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第2章
第26話 朝の散歩と秘密の匂い
しおりを挟む早朝の薄闇の中。
ぼくは短剣を構え、ノアに向かっていく。
ノアは相変わらず素手で、ぼくの短剣を持つ手を叩く。手首が痙攣し、短剣がカランと地面に落ちる。拾って構え直し、再び斬り込む。
身体を動かすのはいい。
無心になれる。
このところ荒んでいた心がすっと静まっていく。
「だいぶよくなってきましたね」
「そりゃ、どう、も!」
キン、と短剣が鳴る。ノアが爪で弾き返したのだ。
まったく。ノアが強すぎて嫌になる。
付け入る隙がまるで見当たらない。
とりあえず、今の目標は、ノアに一太刀入れること。
それができれば、魔物討伐に出かける許可がおりる。
執事のせーロンによれば、従者は主の護衛も兼ねているので、戦闘スキルも有していないとだめらしい。
特に、馬車の通る外道では魔物が襲ってくることもあるので、対魔物戦術は必須とのこと。
そこで、公爵家の兵士に稽古をつけてもらうようにと命じられたのだ。一緒に魔物狩りに行ってみるように、とも。
兵士の宿舎に行ってみたけれど、誰も申し出を受け入れてくれなかった。貧民街の孤児など、相手をする暇はないと。
『連れてってやったことにしてやるよ』と言われた時には、あまりに不誠実すぎる態度に愕然とした。これが、いざという時にアルティアの命を預ける者達かと思うと、思わずその力量を疑ってしまった。こんな奴ら、頼る価値もない。
ということで、困ったときのノア頼みだ。
ぼくは今まで、魔物と戦ったことがない。
いい機会だし、ここらで魔物討伐を経験しておくのもいいだろう。
だけどノアは頭が固いから、『私に一太刀入れることができるまでは、魔物討伐など、危なくてさせられません!』と、魔物討伐はお預けにされているのだ。
久しぶりに、魔界にいた頃のお小言爺の姿が垣間見えた。
闇魔法があれば、一撃で仕留められそうだけどな。闇の霧で包み込んで、窒息させるだけでいいんだもの。
それを言うと、魔力には限りが~とかいって、また怒られそうだから言わない。
まぁ、たしかに。ぼくの体術や剣術にはまだ不安がある。
魔物を目の前にして魔力切れで魔法が使えなくなる様を想像するとゾッとする。
ここはちゃんと、ノアに一太刀入れられるくらい強くなるまで我慢しよう。
と、ノアがその手を止めた。
そしてしゅるりとぼくの影の中に消える。
『我が君、誰かこちらに来ます』
「わかった」
ぼくは短剣を懐に隠し、側に落ちているクワを持つ。藁かき用のクワだ。
そうして、あたかも今まで厩の掃除をしていたかのように装う。
稽古場として、敷地内にある厩の裏は最適だ。滅多に人が来ないし、屋敷や使用人寮から離れているので、人目を気にしなくて済むからだ。
ぼくは平民の雑用係である下男に頼んで、厩の掃除を代わってもらっている。下男は喜んでぼくに仕事を渡した。
少しして、小さな影が近づいてくるのが見えた。
ぼくはその人物が誰か気づき、目を見開く。
「アルティア様!?」
「ここにいると、サラから聞いたの」
サラには、もしものときにすぐに連絡が取れるように早朝は厩にいることを伝えてあった。
もちろん、サラは稽古のことは知らず、ぼくが厩の掃除をしているだけだと思っている。
『べつに自分の仕事でもないのに、そんなに仕事が好きなの?』なんて、サラは呆れていた。
それにしても、アルティアはどうしたんだ?
