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第28話 シルバーコレクター

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またスタジオに来てしまった…

ここにくると大体誰かが裸になってるからなぁ…

でも校長に口利きできる人なんてそういないし、命先輩に頼るしか俺の生きる道はない。

「カレン、目を瞑ってろよ。」

「目隠しして、あれ好き」

「学校で濡らそうとするなよ!このあと校長室にもいくんだぞ!?」

そんなカレン連れて行ったらまた校長になんて言われるかわかったもんじゃないからな…

ま、そんな毎日ヌード撮影ばっかりはしてないか。

「失礼しま…ままま!?でぇー!?」

「あらー、カレンと快斗くん。何か用事?」

そこにはあられもない姿の、メラニーさんがいた…

「おお、チェリーじゃないか。ちょっと待ってくれ。今から仕上げなんだ。さ、メラニーさんこっち向いて」

「ちょっと待つのはお前だよ!何してんの!?これ許可とってんの!?ていうかメラニーさんいつ来たの!?聞きたいことだらけで整理つかんわ!」

「騒々しいなぁチェリーは。なんかあったのか?」

「この状況が何もないんだとしたら俺の精神はもう神の領域ですよ!!」

い、いかん見てしまった、メラニーさんの裸を…
ダメダメダメ、カレンの前でメラニーさんに興奮するなんてそんなことは…

「快斗くんどうしたのよー、よそよそしいわね。私と貴方の仲でしょ?」

「うわー、寄ってくんな!頼む、頼むから服を着てくれー!」

もう何かが先走りそうだった…

とりあえずというか相当ごねたけどメラニーさんが服を着てくれたので、聞きたいことは一旦置いといて命先輩に話をした。

「…というわけなんですけど、校長を説得してもらえませんかねぇ…」

「なるほどな、でも校長との約束ならそれは守らないといけないと俺は思うぞ。」

「いや、そうなんですが…高校生にそんな大金せびるのもどうかと…」

「なるほどな、でも校長との約束ならそれは守らないといけないと俺は思うぞ。」

「わかってますよ…でもそこをなんとか!命先輩の話なら聞いてくれそうですし…」

「なるほどな、でも校長との約束なら…」

「いやまじめに答える気ないだろあんた!」

「当たり前だ!俺の頭の中はメラニーさんでいっぱいなんだよ!」

くそっ、どいつもこいつも…

「なんか面白そうな話ね。私もついて行っちゃおうかしら。ね、カレンも行くでしょ?」

「私は快斗とずっと一緒だもん」

なぜかカレンが俺の腕にしがみついて離れない。
え、自分のおかんに嫉妬してる?
まぁでもこの人だけは母という認識を持ってはいけないよな…

「まぁ来る分にはいいんですが…メラニーさんどうやって校舎に入ったんですか?あなたが学校歩いてたら大混乱になるでしょ?」

「佐津江くんが用意してくれた専用隠し通路を通ってきただけよ?」

「だけよ?じゃないわ!まだそんなのもあるのこの学校!?どうやって用意するんだそんなもん!」

当たり前のように頭のおかしいことばかり言う連中だな…

「ちなみに聞きますが、その隠し通路で校長室の前まで行けたりはしないんですか?」

「ざんねーん、このスタジオと私の部屋の直通なのよね。あ、私の部屋に来たい?もう、快斗くんも好きよねー」

「あんたら絶対逢引してるだろ!」

大体この人の家そんなに近いのか…?
隠し通路って簡単に作れるもんなのか!?

