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第3章 変わるもの 変わらないもの
72.警告と危機感
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「どうした?」
「急にすみません。レンくんが急ぎでレイナルドさんに話したい事があるって言うんですけど、前に行くわけにはいかないと思ったので」
「あぁ、それはな」
後ろに下がって来てくれたゲンジャルがクルトとそんな話をしていると、反対側にいたバルドル達はもちろんのこと馬車に乗っている三組の家族もとても不安そうな顔で此方を気にしている。
そりゃそうだ。
「で、レン。レイにどんな話があるって?」
「えっと……その前に聞きたいんですけど、まだ一時間も歩いていないのにどうして休憩なんですか?」
聞くと、ゲンジャルがとっても不機嫌な顔になった。
「よく判らんが馬車の中にいた家令が車輪がガタツクから一回停めろって言い出してな。あ、おまえに声を掛けたカメレオン科のオッサンのことな」
あぁあのヒトかと思いつつ先を促す。
「だが俺らが見た感じ普通に動いているし、変な音もしない。お互い警戒してんのは判ってるんだ、妙な真似されちゃ堪らんから詳しく話せって言ったところで口論さ」
停まった貴族の馬車から少し距離を置いてこちらも停まる。
「いま休憩されてもあんまり意味ないですよ。予定通りローザルゴーザとの中間地点でも休憩してもらわないと」
「ああ。それはもちろんだ」
3家族を乗せた馬車の御者をしている男の意見にはゲンジャルも素直に応じる。
これも信頼度というか、警戒度の差だ。
「まぁ何があろうと坊主たちの事はちゃんと守ってやるからな。心配すんな」
次いで小さな子ども達の頭を順番に撫でていく。
有名な金級冒険者に励まされた子ども達はとても嬉しそうだった。
「で、おまえが呼んだ理由は?」
「それなんですけど……」
どう説明すべきか結論が出ていなかったことを思い出して少し気まずくなる。
チラとマーヘ大陸の人たちを見ても、今は何も表示されていないし……。
(スキル「天啓」って最初の一回しか……って、うわっ)
脳内にスキルを思い浮かべた途端に、前方、マーヘ大陸の面々にだけ表示される真っ赤な画面。
(しかもコレ、もしかして……)
「えっ、ちょ、レンくん?」
「すみません、少しの間隠してください」
焦っているクルトと、戸惑い気味のゲンジャルの影に隠れるようにして真っ赤な画面……そこに表示されている名前に指先で触れると画面が広がった。
危険の二文字に続いて表示された相手の名前、出身大陸、それから五つ並んだ☆の内、二つの色が塗り潰されているのは危険度が下から二番目……やや危険って感じなのかな。
そして――。
「は……はぁっ⁈」
「!」
「ちょっ、レンくん!」
「うっ。す、すみません……!」
思わず大きな声を上げてしまい怒られるが、俺は彼らに反応するより危険表示が出ている全員の理由を確認することを優先した。
結果、出るわ出るわ、獄鬼の文字。
これは黙っているわけにいかないでしょ!
でも「天啓」の事をどう説明するか。
レイナルドは、俺の素性はトゥルヌソルに戻ってからシューさんとララさんに立ち会ってもらってすると言った。リーデン様が構わないと断言したからといって勝手なことはしたくない。
どうする。
どうしよう……、あ。
「……あの、ゲンジャルさん」
「なんだ」
「僧侶と獄鬼って、いわゆる天敵ですよね?」
「そう、だな」
顔付きが一気に険しくなったゲンジャルが頼もしく思える。
このタイミングで言い出したら、そりゃあなって感じかもしれないけど。
「俺、ジェ……半年前の獄鬼に初めて会った時に、それはもう不快で、気持ち悪くて、大変だったんです」
「あぁ聞いてる。それでレイナルドに監視を依頼したんだろ?」
「はい。半年前が最初で、それ以降は一度も感じなかったので忘れていたんですが……この不快感はそれに似てます。でも、半年前に比べたらすごく弱いというか……残滓? あの中の誰かが憑かれてるって感じじゃなくて……」
「判った」
ゲンジャルは言い、労うように俺の肩を叩く。
「クルト、後ろからグランツェに断ってセルリーとヒユナを呼んで来い。オセアン大陸から来ている冒険者の中にも一人僧侶がいたはずだから、事情を話してこっちに」
「はい」
「バルドル、悪いがしばらくレンの隣にいてくれ。あいつらの視界から隠す感じで」
「了解です」
クルトとバルドルが動くと同時、バルドルパーティのメンバーは警戒度を上げた。
「レン、確認する。憑かれていると思われるヤツは、あの中にはいないんだな?」
「いません」
断言する。
何故ならスキル「天啓」で表示された全員の危険理由に獄鬼の文字はあったけれど、その全員が「接触有り」で危険度は一番高い貴族でも★三つだった。
この様子なら、獄鬼に憑かれているならそう表示されると思う。
「クソッ」
ゲンジャルは舌打ちした後で言う。
