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第3章 変わるもの 変わらないもの
閑話:セルリーの視点から『規格外の弟子』
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新人冒険者が最初に採取するのはこれだと言われる、鎮痛効果のあるパトゥリニヤの根。
解熱効果のあるエノントの葉。
眠くなる効果を持つナヴェットの葉。
毒素の分解を促す効果を持つクリザンテムの花びら。
匂いが気になる場合にはシトロネルの葉で爽やかな印象を演出することも大切。
糖度の高いリスの蜜は苦い薬が子どもにも飲みやすよう調味に使えるし、毒草として有名なロワ・エルヴも、使い方によっては他の毒素と互いに干渉し合って無毒になることが証明されている。
薬草にはまだまだ謎が多い。
気になったものはとりあえず採取して研究してみるべきだ。
先人が残した資料を漁るのも良いだろう。
初級の植物にも使ってみなければ判らない効果がまだまだあるのだから、それが中級、上級の素材となれば尚更だ。
炎症を抑えるアスターの花びら。
保温効果が著しいピマンの実
セルリーがよく使う素材は植物が多いが、中級は魔獣、上級は魔物から採れる素材が大半を占めるようになる。角、牙、爪、毛、皮、眼球、内臓……その全てがあらゆる調合に使われ様々な効果を齎すのだ。
昨年12月の頭に王都からトゥルヌソルに帰って来て以降、先輩僧侶としてレンの指導にあたることになったセルリーは、午前9時から12時までを彼の指導に充てる事にした。
「せっかくだし師匠って呼びなさい。ついでに私の薬レシピを受け継いでくれると助かるわ」
「えっ」
「ご不満かしら?」
「不満なんてないですっ。でもセルリーさんが何十年って時間を掛けて作り上げた、いわば財産ですよね? それを……」
「そうね。本当なら弟子を取れば良かったんでしょうけど、今から募集するのも大変じゃない。それともレンには他の適任の子にアテがあるのかしら。見習いから始められる洗礼後の子で、精神年齢が成熟していて頭が良く、自分が受け継ぐものの貴重性をしっかりと認識して学んでくれる子。ついでに神力も多いと尚良いわ」
「条件が厳し過ぎます……」
「そりゃそうでしょ、大事な知識を譲るのよ?」
「ご尤もですけど……」
何に遠慮しているのか煮え切らない態度のレンに、セルリーは言う。
「あのね、最初に工房を訪ねて来た時にも言ったけど私はもういい歳のおばあちゃんなの。いつまで生きていられるか判んないんだから、貰えるものは貰っておきなさい」
「……師匠が一緒に金級ダンジョンに挑むって約束してくれるなら頑張ります」
「上等ね」
そういった経緯もあって、レンはセルリーの弟子になった。事前に初級教本を渡していたことも功を奏し、彼への講義はとても順調に進められて行く。
水の日は教会で魔法の勉強。
休みは週に一度、太陽の日だけ。
もともと学ぶことに抵抗がないレンは、クルトやバルドルパーティの4人が相応の戦力となるべく金級冒険者達に鍛えられている間に、知識と技術を貪欲に吸収していく。
雪が溶け、春になり、冒険者ギルドの掲示板を素材採取の依頼書が賑わせるようになる頃には一人で9種類の薬を調合、錬金出来るようになっていた。
「この薬、師匠の倉庫の素材で作ったのに本当に俺がもらってしまって良いんですか? 商人に卸した方が各地の人たちの役に立つと思います」