「うーん、やっぱり学校を歩き回るのは危険です。メラニーさんはここにいてください!」

不安だったがカレンを見張りに残して命先輩を連れて校長室に向かった。

「でも命先輩ってよくメラニーさんの裸直視できますよね…やっぱりレンズ越しだとそういう目線じゃなくなるとか?」

「なにを言っている。あんなもの見て無事で済むわけないだろう。既にズボンの中はビッシャビシャだ!」

「いや汚ねえな!履き替えてこいよ!」

そのまま校長室の椅子に座るのか…ま、校長だからいっか…

「失礼します!」

「ほほう、銭なし芳一の快斗くんと、おお、佐津江くん。ささ、お茶でよいか?」

ないのは耳だよそれは…それにお茶なんて出してもらったことないぞ?やっぱり命先輩は校長に有効だな。

「して、佐津江くんを連れてきたということは借金を勘弁してほしい、ということじゃな?」

「察しがいいですね。さ、命先輩からもお願いします。」

「校長、まぁ俺からもお願いしますよ。」

「うーむ、しかしそれはできん。約束は約束じゃ。」

「校長、例のやつ特別に校長用にポスターサイズで焼いておきますけど?」

「なぬ?じゃいいよ。」

「え、いいの!?その例のやつって1000万円より価値あるの!?なにそれすごい気になるんですけど!?」

あっさりと俺の借金は消えた…
用事は終わったと命先輩はさっさと帰ってしまった。
メラニーさんが撮りたくて仕方ないんだろうな…

「しかし借金を棒引きする代わりに一つお願いを聞いてくれんかの?」

「はぁ、借金がなくなるんなら全然いいですけど。」

「さすがは昼休みにうちの娘と屋上でチュッチュしまくって先生に怒られておった快斗くんじゃな。早速お願いというのはじゃな…」

「え、それも知ってるの!?めっちゃ恥ずかしいんですけど!もう頼むから監視するのやめてくれない!?」

あーんとかしてたのに…見てたのかこいつ!

「君はトライデントの話はもう聞いたかの?」

「え、それって海神《わだつみ》先輩のことですか?ええ、童貞キラーがどうとか、俺が狙われてるとかなんとか、それがどうしたんですか?」

「うむ、彼女は確かに童貞キラーじゃ。最終的に君の童貞を仕留めにくるじゃろう。しかし彼女のもう一つの異名は『シルバーコレクター』と呼ばれておる。」

シルバーコレクター

悪い言い方をすれば万年2位のことをこういう言い方で呼ぶのだが、海神《わだつみ》先輩は日本ではぶっちぎりのトップなんじゃないか?

「ふむ、少し説明を加えよう。経験人数が一人しかいない男のことを業界用語で『準童貞』と呼ぶのじゃが、彼女はその準童貞を好物にしておっての。そこからきた名前がシルバーコレクターというわけじゃ。わかったかの?」

「色々と情報が多すぎてツッコミどころしかないわ!まずその業界ってなんの!?童貞を管理する組織とかあんの!?それに準童貞ってなに!?シルバーコレクター?全然うまいこと言ってないわ!!」

なんだよそれ…でも海神《わだつみ》先輩って話した感じだと大人しそうだったのにな…

「それで、その準童貞さんが狙われるのをなんとかしろと?でも経験済みならもう良くないですかそれ?」

「何を言う!愛する人ただ一人としか関係を持たず、一途なまま生涯を遂げたいと思うものもおるじゃろ?そんなものの純粋な気持ちのためにも守ってもらう必要があるのじゃ。」

愛する人としかしたくない、ねぇ…
まぁ俺も結局そういうことだよな、まだその人ともしてないけど…

「ま、童貞の君にはわからんかの、ププッ」
「うっざ!」

くそ、こいつにバカにされるのは腹立つな…

「で、その準童貞さんは誰ですか?校長が直々にお願いする人って…」

「え、私じゃよ?」

「は?」

「何を言っておる。この学校で準童貞と言えば私しかおらんじゃろ。私は生涯メラニーしか女は知らんぞい。」

「はぁー!?いや、あんたの夜事情とか知らんけどさ、なんで校長が狙われるんだよ!?他にいないのか?」

「この学校で唯一の準童貞が私なんじゃ。てへっ」

「てへっ、じゃねえよ!あんた以外は全員複数とヤッてるってこと!?なにそれ!?俺だけゼロっておかしくないすか!?」

もしかして服部《ふくべ》も、テニス部のアホ二人組も、みんなそうなのか?嘘だ、嘘だと言ってくれ…

「そーいうわけで私がトライデントに狙われておるので彼女を説得するのが君の仕事じゃ。諦めさせてくれたら…っと早速きおったわい。」  

校長がサッと席を立つと、窓を貫いた槍がさっきまで校長の座っていたところにぶっささった。

「うわっ!?え、なんでそんなに冷静なんすか!?」

「慣れじゃよ」

「こんなもんにコツなんかねえわ!」

よく見ると槍になにか括られている。
手紙?

