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第71話 世界線が乱れる
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バレンタイン当日は登校中から騒然としている。
「快斗、なんかみんな怖い」
「うーん、去年以上だな…」
電柱の陰や曲がり角で待ち構える女子たちはなにも全員が可愛いわけではない。
中にはトラップとも呼べるやつだっている。
それに片思いの相手を今の彼女からどうやって奪ってやろうかと画策する女子もいる。
「ま、俺たちには無縁だと思うけど…」
「チェリー、チョコあげるー!」
げっ、蓮水さんだ…
「は、蓮水さん!義理チョコでも貰っちゃうとアウトなんですみません!」
「え、あーそうだったそうだった!危うくチェリーのチェリーを貰っちゃうとこだったね」
「ガルル、インランめ」
「カレン、まだ嫌ってるのかよ…」
そう、このバレンタインのルールでややこしいのは義理チョコでもダメというところだ。
よく義理ならといってうっかり受け取ってしまい、大変なことになるというのを目撃する。
ちなみに俺は去年、そのうっかりに相当な期待を寄せていたのだが、義理チョコどころかその日誰にも話しかけられなかったのはいい思い出だ…
今年はこうして声をかけてくれる人がいるだけで自らの成長を実感するのであった。(童貞のままだけど)
「おい桜庭、お前まだチョコレートもらってないのか?」
正門前にバートが現れた。
「え、ああ順調にかわしてる…」
「はぁ?へんな強がりはよせよ。俺なんかもう3個ももらっちゃったもんねー」
「え、まじか…ちなみに誰からだ?」
「よくわからんけど三人組のちょっと太ったやつだったけど、いただけるもんは頂戴する主義だからな、はっはっは!」
なんか嫌な予感がするなと思ったが、その三人組がバートの後ろから現れた。
「あちゃー…バートさん、ご愁傷様です…」
「な、なんのことだ?う、うわっ、お前ら何をする!」
この三人組は通称「デブタヌキ」(デブ、ブタ、タヌキをミックスしたらしい、さらにこの名称を広めたのは本人たちだというからよくわからない…)
彼女たちがぽっちゃりしてるからこんな名称が広まったというのもあるが、実はそれでいて相当に性欲が強いらしい…
去年の主なボスは彼女たちで、どう断るかというより三人がかりで攻めてきた時どう逃げるかで大いに盛り上がった。
俺はこいつらにすら狙われなかったのだけど…
バートは闇に引き摺り込まれた…
なんか叫び声が聞こえた気がするけど…俺は見なかったことにしよう…
「カレン、今日は授業どころじゃないし校長室にでも避難してゆっくりする?」
「うん、バート犯されてたね」
「はっきり言うな!」
カレンにはオブラートに包むということを覚えてもらわないといつか通報されそうだな…
バートというライバル?は散った。
あとは警戒を続けて今日一日を終えたら本当にゴールが見えてくる。
しかし校長室は誰もいなくて鍵がしまっていた。
「あれ?校長がいないなんて珍しいな…」
「パパもチョコから逃げてる」
「え、誰の?」
すると槍が飛んできた…
「あ、海神《わだつみ》さんとかいたなー…すっかり忘れてたよ…」
そこには手紙で「チェリーにもあげるから」と書かれていた。
俺はこれに触れた瞬間ゲームオーバーなので丁重に無視した。
そして今年も薬師寺さんに女の子が群がっているのだが断るのに四苦八苦している…
「薬師寺さん、どうぞ!」
「薬師寺様ー私の愛を!」
「い、いやお気持ちだけで…今年はだな…、あっ、チェリーいいところにきた!」
俺は困り果てた薬師寺さんに呼び止められたので、無視した。
「いやまて、なんで無視するんだ!?」
「だってそのチョコ俺に擦りつけて逃げる気でしょ?散々遊んできた罰ですね、はっはっは」
困り果てて女の子の大群に押し切られる薬師寺さんを見て気持ちがスッキリした俺は多分性格が悪いと思うがあの人ら相手であれば心は痛まない。
そして一度デブタヌキに襲われたバートが息を切らして戻ってきた…
「あ、バートさん、お疲れ様でした…」
「くそー俺はじめてだったのに…俺の初めてはカレンちゃんって決めてたのに!こうなったら…」
そういうと先程の三人組がまた現れた。
「おい、この桜庭とやらが相手してくれるらしいぞ?」
「あ、お前卑怯だぞ!?」
「こうなったら道連れだー、はっはっは…お、おい、違う、俺じゃない、離せ、離せー!」
バートはもう一度連れていかれた…
「あーあ、もう終わりだな…」
「バート、アウトー!」
「それ言いたかっただけだろお前…」
バートは帰らぬ人となった…?