「レンに教えるために私も同じだけ作ったでしょう。私の分だけでも普段の倍量なの、そこに同じ素材を使っているのに効果が桁違いな薬が混ざってごらんなさい、納品される商人が困るわよ」
言っていることは理解しても、まだ納得のいかないらしいレンの心根に微笑ましさを感じつつ、セルリーは説得の言葉を重ねた。
「それに、パーティに所属している僧侶が作った薬はパーティの財産なの。レイナルド達に持たせなさい。あの子たちがこれから向かうのは敵地同然なんだから」
「ぁ……、はい。そうします」
「よろしい」
「でも素材の代金はお支払いしたいです」
「レイナルドからレンへの指導料を貰ってるの。素材代込よ」
「……本当ですか?」
「師匠の言葉を疑うなんてヒドイ弟子だわ」
むむむっとまだ難しい顔をしているレン。
「でも何か……こう、お礼がしたいです」
「だったら今まで扱ったことがないような素材を探してらっしゃい。そろそろ銀級への昇級に向けて動き出すんでしょう? レイナルド達の出発日は決まったの?」
「クルトさん達の特訓に目処が付いたから、来月にはマーヘ大陸に向かうそうです……レイナルドさん達が出発したら俺も昇級目指して冒険者の活動を再開します」
「そう、来月……新しい素材を楽しみにしているわ」
「えっ」
そっちですかと驚くやら呆れるやらのレンの様子に声を上げて笑った。
心配なのは同じでも、今から湿っぽくされては気が滅入る。
「新しい素材って……セルリーさんが見たことのない素材を俺がそんな簡単に見つけられるわけ……、あ」
「え?」
唐突にレンの目が輝いたのを目撃し、セルリーはとても嫌な予感がした。
●
翌日、工房にレンが持ち込んだそれは魔獣や魔物の角の一部分に見えた。
硬い材質で、厚さ1センチくらい、直径3センチくらいの円形素材。
だが触れてみればその異質さがよく判る。
何故って、セルリーの内側の神力が未だかつてないほど反応しているからだ。
「ちょっとレン、これは一体何なのっ、何の魔獣の……っ」
「魔獣じゃなくてリ……主神様の角、です」
「主……っ」
「以前は年に一度ぽろっと抜け落ちていたそうなんですけど、最近は……その、諸事情で少しでも伸びると折っちゃうんですよ。そうすると血が出るから止めてくださいって何度もお願いしているのに、邪魔だからって、全然聞いてくれないんです。ひどいと思いませんか」
「ひどいのはあんたの認識の方でしょ⁈」
「師匠もひどい」
レンはそう言うけど苦笑いの顔を見ればセルリーの反応を予想していたに違いない。
「くっ……なん、……くっ……本当にもう! なんていうものを持ち込むのかしらね!!」
「本人の許可は貰いましたから大丈夫です。このくらいならほとんど影響はありません」
「影響……!」
大きい物なら一体どんな影響を齎すのか、恐ろしくて聞きたくない。
聞きたくはないが、知りたいという好奇心に負けそうな自分を認めないわけにはいかない。セルリーは僧侶で、薬師で、錬金術師だが、その性は研究者だと自負している。
世界に自生する薬草に、神力がどう影響するのか。
僧侶のいない地域に僧侶の力を届けるために薬草が使えないだろうか。
考えて、考えて、集めて、調べて、実験し、失敗と成功を繰り返しながら完成させたのが『僧侶の薬』だ。
突如として手の上に置かれた新しい素材は神力の塊も同然で、これで何が出来るのか……考え出したら止まらないのは判り切っている。
しかも、いまは目の前に、優しく背中を押してくる恐ろしい弟子がいる。
精霊みたいに綺麗な顔をしているくせに、人を誑かす獄鬼のようではないか!
