魔王は勇者パーティーの聖女に恋をする

灰羽アリス

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破壊力が

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「やぁ、エミリーちゃん。聖女の服が変わったね。前よりもずっと可愛いよ」

「こ、こんにちは魔王さん。えと、ありがとうございます。前に聖女服をデザインしてくださっていた神父のジェイ・ジェフリーさまが突然失踪なさったそうで、デザイン担当者が変わったのです。前よりも布地が多くて、わたしも気に入っています」

「うん、こんどの担当者は消さずに済みそうでよかったよ」

「?」

 きょとん顔のエミリーちゃん。
 可愛い。可愛い。好きすぎて頭がおかしくなりそう。

「そういえば、わたしまたいつの間にかこのお部屋に。勇者さまや仲間のみなさんはどちらに?」

 勇者? ああ、なんか叫んでたな。

『エミリーを返せぇええええ!!! この、変態魔王めぇええええ!!』

 とかなんとか。この前エミリーちゃんを触手攻めしたときのことを言っているのだろうか。
 てか変態って、馬鹿か勇者。何を当たり前のことを。男はみんな変態だろ?

「エミリーちゃんは気にしなくていいんだよ。大丈夫、彼らのことは(まだ)殺さないなら。ほら、今日も人間の良いエピソードを聞かせてくれるんでしょう?」

「はい、わたし頑張ります!」

「うん、可愛い。今日はね、カヌレを用意してみたんだ。味が色々あるんだよ。さ、テーブルへどうぞ」

「わぁ、すごいですぅ! とってもきれい!」

「ふふ」

 …………ところで、俺は自然な態度が取れているだろうか。挙動不審じゃないよな?

『エミリーちゃん、大好きだよ』(抱きしめる)

 んのぉおおおおおおおっ!

 思い出すな、俺!
 恥ずかしくて埋まりたくなる!

 まるでクソ吐きそうだった少女漫画のヒーローのような告白ではないか。この俺が。最恐の魔王たるこの俺が。

 ───いかん、平静を保て。変に意識したらかっこ悪いぞ。

 そう、醜悪な人間の首をひとつひとつ丁寧に刎ねていくときのように、人間の村に火を放ち、逃げ惑う人間どもを追撃するときのように。
 最近の俺は優しすぎるな。先日の戦闘も触手投下だけで済ますとは。エミリーちゃん以外に差し向けた触手個体には溶解粘液を多めに入れてはおいたが。

 ………フッ、落ち着いたか。

「ま、魔王さん」

「なにかな?」

「カヌレさんの中からトロトロのが出てきて、その、お洋服が………」

 そのカヌレには、溶けたホワイトチョコレートが入っている。知らずかじりついた聖女エミリアの頬、首筋、胸元には、勢いよくそれが飛び散っていた。

 ───ガシャン!!!

「魔王さん!?」

 俺は鼻をおさえ、割れた(頭でかち割った)テーブルからゆっくり顔を上げた。
 どくどく、鼻からは赤い血が。

 なんだこれは。なんだこの衝撃は……!?

「すまない、少しめまいが」

「どうしましょう、血が!!」

 チョコレートまみれで慌てるエミリーちゃん。汚された白い胸元が揺れる。

  ~~~~~悶絶。

 俺はその場で仰向けに倒れた。
 『か わ い い』と血文字でダイイングメッセージ。
 手をクロスで組む。
 ありがとう、いい悪魔生・・・だった。

「わぁぁぁん! 死なないで魔王さぁぁん!!」
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