そしてバレンタインで騒然とする中、避難場所に困った俺たちは一旦寮に戻ってピザを頼むことにした。
程なくしてもちろんアンがきた。
「ハピバレ」
「そんな略し方するやつ初めてだよ…」
「チョコもらった?」
「いや、色々あってもらってない…」
「フッ」
「あ、笑ったな!」
ちなみにこいつはもらったのか?
「お前こそどうなんだ?」
「215個」
「ま、まじか…」
「でも」
「でも?」
「毒入りのがあった…」
「通報しろ!」
有名人は大変、ということか?
「そういえば修行の成果は?なにか身につけたのか?」
「ああ、バッチリ」
「すごいな、ちなみになんなんだ?」
「凄すぎて使うの怖いレベル」
「え、そんなにか…気になるな」
「見せてやるよ」
「え、まじか?」
「フン」
★
有名人は大変、ということか?
「そういえば修行の成果は?なにか身につけたのか?」
「ああ、バッチリ」
「すごいな、ちなみになんなんだ?」
「凄すぎて使うの怖いレベル」
「え、そんなにか…気になるな」
「もう見せてやったぞ」
「え、なに?なにが起きたの!?」
皆様はお分かりだろうか。
アンは時間遡行能力を手に入れた。
「これ以上は無理、世界線が乱れる」
「は?なにいってるんだよお前?」
「今日の夜、試合あるから」
「あ、ああ…応援いくよ」
「ちなみにもう一つ奥義があるから」
「もう一つって言われても一つめがわからんからな…」
アンは得意気な顔をして帰っていった…
「カレン、今日アンの再戦見にいくだろ?」
「いく、オールイン!」
「全財産はやめて!」
カジノ狂いみたいになってるなこいつ…
しかし夜の学校はまだバレンタインの名残が継続しているため潜入に苦労するのである…
次回 アンとアニーの能力バトル開始!?
さらに不死身のバートが最後の攻勢!
そしてカレンからのバレンタインの贈り物は?
アンが人間離れしていってる…
「快斗、なんかみんな怖い」
「うーん、去年以上だな…」
電柱の陰や曲がり角で待ち構える女子たちはなにも全員が可愛いわけではない。
中にはトラップとも呼べるやつだっている。
それに片思いの相手を今の彼女からどうやって奪ってやろうかと画策する女子もいる。
「ま、俺たちには無縁だと思うけど…」
「チェリー、チョコあげるー!」
げっ、蓮水さんだ…
「は、蓮水さん!義理チョコでも貰っちゃうとアウトなんですみません!」
「え、あーそうだったそうだった!危うくチェリーのチェリーを貰っちゃうとこだったね」
「ガルル、インランめ」
「カレン、まだ嫌ってるのかよ…」
そう、このバレンタインのルールでややこしいのは義理チョコでもダメというところだ。
よく義理ならといってうっかり受け取ってしまい、大変なことになるというのを目撃する。
ちなみに俺は去年、そのうっかりに相当な期待を寄せていたのだが、義理チョコどころかその日誰にも話しかけられなかったのはいい思い出だ…
今年はこうして声をかけてくれる人がいるだけで自らの成長を実感するのであった。(童貞のままだけど)
「おい桜庭、お前まだチョコレートもらってないのか?」
正門前にバートが現れた。
「え、ああ順調にかわしてる…」
「はぁ?へんな強がりはよせよ。俺なんかもう3個ももらっちゃったもんねー」
「え、まじか…ちなみに誰からだ?」
「よくわからんけど三人組のちょっと太ったやつだったけど、いただけるもんは頂戴する主義だからな、はっはっは!」
なんか嫌な予感がするなと思ったが、その三人組がバートの後ろから現れた。
「あちゃー…バートさん、ご愁傷様です…」
「な、なんのことだ?う、うわっ、お前ら何をする!」
この三人組は通称「デブタヌキ」(デブ、ブタ、タヌキをミックスしたらしい、さらにこの名称を広めたのは本人たちだというからよくわからない…)
彼女たちがぽっちゃりしてるからこんな名称が広まったというのもあるが、実はそれでいて相当に性欲が強いらしい…
去年の主なボスは彼女たちで、どう断るかというより三人がかりで攻めてきた時どう逃げるかで大いに盛り上がった。
俺はこいつらにすら狙われなかったのだけど…