いつもはこんなに早く起き出すことはないのに。
まさか、
「何かあったのですか?」
ぼくは少し焦りながら聞く。
「何にもないわよ、私だってたまには早起きくらいするわ」
アルティアは失礼ね、と言いたげに唇を尖らせるけれど、笑みが隠せていない。
その表情で、本当に何もないのだと分かってほっと息をつく。
「もう、脅かさないでくださいよ。てっきり何かあったのかと……」
たとえば、使用人の誰かから襲われて逃げてきたとか。
いや、それはないか。
そんなことをすれば使用人本人はおろか、一族郎党皆殺しにされる。そんな危なすぎる橋を渡ってまでアルティアに手を出すやつはサンロードの使用人にはいないだろう。
あとは、何かしてくるとすれば、マリアベルか。
あいつは何を企んでるのかよくわからないからな。
未だ謎の解決を見ない闇魔法の件もある。
「それで、何かご用で?」
「あら、何か用がないと会いに来ちゃいけないのかしら?」
「そんなことはありませんが……」
あまり親密にしすぎていると、周りから変な目で見られても困る。
アルティアはそんなこと全く気にしていないようだけど。
「早朝の空気って、冷たくて美味しいのね。まるで形のない氷のように辺りが澄んでいるわ」
「そうですね」
屋敷の広い庭の向こう、森の近くからただよってくる白い霧を見る。
昨夜降った雨が、霧となって立ち上っているのだ。
暗い空と、薄明るい空と、新鮮な緑と土と水の匂い。
幻想的な世界が、そこには広がっている。
「少し、散歩をしましょうよ。あの丘の方へ行きたいわ」
「ポニーを連れてきますか」
「いいえ、歩きましょう」
「わかりました。ちょっと待っていてください」
ぼくはクワを厩にしまい、そばの木にかけてあった上着をとって、アルティアと並んだ。
「アルティア様、その格好はなんですか。外に出るにしても、もう少し何かあったでしょうに」
アルティアは、純白のレースのネグリジェに、薄いストールをまとっただけの姿だった。
「レディがそのような格好で出歩くなど、はしたないですよ」
「しょうがないじゃない。一人では着替えられないんだもの」
「はぁ、一度着替えに屋敷に戻りますか」
「いやよ!そんなことしてたら、せっかくの景色を逃してしまうでしょう!」
たしかに、この景色は朝日が完全に昇ってしまえば見られなくなるが。
「わかりました。では、これを羽織ってください」
ぼくは、持っていた羽織りをアルティアの肩にかけた。
「ふふ、ジェシーの匂いがするわ」
「なっ!嗅がないでください!」
鍛錬のときは脱いでいたから、汗臭くはないと思うけど……
顔が熱くなるのがわかる。
「安心する匂いだわ」
「………そうですか」
ぼくらは黙ったまま、丘の方へと歩いていく。
地面近くの草花には雨粒が溜っていて、歩くたびに靴を濡らした。
少し土がぬかるんでいるところもある。
ぼくはアルティアに手を差し出した。
「アルティア様、お手をどうぞ」
「ティア、よ」
「え?」
「今は二人きりだわ」
そういえば、そんな約束をしたんだっけ。
「──ティア様、お手を」
「ええ、ありがとう」
嬉しそうにはにかむアルティアに手を添えられ、どぎまぎと歩く。
緊張でいたたまれず、早く何か話題をと探していると、アルティアがふいに立ち止まって言った。
「ジェシー、本当に背が伸びたわね」
助かった、と内心嘆息して答える。
「そうですね。最近は特に、急激に伸びている気がします」
魔界にいた頃は、年齢に比べて体の成長が緩やかだった。