「レイをどうにかして連れて来る、レンは周囲の警戒を続けてくれ」
「判りました」
「急にすみません。レンくんが急ぎでレイナルドさんに話したい事があるって言うんですけど、前に行くわけにはいかないと思ったので」
「あぁ、それはな」
後ろに下がって来てくれたゲンジャルがクルトとそんな話をしていると、反対側にいたバルドル達はもちろんのこと馬車に乗っている三組の家族もとても不安そうな顔で此方を気にしている。
そりゃそうだ。
「で、レン。レイにどんな話があるって?」
「えっと……その前に聞きたいんですけど、まだ一時間も歩いていないのにどうして休憩なんですか?」
聞くと、ゲンジャルがとっても不機嫌な顔になった。
「よく判らんが馬車の中にいた家令が車輪がガタツクから一回停めろって言い出してな。あ、おまえに声を掛けたカメレオン科のオッサンのことな」
あぁあのヒトかと思いつつ先を促す。
「だが俺らが見た感じ普通に動いているし、変な音もしない。お互い警戒してんのは判ってるんだ、妙な真似されちゃ堪らんから詳しく話せって言ったところで口論さ」
停まった貴族の馬車から少し距離を置いてこちらも停まる。
「いま休憩されてもあんまり意味ないですよ。予定通りローザルゴーザとの中間地点でも休憩してもらわないと」
「ああ。それはもちろんだ」
3家族を乗せた馬車の御者をしている男の意見にはゲンジャルも素直に応じる。
これも信頼度というか、警戒度の差だ。
「まぁ何があろうと坊主たちの事はちゃんと守ってやるからな。心配すんな」
次いで小さな子ども達の頭を順番に撫でていく。
有名な金級冒険者に励まされた子ども達はとても嬉しそうだった。
「で、おまえが呼んだ理由は?」
「それなんですけど……」
どう説明すべきか結論が出ていなかったことを思い出して少し気まずくなる。
チラとマーヘ大陸の人たちを見ても、今は何も表示されていないし……。
(スキル「天啓」って最初の一回しか……って、うわっ)
脳内にスキルを思い浮かべた途端に、前方、マーヘ大陸の面々にだけ表示される真っ赤な画面。
(しかもコレ、もしかして……)
「えっ、ちょ、レンくん?」
「すみません、少しの間隠してください」
焦っているクルトと、戸惑い気味のゲンジャルの影に隠れるようにして真っ赤な画面……そこに表示されている名前に指先で触れると画面が広がった。
危険の二文字に続いて表示された相手の名前、出身大陸、それから五つ並んだ☆の内、二つの色が塗り潰されているのは危険度が下から二番目……やや危険って感じなのかな。
そして――。
「は……はぁっ⁈」
「!」
「ちょっ、レンくん!」
「うっ。す、すみません……!」
思わず大きな声を上げてしまい怒られるが、俺は彼らに反応するより危険表示が出ている全員の理由を確認することを優先した。
結果、出るわ出るわ、獄鬼の文字。
これは黙っているわけにいかないでしょ!
でも「天啓」の事をどう説明するか。
レイナルドは、俺の素性はトゥルヌソルに戻ってからシューさんとララさんに立ち会ってもらってすると言った。リーデン様が構わないと断言したからといって勝手なことはしたくない。
どうする。
どうしよう……、あ。
「……あの、ゲンジャルさん」
「なんだ」
「僧侶と獄鬼って、いわゆる天敵ですよね?」
「そう、だな」
顔付きが一気に険しくなったゲンジャルが頼もしく思える。
このタイミングで言い出したら、そりゃあなって感じかもしれないけど。
「俺、ジェ……半年前の獄鬼に初めて会った時に、それはもう不快で、気持ち悪くて、大変だったんです」
「あぁ聞いてる。それでレイナルドに監視を依頼したんだろ?」
「はい。半年前が最初で、それ以降は一度も感じなかったので忘れていたんですが……この不快感はそれに似てます。でも、半年前に比べたらすごく弱いというか……残滓? あの中の誰かが憑かれてるって感じじゃなくて……」
「判った」
ゲンジャルは言い、労うように俺の肩を叩く。
「クルト、後ろからグランツェに断ってセルリーとヒユナを呼んで来い。オセアン大陸から来ている冒険者の中にも一人僧侶がいたはずだから、事情を話してこっちに」
「はい」
「バルドル、悪いがしばらくレンの隣にいてくれ。あいつらの視界から隠す感じで」
「了解です」
クルトとバルドルが動くと同時、バルドルパーティのメンバーは警戒度を上げた。
「レン、確認する。憑かれていると思われるヤツは、あの中にはいないんだな?」
「いません」
断言する。
何故ならスキル「天啓」で表示された全員の危険理由に獄鬼の文字はあったけれど、その全員が「接触有り」で危険度は一番高い貴族でも★三つだった。
この様子なら、獄鬼に憑かれているならそう表示されると思う。
「クソッ」
ゲンジャルは舌打ちした後で言う。
「レイをどうにかして連れて来る、レンは周囲の警戒を続けてくれ」
「判りました」
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