「見たことのない素材が欲しいって言ったのは師匠ですからね。責任もって分析・研究してください」
「いくら探してらっしゃいと言ったからって、どうして持ち込むのが主神様の……はぁ。どう考えたって、主神様の身体の一部を材料にしようなんて不敬極まりないわ」
「そんなことないですよ。師匠の『僧侶の薬』のことを話したら「大したものだ」って感心していましたし、角をトゥルヌソルで研究して良いか訊いたら、使い道があるなら自分も知りたいって言ってましたよ」
セルリーは額を抑える。
ツッコミどころが有り過ぎて何から言えばいいのか判らない。
更には彼女の気も知らずに追撃。
「主神様が言うには「万能薬」の素材になるらしいです」
「……万能薬?」
「です」
「万能薬……」
言いたい事はたくさんある。
しかし悔しいかな「万能薬」と聞いてしまったら動揺や恐れ多さよりも好奇心が勝ってしまう。
「俺としては神力が獄鬼に効くなら町をすっぽりと覆えるような結界が張れる魔導具を作ってみたいです」
「結界の魔導具……魔導具なら知り合いの僧侶の知り合いが……あぁ素材元は明かせないか……でも獄鬼の侵入を阻む結界……」
だんだんと研究者の顔になっていくセルリーは、目に力が宿った自分を見たレンの表情が安堵の笑みに変わった事に気付かない。
「レン、この……主神様の御角はまだあるの?」
「あります。俺の部屋にある分だけでもこんな長いツノが二本と、小さいのが結構……何度かまとめて処分したって言ってましたがリー……主神様の、職場? そっちの方には数十年分溜まってるって」
「そう……さっき言ってた影響って?」
「一ヵ所に神力が集まり過ぎると、均衡を保つために魔力が一時的に供給を増やすみたいで、場合によってはダンジョンの魔物による魔物の氾濫が発生する可能性があるそうです」
「なるほどね……って、えっ、だったら異常な神力で満たされているトゥルヌソルって危ないんじゃ⁈」
「それは俺が溢れさせているものなので平気です」
「……どういうこと?」
「神様の世界にもいろいろと約束事があって、この角は主神様の神力だから世界に影響を及ぼすけど、俺は異世界人なので、俺を経由して溢れる神力は影響しないという」
「……よくわからない事がわかったから、もういいわ」
セルリーは理解することを諦めた。
とりあえずレンの神力は神の力ではなくレン力で、トゥルヌソルを覆っているのがそのレン力だから問題ナシと考えれば良さそうだ――と、雑に結論付ける。
「万能薬の素材になるって、主神様が仰ったのね?」
「はい」
「素材……素材って事は他のものと調合するということ……この御角は神力の塊で、僧侶の力は神力を持つ僧侶の魔力だから、神力を癒しに使うには僧侶の魔力が……ううん、この場合は御角と同等の純然たる魔力の塊に……超級素材の実……ううん、いっそ超級魔物の魔石……でも……」
早速いろいろな他の素材との組み合わせを考え始めるセルリーは、齢67にして新たなる研究を始めることになるのだった。
解熱効果のあるエノントの葉。
眠くなる効果を持つナヴェットの葉。
毒素の分解を促す効果を持つクリザンテムの花びら。
匂いが気になる場合にはシトロネルの葉で爽やかな印象を演出することも大切。
糖度の高いリスの蜜は苦い薬が子どもにも飲みやすよう調味に使えるし、毒草として有名なロワ・エルヴも、使い方によっては他の毒素と互いに干渉し合って無毒になることが証明されている。
薬草にはまだまだ謎が多い。
気になったものはとりあえず採取して研究してみるべきだ。
先人が残した資料を漁るのも良いだろう。
初級の植物にも使ってみなければ判らない効果がまだまだあるのだから、それが中級、上級の素材となれば尚更だ。
炎症を抑えるアスターの花びら。
保温効果が著しいピマンの実
セルリーがよく使う素材は植物が多いが、中級は魔獣、上級は魔物から採れる素材が大半を占めるようになる。角、牙、爪、毛、皮、眼球、内臓……その全てがあらゆる調合に使われ様々な効果を齎すのだ。
昨年12月の頭に王都からトゥルヌソルに帰って来て以降、先輩僧侶としてレンの指導にあたることになったセルリーは、午前9時から12時までを彼の指導に充てる事にした。
「せっかくだし師匠って呼びなさい。ついでに私の薬レシピを受け継いでくれると助かるわ」
「えっ」
「ご不満かしら?」
「不満なんてないですっ。でもセルリーさんが何十年って時間を掛けて作り上げた、いわば財産ですよね? それを……」
「そうね。本当なら弟子を取れば良かったんでしょうけど、今から募集するのも大変じゃない。それともレンには他の適任の子にアテがあるのかしら。見習いから始められる洗礼後の子で、精神年齢が成熟していて頭が良く、自分が受け継ぐものの貴重性をしっかりと認識して学んでくれる子。ついでに神力も多いと尚良いわ」
