13 / 19
破壊力が
しおりを挟む「やぁ、エミリーちゃん。聖女の服が変わったね。前よりもずっと可愛いよ」
「こ、こんにちは魔王さん。えと、ありがとうございます。前に聖女服をデザインしてくださっていた神父のジェイ・ジェフリーさまが突然失踪なさったそうで、デザイン担当者が変わったのです。前よりも布地が多くて、わたしも気に入っています」
「うん、こんどの担当者は消さずに済みそうでよかったよ」
「?」
きょとん顔のエミリーちゃん。
可愛い。可愛い。好きすぎて頭がおかしくなりそう。
「そういえば、わたしまたいつの間にかこのお部屋に。勇者さまや仲間のみなさんはどちらに?」
勇者? ああ、なんか叫んでたな。
『エミリーを返せぇええええ!!! この、変態魔王めぇええええ!!』
とかなんとか。この前エミリーちゃんを触手攻めしたときのことを言っているのだろうか。
てか変態って、馬鹿か勇者。何を当たり前のことを。男はみんな変態だろ?
「エミリーちゃんは気にしなくていいんだよ。大丈夫、彼らのことは(まだ)殺さないなら。ほら、今日も人間の良いエピソードを聞かせてくれるんでしょう?」
「はい、わたし頑張ります!」
「うん、可愛い。今日はね、カヌレを用意してみたんだ。味が色々あるんだよ。さ、テーブルへどうぞ」
「わぁ、すごいですぅ! とってもきれい!」
「ふふ」
…………ところで、俺は自然な態度が取れているだろうか。挙動不審じゃないよな?
『エミリーちゃん、大好きだよ』(抱きしめる)
んのぉおおおおおおおっ!
思い出すな、俺!
恥ずかしくて埋まりたくなる!
まるでクソ吐きそうだった少女漫画のヒーローのような告白ではないか。この俺が。最恐の魔王たるこの俺が。
───いかん、平静を保て。変に意識したらかっこ悪いぞ。
そう、醜悪な人間の首をひとつひとつ丁寧に刎ねていくときのように、人間の村に火を放ち、逃げ惑う人間どもを追撃するときのように。
最近の俺は優しすぎるな。先日の戦闘も触手投下だけで済ますとは。エミリーちゃん以外に差し向けた触手個体には溶解粘液を多めに入れてはおいたが。
………フッ、落ち着いたか。
「ま、魔王さん」
「なにかな?」
「カヌレさんの中からトロトロのが出てきて、その、お洋服が………」
そのカヌレには、溶けたホワイトチョコレートが入っている。知らずかじりついた聖女エミリアの頬、首筋、胸元には、勢いよくそれが飛び散っていた。
───ガシャン!!!
「魔王さん!?」
俺は鼻をおさえ、割れた(頭でかち割った)テーブルからゆっくり顔を上げた。
どくどく、鼻からは赤い血が。
なんだこれは。なんだこの衝撃は……!?
「すまない、少しめまいが」
「どうしましょう、血が!!」
チョコレートまみれで慌てるエミリーちゃん。汚された白い胸元が揺れる。
~~~~~悶絶。
俺はその場で仰向けに倒れた。
『か わ い い』と血文字でダイイングメッセージ。
手をクロスで組む。
ありがとう、いい悪魔生だった。
「わぁぁぁん! 死なないで魔王さぁぁん!!」
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

孤独な王子の世話を焼いていたら、いつの間にか溺愛されていました
Karamimi
恋愛
人魚の血を引くエディソン伯爵家の娘、ステファニーは、海の動物と話しが出来たり、海の中でも呼吸する事が出来る。
そんなステファニーは、昔おばあ様からよく聞かされた人魚と伯爵の恋の話が大好きで
“自分にもいつか心から愛する人に出会える、それまではこの領地で暮らそう”
そう決め、伯爵領でのんびりと暮らしていた。
そんなある日、王都にいるはずのお父様が1人の少年を連れてやって来た。話を聞くと、彼はこの国の第一王子で、元王妃様と国王の子供との事。
第一王子を疎ましく思っている現王妃によって命を狙わている為、王都から離れた伯爵領でしばらく面倒を見る事になった。
ちょこちょこ毒を吐く王子に対し、顔を真っ赤にして怒りながらも、お節介を焼くステファニー。王子と一緒に過ごすうちに、いつしかステファニーの中に恋心が芽生え始めた。
そんな中王都の海では、次々と異変が起こり始めていて…
ファンタジーに近い恋愛ものです(*'▽')

私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない
朝陽七彩
恋愛
十五年ぶりに君に再開して。
止まっていた時が。
再び、動き出す―――。
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
衣川遥稀(いがわ はるき)
好きな人に素直になることができない
松尾聖志(まつお さとし)
イケメンで人気者
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
私の初恋の男性が、婚約者に今にも捨てられてしまいそうです
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【私の好きな人が婚約者に捨てられそうなので全力で阻止させて頂きます】
入学式で困っている私を助けてくれた学生に恋をしてしまった私。けれど彼には子供の頃から決められていた婚約者がいる人だった。彼は婚約者の事を一途に思っているのに、相手の女性は別の男性に恋している。好きな人が婚約者に捨てられそうなので、全力で阻止する事を心に決めたー。
※ 他サイトでも投稿中

この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
めーめー
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこから彼女は義理の弟、王太子、公爵令息、伯爵令息、執事に出会い彼女は彼らに愛されていく。
作者のめーめーです!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる