パパに側室なんて許さない!

灰羽アリス

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12 龍姫のターン、再び(過激Ver)

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 コンコン、と部屋にノックの音が響いた。
 
「誰かしら」

「ごはんの呼び出しにはまだはやいよね」

「どうぞ」

 入ってきたのは、あたしたちの世話係のミアだった。猫耳のミア。今日もやわらかそうな耳がぴこぴこ動いてる。

「贈り物が届いています」

「贈り物? わーい!」

 リボンのかけられた頭くらいの大きさの箱に、トニーがとびつく。

「誰から?」

 あたしが聞くと、ミアは信じられない人物の名前をあげた。

「龍姫さまからですよ。贈り物なんて、見かけによらずお優しい方なんですね」

「トニー!あけちゃだめ!!」

「え?」

 間に合わなかった。トニーはすでに開けてしまっていた。色んなものが飛び出る箱のイタズラは、あたしたちが龍姫に何度もしかけてきたお気に入りのイタズラだ。もし、やり返されたら………
 だけど、あれ? トニーは平気そう……

 箱の中をふたりでのぞく。可愛い双子のテディベアが入っていた。取り出してみる。別に、変わったところはない。龍姫にしては、まともな贈り物だ。──いや、まともすぎる。

 カチカチカチカチ、音がする。

「なんの音だろう?」

「さぁ……」

 カチカチカチカチ

 そのとき、あたしの指がテディベアの頭の中にかたい感触をみつけた。ピンときた。それと同時に、ぞっとした。

 急いで窓にかけより、テディベアを外へ投げ捨てる。

 ドン、と大きな花火があがった。

 あたしとトニーはへなへなと床に座り込んだ。お互いの肩を抱き合って、ぶるぶる震える。

「トリー、ぼくたち殺されそうになった?」

「トニー、口に出して言わないで……」

 イタズラの仕返しにしては、あまりに過激。龍姫は、本気であたしたちを殺しにきた。側室の話が決まりそうって言ってた割には、ずいぶん焦ってるみたい。龍の国の大使としての滞在期間は、あと一週間と少し。そのあいだにパパの心を射止めて、側室の話を確実なものにしたいのかも。龍姫は、もうなりふりかまっていられないってわけだ。作戦の邪魔になるあたしたちの排除を、息の根を止める方向で考えるほどに。

「こうなったら、あたしたちも過激な手段に出るしかないわ」

「魔法で爆発させる?」

「そうしてやりたいところだけど、だめ。現場に残留する魔力の質を測られたら、あたしたちがやったって、バレるわ」

「じゃあ、どうするの?」

 ところでなんだけど、とあたしは困り顔をつくってみせる。

「───不幸な事故って、どこにでもあるわよね」

 あたしたちは、にぃっと笑みを深めあった。
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