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第一章 魔女☆爆誕
6 『魔女の隠れ家』を作ろう②
しおりを挟む翌日の日曜日。車は大家のおばさんに返したので、私たちは自転車で山のふもとまで出かける。お弁当を詰め込んだリュックにほうきを刺して、ジジたちは前かごにイン。
いざ出発!
シャーっと自転車で坂を下る。風が気持ちいなぁ。この浮遊感は、空を飛ぶ感覚に少し似てる。
……似てる、かぁ。そんなこと言えちゃうんだな、私。だって実際空飛べちゃうもんね、私。ぐふふ。
「顔きめぇ」
「魔女の大鍋で茹でるぞちみ☆」
苔むした木の根で覆われた緑の小屋は、一見して小屋だとはわからない。ファンタジー映画に出てくる魔女の隠れ家そのものだ。
く~~~っ、高まるぅ!!
今日は半壊した家具の修理と、お掃除をする。湿った家具類をひっぱり出して太陽光で乾燥させてる間に、室内をちゃちゃっと。さて、こんなときに役立つ魔法がある。
『魔女のすゝめ』
五、各種魔法の使い方
(ア)初級 5ページ
『掃除魔法』!
さて、ここに並べたるはお掃除道具のみなみなさま。
ほうき、ちりとり、ぞうきん、新聞紙、ほこり取り!
さあみなさん、いきますわよ。
「〝取り掛かりなさい〟」
ぴくんと震えて起き上がる掃除道具の面々。何か追加の指示が必要かと思えばそんなことはなく、一斉にお掃除に取り掛かる。まるで意思を有するかのように勝手に動く道具たち。
たしかにファンタジーの世界で見た光景。その中にいま、私は当事者として立ってる。
ああ、ステキ。とんでもなくステキ。くらっときちゃう。
人間って自分でお掃除なさるの? まあ大変ね。 私? 私は魔女だから「ちちんぷいぷい」で道具にやらせるわ。当たり前じゃなぁい。
道具の間を縫って、木の枝を咥えたジジが外へ出る。ふむ、昼食に約束された高級缶詰分はしっかり働く気らしい。ピンキーちゃんは羽を使って天井のほこりを落としてる。およしよ、せっかくの綺麗な羽が汚れちゃうよ。そうだ、これあげる。雑巾の切れ端。
室内の掃除は彼らに任せて、私は外で家具の修理をすることにした。
大工仕事も2日目となれば慣れたもの。テーブル、いす、棚。トントン、カンカン、新しい板を打ち付けて半壊の家具を修復していく。2時間もあれば十分だった。
その間に、室内のお掃除も完了したようだ。
『浮遊魔法』をかけた無重力状態の家具類を押して室内に運び込む。そしてついに、
「『魔女の隠れ家』完成!!」
「やっとだぜ」
「わーいっ! ママのおうちふえた~」
ピンキーちゃんがパチパチ拍手するのに合わせて、掃除道具たちも互いの体を打ち鳴らしてる。そこで『掃除魔法』の効果時間が切れた。動かぬ道具に戻っていく道具たち。ありがとう、おかげで助かったよ。
〝四、拠点をつくろう! 誰にも見つからない場所で魔法の練習を!〟
ミッションコンプリートだぜ!
「で、これからどうすんだ?」
「当たり前じゃん。魔法の練習だよ」
せっかく人の目を気にしないで済む〝練習場〟が手に入ったのだから、利用しない手はない。
何するかなぁ、この際徹底的に『浮遊魔法』極めたいところだけど、薬草調合もしたいんだよね。魔女が山奥の隠れ家でやることといたらそれでしょ?(偏見)
『魔女のすゝめ』が収録するレシピには、心惹かれる怪しげな薬がたくさん登場する。
毒薬、呪い薬、媚薬、そして惚れ薬。
惚れ薬。中村先生に飲ませたら私に惚れてくれるのかしら……て、いかんいかん。そんなことをし始めたら悪い魔女になってしまう。私は良い魔女でいたい。というか、チキンな私はやばめの魔法に手を出せない。『魔女のすゝめ』の中には一晩で街を破壊できるレベルの核爆弾的な魔法まで収録されてるけど、一生使わずに終わるだろう。……たぶん。
みんな、私を怒らせちだめだよ☆
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