「条件が厳し過ぎます……」
「そりゃそうでしょ、大事な知識を譲るのよ?」
「ご尤もですけど……」
何に遠慮しているのか煮え切らない態度のレンに、セルリーは言う。
「あのね、最初に工房を訪ねて来た時にも言ったけど私はもういい歳のおばあちゃんなの。いつまで生きていられるか判んないんだから、貰えるものは貰っておきなさい」
「……師匠が一緒に金級ダンジョンに挑むって約束してくれるなら頑張ります」
「上等ね」
そういった経緯もあって、レンはセルリーの弟子になった。事前に初級教本を渡していたことも功を奏し、彼への講義はとても順調に進められて行く。
水の日は教会で魔法の勉強。
休みは週に一度、太陽の日だけ。
もともと学ぶことに抵抗がないレンは、クルトやバルドルパーティの4人が相応の戦力となるべく金級冒険者達に鍛えられている間に、知識と技術を貪欲に吸収していく。
雪が溶け、春になり、冒険者ギルドの掲示板を素材採取の依頼書が賑わせるようになる頃には一人で9種類の薬を調合、錬金出来るようになっていた。
「この薬、師匠の倉庫の素材で作ったのに本当に俺がもらってしまって良いんですか? 商人に卸した方が各地の人たちの役に立つと思います」
「レンに教えるために私も同じだけ作ったでしょう。私の分だけでも普段の倍量なの、そこに同じ素材を使っているのに効果が桁違いな薬が混ざってごらんなさい、納品される商人が困るわよ」
言っていることは理解しても、まだ納得のいかないらしいレンの心根に微笑ましさを感じつつ、セルリーは説得の言葉を重ねた。
「それに、パーティに所属している僧侶が作った薬はパーティの財産なの。レイナルド達に持たせなさい。あの子たちがこれから向かうのは敵地同然なんだから」
「ぁ……、はい。そうします」
「よろしい」
「でも素材の代金はお支払いしたいです」
「レイナルドからレンへの指導料を貰ってるの。素材代込よ」
「……本当ですか?」
「師匠の言葉を疑うなんてヒドイ弟子だわ」
むむむっとまだ難しい顔をしているレン。
「でも何か……こう、お礼がしたいです」
「だったら今まで扱ったことがないような素材を探してらっしゃい。そろそろ銀級への昇級に向けて動き出すんでしょう? レイナルド達の出発日は決まったの?」
「クルトさん達の特訓に目処が付いたから、来月にはマーヘ大陸に向かうそうです……レイナルドさん達が出発したら俺も昇級目指して冒険者の活動を再開します」
「そう、来月……新しい素材を楽しみにしているわ」
「えっ」
そっちですかと驚くやら呆れるやらのレンの様子に声を上げて笑った。
心配なのは同じでも、今から湿っぽくされては気が滅入る。
「新しい素材って……セルリーさんが見たことのない素材を俺がそんな簡単に見つけられるわけ……、あ」
「え?」
唐突にレンの目が輝いたのを目撃し、セルリーはとても嫌な予感がした。
●
翌日、工房にレンが持ち込んだそれは魔獣や魔物の角の一部分に見えた。
硬い材質で、厚さ1センチくらい、直径3センチくらいの円形素材。
だが触れてみればその異質さがよく判る。
何故って、セルリーの内側の神力が未だかつてないほど反応しているからだ。
「ちょっとレン、これは一体何なのっ、何の魔獣の……っ」
「魔獣じゃなくてリ……主神様の角、です」
「主……っ」
「以前は年に一度ぽろっと抜け落ちていたそうなんですけど、最近は……その、諸事情で少しでも伸びると折っちゃうんですよ。そうすると血が出るから止めてくださいって何度もお願いしているのに、邪魔だからって、全然聞いてくれないんです。ひどいと思いませんか」
「ひどいのはあんたの認識の方でしょ⁈」
「師匠もひどい」
レンはそう言うけど苦笑いの顔を見ればセルリーの反応を予想していたに違いない。
「くっ……なん、……くっ……本当にもう! なんていうものを持ち込むのかしらね!!」
「本人の許可は貰いましたから大丈夫です。このくらいならほとんど影響はありません」
「影響……!」
大きい物なら一体どんな影響を齎すのか、恐ろしくて聞きたくない。
聞きたくはないが、知りたいという好奇心に負けそうな自分を認めないわけにはいかない。セルリーは僧侶で、薬師で、錬金術師だが、その性は研究者だと自負している。
世界に自生する薬草に、神力がどう影響するのか。
僧侶のいない地域に僧侶の力を届けるために薬草が使えないだろうか。
考えて、考えて、集めて、調べて、実験し、失敗と成功を繰り返しながら完成させたのが『僧侶の薬』だ。
突如として手の上に置かれた新しい素材は神力の塊も同然で、これで何が出来るのか……考え出したら止まらないのは判り切っている。
しかも、いまは目の前に、優しく背中を押してくる恐ろしい弟子がいる。
精霊みたいに綺麗な顔をしているくせに、人を誑かす獄鬼のようではないか!
