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おまけ
しおりを挟むあれから十年。
マルセルはスミット領で羊と戯れていた。
まだ領地に着いたばかりの頃、作物が育ちにくいスミット領をどうやって進展させていくかマルセルは悩んでいた。
そんな時風の噂で聞いたガンダラード商会。何やら保存食を作る機械なる物があるらしい。
何か糸口になるのではと、早速商会へ手紙を出した。
手紙を受け取り、スミット領に赴いたのは次男のケビンだった。
この十年で彼もかなりの仕事を任せて貰っているらしい。
相談を受けたケビンは暫し考え一つの案を出した。
それが“羊”だった。
毛織物は大変高価で他国からの輸入に頼っていたこの国で羊毛を作る。
そして機械織りの技術を高め、同時に雇用も増やそうというわけである。
それからマルセルは領民に掛け合い、協力者を募った。
結果は直ぐには出なかったが、三年経ち一部の貴族の間でスミット領の絨毯が人気になったのをきっかけにみるみる業績を上げていった。
今ではドレスの上に羽織ると丁度いいと、羊毛で出来たボレロが大人気だ。
羊の毛を刈りながらマルセルはこの十年を振り返る。今年やっと婚姻した弟のバルカル。
相手は公爵令嬢で大層仲が良いらしい。
「マルセル様~!」
後ろから声をかけられ振り向くと、そこにいたのは嘗ての側近だった。
父上である国王からの遣いなのだろう。
マルセルの頑張りを認めてくれたからなのか、王城で使用されている毛織物はスミット領産が多い。
「今回は相談があって参りました」
「相談?」
「えぇ、ここの毛織物は素晴らしい。是非他国に輸出してみないかと陛下が」
思ってもいない提案にマルセルは驚くが、それ以上に嬉しさが勝った。
マルセルは確かに間違いを犯したかもしれない。
しかし協力をしてくれる領民や、気遣ってくれる家族たち。
ーー王太子になるだけが幸せではないと今なら心から言えるな。
マルセルと同じように嬉しそうに笑う嘗ての側近と共に、話を進めるため屋敷へと向かった。
その頃ナタリアはーーー
十年の月日でやっと現実を受け入れたのか、ここ最近は大人しくしている。が、相変わらず見目が良い男性に秋波を送ることはやめていない。
【後書き】
コメントを頂き、急遽マルセル救済(?)回を追加しました!
初めての連載で取りこぼしがたくさんあったにも関わらず、HOT一位という信じられない結果を頂きました。
皆さんには感謝しかないですm(_ _)m
読了、ありがとうございました♡
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