けれど人間界で過ごすうち、どういうわけか身長がぐんぐん伸びている。
ここに来たばかりの頃は、アルティアより頭一つ分ほど低かった背も、いまは変わらないくらいだ。
「やだわ、このままじゃ抜かされちゃう」
「そうでないと困ります。ぼくの方が背が高くないと、エスコートもうまくできません」
ぎこちなく重ねられた手を見て、二人で苦笑する。
「ふふ、そうね」
とく、とく、と心臓が鳴る。
静かな世界で、この音がアルティアに届いてしまわないかと緊張する。
一方、アルティアは穏やかに微笑みを浮かべている。重なった手もすべらかで、緊張の色なんて微塵も感じさせない。それが少し、悔しかった。
「ねぇ、ジェシーの好きな色は何色かしら?」
「?……そうですね、青でょうか」
「まぁ、私の目の色ね!」
「……そうですね」
咄嗟に浮かんだのが、アルティアの目の色だったとは言えない。
「じゃあ、犬派かしら?それとも猫派?」
「猫派です」
「同じだわ!気まぐれなんだけど、時々うんと甘えてくれるところが可愛いわよね」
「わかります。厩に住んでいる虎柄の猫をご存知ですか? 彼女がまさにそうなんですよ」
「知っているわ!ミセス・グランでしょ? あの赤いリボンは私が巻いてあげたのよ」
「ああ、そうだったのですか。とても似合ってますよね」
「そうでしょ? ふふ、それじゃあ、次ね。ジェシーの好きな食べ物はなに?」
「それは料理ですか? 果物なら、りんごが好きです。料理はよく知りませんが、サンロード公爵家で出てくるスープはコクがあって好きですね」
スープだけは、主人たちに出すものと同じものを使用人も飲んでいる。
といっても、主人たちによそったあとになるので、ほとんどくずの野菜しか入っていないけれど。
「ああ、私も好きよ。我が家のスープの味は、王宮で出されるスープにも負けないと思うわ」
じゃあ、と、アルティアが次の質問を考えるそぶりを見せる。
「あの、ティア様、いきなりどうしたんですか。さっきから質問ばかり」
アルティアはどちらかというと、おしゃべりで、ぼくは聞き役に回ることが多い。
だというのに、今日はやけにぼくに話をさせる。
「嫌だった?」
「そんなことはありませんが……ぼくの趣向なんて知っても面白くないでしょう?」
「あら、すっごく面白いわよ!」
ぼくは苦笑いだ。
「あのね、私ってジェシーのこと、何も知らないなと思ったの」
「そうですか? 十分ご存知だと思いますけどね。ぼくは貧民街の孤児で、なんの後ろ盾もない弱い人間。現在、従者としてのマナーを勉強中で、ダンスが苦手。数学は得意だから、ティア様の先生をしています」
「そういうことを言っているんじゃないわ!もっとこう、本質的な部分よ」
ぼくは肩をすくめた。
アルティアの言わんとしていることはわかっているからだ。
気づかないふりをして、ちょっとからかってみただけ。
「それで? あとは何を聞きたいのです? 何でも答えますよ」
「じゃあ、そうね……、ジェシーは、貧民街でどんなふうに育ってきたの?」
なるほど。アルティアが本当に聞きたかったことはこのことか。
ぼくは貧民街での生活を思い出す。
もっとも。たった一ヶ月ほど過ごしただけだが。
それでも、あまりいい思い出はない。
父上が設定した仮初の記憶はもっと酷い。
「楽しい話はありませんよ」
「いいの、聞かせて。正直にね」
正直に、か。
ぼくは迷った。
もういっそ、全てを正直に言ってしまうか?