「見たことのない素材が欲しいって言ったのは師匠ですからね。責任もって分析・研究してください」
「いくら探してらっしゃいと言ったからって、どうして持ち込むのが主神様の……はぁ。どう考えたって、主神様の身体の一部を材料にしようなんて不敬極まりないわ」
「そんなことないですよ。師匠の『僧侶の薬』のことを話したら「大したものだ」って感心していましたし、角をトゥルヌソルで研究して良いか訊いたら、使い道があるなら自分も知りたいって言ってましたよ」
セルリーは額を抑える。
ツッコミどころが有り過ぎて何から言えばいいのか判らない。
更には彼女の気も知らずに追撃。
「主神様が言うには「万能薬」の素材になるらしいです」
「……万能薬?」
「です」
「万能薬……」
言いたい事はたくさんある。
しかし悔しいかな「万能薬」と聞いてしまったら動揺や恐れ多さよりも好奇心が勝ってしまう。
「俺としては神力が獄鬼に効くなら町をすっぽりと覆えるような結界が張れる魔導具を作ってみたいです」
「結界の魔導具……魔導具なら知り合いの僧侶の知り合いが……あぁ素材元は明かせないか……でも獄鬼の侵入を阻む結界……」
だんだんと研究者の顔になっていくセルリーは、目に力が宿った自分を見たレンの表情が安堵の笑みに変わった事に気付かない。
「レン、この……主神様の御角はまだあるの?」
「あります。俺の部屋にある分だけでもこんな長いツノが二本と、小さいのが結構……何度かまとめて処分したって言ってましたがリー……主神様の、職場? そっちの方には数十年分溜まってるって」
「そう……さっき言ってた影響って?」
「一ヵ所に神力が集まり過ぎると、均衡を保つために魔力が一時的に供給を増やすみたいで、場合によってはダンジョンの魔物による魔物の氾濫が発生する可能性があるそうです」
「なるほどね……って、えっ、だったら異常な神力で満たされているトゥルヌソルって危ないんじゃ⁈」
「それは俺が溢れさせているものなので平気です」
「……どういうこと?」
「神様の世界にもいろいろと約束事があって、この角は主神様の神力だから世界に影響を及ぼすけど、俺は異世界人なので、俺を経由して溢れる神力は影響しないという」
「……よくわからない事がわかったから、もういいわ」
セルリーは理解することを諦めた。
とりあえずレンの神力は神の力ではなくレン力で、トゥルヌソルを覆っているのがそのレン力だから問題ナシと考えれば良さそうだ――と、雑に結論付ける。
「万能薬の素材になるって、主神様が仰ったのね?」
「はい」
「素材……素材って事は他のものと調合するということ……この御角は神力の塊で、僧侶の力は神力を持つ僧侶の魔力だから、神力を癒しに使うには僧侶の魔力が……ううん、この場合は御角と同等の純然たる魔力の塊に……超級素材の実……ううん、いっそ超級魔物の魔石……でも……」
早速いろいろな他の素材との組み合わせを考え始めるセルリーは、齢67にして新たなる研究を始めることになるのだった。
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