「ほれ、毎回このように『愛してる』とワシに向けて求愛してくるのじゃ。そういうところは可愛いのじゃがの」

「全然可愛くないどころか怖いわ!なんで告白される度に命の危険に晒されないといけないの!?え、あの人喋れるよね?よね!?」

なんか恐ろしいものを相手にすることになった…

俺はあの槍に貫かれて死ぬのか?それとも襲われて俺の童貞が死ぬのか…

まぁそれは後で考えよう…

早くスタジオに戻らないとカレンとメラニーさん待たせてるからな…

「失礼します、カレンいい子にしてた…って、なんで!?」

なぜかカレンと蓮水さんが睨み合っていた…

そしてその足元に命先輩が…転がっていた…。

「チェリーがスタジオ行ったって聞いたから来てみたのに、なんであんたがいるのよ!?」

「私は快斗とずっと一緒なの。しっしっ」

なんかまた喧嘩はじめてる…

「あ、チェリー!会いにきてやったぞ!それなのにこの小動物がうるさいんだよ。」

「うっさいストーカー」

「いやカレン口悪いな!」

犬猿の仲というやつか?
しかしなんで命先輩が無惨なことになってるんだ?

「あの、命先輩は何かしたの?」

「こいつ?なんか裸のお姉さんの写真撮ってたからぶっ飛ばしたの。ほんとうちのクラスもこいつのファン多いけど私は趣味じゃないわー」

な、なるほど…案外蓮水さんは常識人なのか?

…あ!メラニーさんがいない…

「カレン、メラニーさんは!?」

「ママ?着替えて出て行ったよ?」

うわ、ヤバいぞこれ…

「あれあんたの母親?クソビッチじゃん!」

「ママはビッチよ。あなたよりね!」

「いやカレンそれ全然フォローになってないぞ!」

そんなことよりメラニーさんを保護しないと学校がパニックになる…

二人を置いてスタジオを飛び出した。

どこだ、どこに…って、あーあ…

あーあだよこれは…
もう例えるなら、人がゴミのようだった…
というかゴミ人間の群れだった…

グランドで全校男子が1カ所に群がる中からメラニーさんの声がする。

「はーい、皆さん並んで並んで!順番よー」

「俺、俺からお願いします!」
「おい、俺が先だ!メラニーさーん!」

いや、午前中あんなに元気なかったのにこいつら…
呆然とする俺の肩を後ろから誰かが叩いた。

「あ、薬師寺さん!?」

「この前は完敗だったよチェリーくん。それよりあれはなんだ?」

選挙の時は写真に取り乱してたくせに、今日はやけに冷静だな。
なんだかんだ言ってもこの人は女慣れしてるんだな。

「あれですか?あれはこの前の写真のメラニーさんが来てるんですよ。薬師寺さんも5062人目に加えてきたらどうですか?」

大体5000人とどうやって知り合ったのか、それを知りたいよ…

「な、なんだと!?メラニーさんが来てるのか!?早く言えクソチェリーがぁ!それにチェリー、俺の経験人数は5128人だ!間違えるなよ!メラニーさーん!俺も混ぜてー」

薬師寺さんは全力で群れに突進し人混みをかき分けていた…

え、あれからそんなに増えたの!?
そんなにフォロワーみたいに増えるもんなのか!?

まぁメラニーさんの件はもう任されてないし、また学校中の男子が精気を奪われて登校してくるだろ…

スタジオに再び戻ろうとすると俺の足元に槍が飛んできてぶっ刺さった。

「うわー!え、こわいよこれ!?全然慣れる気がしないんですけど!」

括り付けられていた手紙を開くとこう書いてあった。

『チェリー、明日部室にきて。』

突然のお呼び出しでした…

いや、まじで普通に言えよ…

そしてスタジオに戻るとカレンが一人で待っていた。

「カレン、蓮水さんは帰ったのか?」

「私よりあの人がいた方がよかった?」

こわっ…なんか最近カレンが恐妻化してきてるような…

「い、いや、帰ってくれてホッとしたよ。」

「帰らせたの、あのメス豚」
「どこでそんな言葉覚えたんだよ!?最近口悪いよね!?」

ちょっとご機嫌斜めなカレンを連れて俺たちは寮に帰ることにしたのだが、今日は女たちが飢えているのだ…

何も夜這いは男ばかりではないと言うことだ…

次回 寮に襲い掛かる女の群れから童貞を守れ!?

そして部室でトライデント炸裂!?

いやもう殺してくれ…
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