あと……この中で一番魔力が少ないのは誰かしら」
「俺だな」
自ら声を上げたのはグランツェパーティの盾、ディゼル。
「試してみてくれる?」
「もちろんだ」
「あとは魔法使いが良いわね。オクティバ、お願い」
「判りました」
他のハエ足の魔石がそれぞれに渡る頃には、俺の魔力で固形化したハエ足にはテーブルの上に止まっていてもらうことにした。
「レン、魔力はどれくらい使ったかわかる?」
「部屋の電気を付けるのとほとんど変わりません」
「出来ました」
言っていたら、ヒユナ、オクティバ、ディゼルの順に「出来た」と声が上がる。
言う事を聞くかどうか、他人の指示にはどう反応するか、どれくらい保つか。
よく解っていないエレイン以外の12人が揃って興奮気味に語り合う光景は異様の一言に尽きると思う。その内側にいた俺でもそう感じたのだけど、この世界に生まれ育った人達にしてみたら、これはそれだけの大発見だったってことだ。
「バルドルは部屋を出て、扉の向こうで待機。見えなくても彼のところまで行くか試してみて」
「はい」
思いつく順番に片っ端から調べていくと、姿が見えていれば部屋の端から端でも飛んでいったが、姿が見えなくなるとダメだった。扉を開けてもダメなので、これではメッセージを届けると言う当初の目的には使えない。
「届け先を何かしらの方法で固定するのは?」
「術式に名前を刻む?」
「でも同じ名前の人だって大勢いるから、固定しようと思ったら条件の付与だけで術式が埋まってしまう。音を録音する術式が入らなかったら、それこそ意味がない」
「メッセージを届けさせるとして、どんな魔物が適当ですか?」
「……やっぱり鳥型かしら。それに、出来れば魔物じゃなく魔獣の姿が良いわね。ダンジョンから魔物が出て来たなんて言われたら大騒ぎよ。そんなの魔物の氾濫だもの」
「ですよね……あ」
言っていたら、魔力が切れたのか俺のハエ足が魔石に戻った。
魔物の姿を保持していたのは30分くらいだろうか。
「ダンジョンではダンジョンの魔力を常に供給しているんでしょうから、供給が無ければ魔石に戻るのはある意味で当然ね……。ヒユナ、試しに10分ごとに魔力を供給してみてくれる?」
「は、はい」
そんなこんなで、船内放送……拡声魔法だけど、それで夕飯の準備が出来たからホールへどうぞという案内が届くまで、部屋の中は大いに盛り上がった。
あれこれ実験をして活動的だった俺のハエ足は30分程度だったが、何も指示をしなかったハエ足は1時間近く保ち、供給をこまめに続けたヒユナのハエ足は供給を止めるまでずっとその姿を保っていた。
結局、睡眠こそ必須だったものの船の中ではほとんどの時間を全員がレンの割り振られた特別室で過ごしひたすら実験の繰り返しだった。
そこで判明したことを纏めれば、角兎、牙犬を含め鉄級ダンジョンの魔物は誰でも魔石に魔力を込めれば顕現出来るということ。
時間を待たなくても魔力を抜けば魔石に戻せること。
敵意は皆無。
魔力の主には忠実。
必要な魔力量はダンジョンでの脅威度に比例するようで、ハエ足<角兎<牙犬の順に高くなったが、最も魔力が少ないと自己申告したディゼルでも余裕で牙犬を顕現させられていた。
魔石に魔力を込められるのは一人。複数人で魔力を流そうとすると魔石側から抵抗を感じる。
更に、ハエ足の魔石でハエを顕現する事も出来た。
要は想像力だ。
普通に飛んでいるそれをイメージしながら魔力を注ぐことで全員が成功したのだから、これは使えるという結論に至ったのは言うまでもない。
ただしどんなに想像力を膨らませても、ハエ足の魔石ではハエ以外にはならなかったことも併せて報告しておこう。鳥、犬、蝶、蟻、大小様々で試してみたが、ハエ以外は実現しないまま割れて粉々になってしまった。
「レン。オセアン大陸でダンジョンの入場許可を得たら鉄級、銅級、ついでに銀級にも挑戦してとにかく魔石を持って帰ってらっしゃい」
「銀級もですか⁈」
「オセアン大陸は水辺のダンジョンが多いのよ、鳥系が本当に多いの! 試さない手はないわ!」
「え、っと……バルドルさん。うちの師匠がこんなことを言っているんですが……」
バルドルに答えを求めたのに、応えたのはグランツェパーティ。
「プラーントゥ大陸の銀級よりは、オセアン大陸の方が難易度は低いな」
「ああ」
「ヒユナも金級を目指して同行したらいいんじゃないか?」
「えっ」
唐突に振られて、ヒユナの顔色が悪くなる。
「無理強いはしないよ」
「挑戦したいと思ったら同行を願い出ればいいさ」
「そ、そうですね……」
それにダンジョンに行くには、まずはその許可を得なければいけないし、銀級ダンジョンに挑むのは鉄級、銅級の後だし、オセアン大陸には鉄級が2カ所ある。
どんなに早くても銀級に挑めるのは4か月も先だ。
「俺たちも行けそうなら行くってことで」
「だな」
そんな会話をしている内に、全面オーシャンビューのガラスの向こうに大陸が見えて来た。
オセアン大陸の中で最も力を持つイルカ科の王が統治する水の都。メール帝国帝都ラックの港が、すぐそこまで近付いていたのだ。
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