本当のぼくは、貧民街の孤児じゃなく、あなたの家名を王族から貴族に追い落とした魔王の息子で魔族ですってね。
そんなことできるはずもなく、ぼくは貧民街の孤児であった頃のジェシーの記憶を呼び覚ますことにした。それがたとえ父上に作られた設定でも、確かに生きていた感情を。
「はぁ、わかりました。……そうですね、まず、ぼくの母は貧民街で娼婦をしていました。娼婦って、わかります?」
「わ、わかるわ。その、男の人の……相手をするのよね」
アルティアは顔を真っ赤にする。
だから言ったのに。
アルティアにはちょっと刺激が強すぎる話かもしれない。
ぼくは苦笑してから話を続けた。
「そう、男性に体を売る仕事です。ぼくの母は、たぶん、どこぞの貴族の令嬢だったのでしょう。だから、生活常識が欠如していた。そんな女性が生きていくためには、そういう仕事をするくらいしか道がないのです」
話し始めると不思議なもので、貧民街の孤児、ジェシーが生き生きと色づいていく。
「物心がついて、かあさんが何をしているのか何となくわかってきたとき。ぼくも、かあさんを助けなきゃって、人から食べ物を盗んだりもしました。かあさんに喜んでもらいたくて。でも、かあさんは、すごく怒るんです。そんな卑怯なことをしてはだめだって。御先祖様に顔向けができない生き方はしちゃだめだって。でも、そんなこと、気にしている余裕なんてないんですよ。今日明日、生きるか死ぬか。食べ物も水も足りなくて、そんな家畜にも劣る生活をしているのに。そんなくだらないプライドに縛られていたから、かあさんは死んだんだ」
ふと、頬に暖かさを感じてハッと顔を上げる。
話しているうちにいつの間にか、本当にそんなふうに育ってきたのだと錯覚していた。
アルティアが、ぼくの頬を撫でていた。
まるで、涙でも拭うかのように。
「ティア様、ぼく、泣いてませんよ?」
「でも、泣きそうだわ」
アルティアは、気づけばぼくを抱きしめ、ぼくの頭を撫でてくれていた。
その優しさに触れ、だけど、ぼくの心はささくれだって、つい強い言葉を投げかけたくなってしまう。
「何も知らないくせに、分かったようなことを言わないで」
アルティアの肩がびくりと震えた。
「あ、す、すみません。言い過ぎました」
アルティアはいっそう強くぼくを抱きしめた。
ぎゅうぎゅうと、潰れるほどに。
「あ、アルティア様?」
「ジェシーは時々、辛そうな顔をするわ。特に、こうして私が触れたとき。その原因が、貧民街での生活にあると思っていたの。……だけど、違うのかしら」
ギクリ、と今度はぼくが肩を震わせる番だった。
「いつか、話してくれる……?」
はぁ、とため息をつく。
この人にはかなわないな。
「そうですね、いつか」
そんな日がくるといいと、本気で思った。
たとえそれが、関係が決裂する日だとしても。
嘘偽りなく、アルティアの前に立ちたい。
「ティア様、朝日、すっかり昇りきってしまいましたね」
「あら、本当だわ!登っていくところを見たくてここまで来たのに。ジェシーのせいで見られなかったわ」
「ぼくのせいですか」
「そうよ。ひどいじゃない。罰として、明日の朝も付き合いなさい」
「どうせ起きないでしょ」
「あなたが起こしに来なさい。いいわね?」
「はい、はい」
「お嬢様ー!!ここにおられたのですか。お部屋にいなかったから心配しましたよ!」
サラがメイド服のエプロンを揺らして走ってくる。
「書き置きくらいしてくださいまし」
「忘れてたわ」
「もう、ジェシーくんまでいなかったから、てっきりレシド先生が言うように駆け落ちでもしてしまったのかと思いましたよ」
「「か、駆け落ち(ですって)!?」」
声が揃って、「あっ」と、アルティアを見る。
アルティアの顔はプチトマトみたいに真っ赤だった。
「バカサラ!何言ってるんだよ!」
「あら、口が滑ったわ」
ほほほ、とサラが口元に手を当てて笑う。
確信犯だな。
いつもからかってる仕返しか。
アルティアは、「駆け落ち…駆け落ち…」とうつろな目でつぶやいている。
ちょっと、戻って来て!?
「ジェシーくんのお顔も真っ赤よ?」
「うるさいよ、サラ!」
ていうか、レシド先生!
駆け落ちって!
サラに変なこと吹き込まないでください!!
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