バートは闇に引き摺り込まれた…
なんか叫び声が聞こえた気がするけど…俺は見なかったことにしよう…
「カレン、今日は授業どころじゃないし校長室にでも避難してゆっくりする?」
「うん、バート犯されてたね」
「はっきり言うな!」
カレンにはオブラートに包むということを覚えてもらわないといつか通報されそうだな…
バートというライバル?は散った。
あとは警戒を続けて今日一日を終えたら本当にゴールが見えてくる。
しかし校長室は誰もいなくて鍵がしまっていた。
「あれ?校長がいないなんて珍しいな…」
「パパもチョコから逃げてる」
「え、誰の?」
すると槍が飛んできた…
「あ、海神《わだつみ》さんとかいたなー…すっかり忘れてたよ…」
そこには手紙で「チェリーにもあげるから」と書かれていた。
俺はこれに触れた瞬間ゲームオーバーなので丁重に無視した。
そして今年も薬師寺さんに女の子が群がっているのだが断るのに四苦八苦している…
「薬師寺さん、どうぞ!」
「薬師寺様ー私の愛を!」
「い、いやお気持ちだけで…今年はだな…、あっ、チェリーいいところにきた!」
俺は困り果てた薬師寺さんに呼び止められたので、無視した。
「いやまて、なんで無視するんだ!?」
「だってそのチョコ俺に擦りつけて逃げる気でしょ?散々遊んできた罰ですね、はっはっは」
困り果てて女の子の大群に押し切られる薬師寺さんを見て気持ちがスッキリした俺は多分性格が悪いと思うがあの人ら相手であれば心は痛まない。
そして一度デブタヌキに襲われたバートが息を切らして戻ってきた…
「あ、バートさん、お疲れ様でした…」
「くそー俺はじめてだったのに…俺の初めてはカレンちゃんって決めてたのに!こうなったら…」
そういうと先程の三人組がまた現れた。
「おい、この桜庭とやらが相手してくれるらしいぞ?」
「あ、お前卑怯だぞ!?」
「こうなったら道連れだー、はっはっは…お、おい、違う、俺じゃない、離せ、離せー!」
バートはもう一度連れていかれた…
「あーあ、もう終わりだな…」
「バート、アウトー!」
「それ言いたかっただけだろお前…」
バートは帰らぬ人となった…?
そしてバレンタインで騒然とする中、避難場所に困った俺たちは一旦寮に戻ってピザを頼むことにした。
程なくしてもちろんアンがきた。
「ハピバレ」
「そんな略し方するやつ初めてだよ…」
「チョコもらった?」
「いや、色々あってもらってない…」
「フッ」
「あ、笑ったな!」
ちなみにこいつはもらったのか?
「お前こそどうなんだ?」
「215個」
「ま、まじか…」
「でも」
「でも?」
「毒入りのがあった…」
「通報しろ!」
有名人は大変、ということか?
「そういえば修行の成果は?なにか身につけたのか?」
「ああ、バッチリ」
「すごいな、ちなみになんなんだ?」
「凄すぎて使うの怖いレベル」
「え、そんなにか…気になるな」
「見せてやるよ」
「え、まじか?」
「フン」
★
有名人は大変、ということか?
「そういえば修行の成果は?なにか身につけたのか?」
「ああ、バッチリ」
「すごいな、ちなみになんなんだ?」
「凄すぎて使うの怖いレベル」
「え、そんなにか…気になるな」
「もう見せてやったぞ」
「え、なに?なにが起きたの!?」
皆様はお分かりだろうか。
アンは時間遡行能力を手に入れた。
「これ以上は無理、世界線が乱れる」
「は?なにいってるんだよお前?」
「今日の夜、試合あるから」
「あ、ああ…応援いくよ」
「ちなみにもう一つ奥義があるから」
「もう一つって言われても一つめがわからんからな…」
アンは得意気な顔をして帰っていった…
「カレン、今日アンの再戦見にいくだろ?」
「いく、オールイン!」
「全財産はやめて!」
カジノ狂いみたいになってるなこいつ…
しかし夜の学校はまだバレンタインの名残が継続しているため潜入に苦労するのである…
次回 アンとアニーの能力バトル開始!?
さらに不死身のバートが最後の攻勢!
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