25 / 48
犯人を探ります
しおりを挟む
「ちょ、ティアさん!?」
「何をしているのだティア殿!」
「いけませんティア様! ペッしてください! ほら、ペッ!」
それが予想外だったのだろう。
全員が驚き、リリスは吐き出させようと背中を叩いてきた。
そうはさせないとコップを手に取り、水で一気に流し込んだ。
「──んぐっ、うん。おっけい」
「何が『おっけい』ですか! 危険な薬だってことを忘れていませんか!?」
凄まじい剣幕に、私は仰け反る。
「い、いや……私にはこれがあるから、大丈夫だよ!」
そう言って右指に嵌めている指輪を見せる。
これには魔術刻印を刻んでいて、効果は『魔力回復』『消費魔力軽減』『自然治癒』『打撃軽減』『斬撃軽減』『属性耐性』『状態異常耐性』『思念伝達』『言語理解』『身代り』の10個。
生きるために必要な効果が、この指輪に全て詰め込まれている。
致命傷を受けない限り、寿命以外では死ななくなる道具だ。
私は神だから普通よりは頑丈だけど、それでも万が一ということがある。なので私は、これを最優先で作っていたのだ。
今回は、それが役に立つ。
薬の副作用は、極端に言うと毒に近い。
それは『状態異常耐性』で無効化出来る。つまり麻薬は、私にとってただの強化薬でしかない。
それを説明すると、リリスは何とも言えないような表情になった。
「もう……これからは、やる前に何か一言ください。焦りましたわ」
「ごめんって。でも、これで材料は判明した。……ふむ、案外面倒な素材で作られているんだね。そうかなるほど……これは良い情報を掴んだかもしれない。でも、まさかこんな連続して同じような問題が起こるのか?
……いや、可能性としては非常に高い。そう考えるのが妥当だけど」
「あ、あの……ティアさん? どうしたのですか?」
「──ん? ああ、薬の材料がわかった。ついでに犯人も絞ることが出来たよ」
「それは本当ですか!?」
そのことにジュドーさんだけではなく、アリス王女とエリックも目を丸くして驚いていた。
「嘘、ではないのだな?」
それでもまだ信じ切れていないのか、疑いの目を向けてくる。
ならば、見せてあげれば嫌でも信じるだろう。
「──ほい」
私は先程飲み込んだ麻薬と全く同じ物を、テーブルの上に『創成』した。
「な、何だこれは!?」
「何だって……例の薬だよ。本当の名前は『デビルパウダー』って言う麻薬らしいね。材料は一部を除いたら簡単な物ばかりだったよ。でも、その一部の入手方法が厄介で、それのおかげで犯人を絞り込めた」
「その材料とは……?」
「──悪魔の心臓だよ」
本来、悪魔には心臓がない。
でも、そう仮定されている部分はある。
体が消滅した時に出来る真っ赤な球体。それが悪魔の核であり、心臓だ。
それは人の手では触れることすら出来ず、それが魔界に返って器を得ることが出来れば再び限界する。
……幻魔の時は、リリスがそれすらも焼却したけどね。
悪魔の心臓をどうにか出来るのは、同じ悪魔のみ。
なので、同じ悪魔が麻薬を広めているのか、それとも悪魔と契約している誰かが、その悪魔と協力をしているのか。
ここまで絞れれば、調査することは限定的となるだろう。
「……まさか、また悪魔が関係しているとは思わなかったけどね。ほんと悪魔ってのは、私に恨みでも持っているのかねぇ」
この下界に落ちて来て、悪魔に連続で邪魔をされた。
今回に関して言えば、そいつらが全て悪いって訳じゃない。それでも悪魔に対して思うところがない訳ではない。
……この野郎邪魔しやがって、程度には思っている。
「大丈夫ですわティア様。今回も、私が全て消滅させて差し上げます」
「いやいや、今回のメインは王女様達であって、私じゃないよ。私はあくまでも補助。麻薬についての情報を出すだけだ。……でも、いざという時は頼りにしている」
「──ええ! ご期待に応えられるよう、頑張りますわ!」
今回の悪魔は、まだどんな相手なのか判明していない。
協力者が麻薬を販売しているだけで、悪魔は戦闘系という可能性もある。
……いや、協力者が居る居ないに関係なく、悪魔は戦闘が得意なタイプだろう。
悪魔の心臓が必要ということは、悪魔を狩っていることは間違いないんだ。もしそいつと対面したら、私は無力な小娘だ。夢の中でしたように、逃げるしかない。
「これまで八方塞がりだった問題を、こんな一瞬で解決してしまうとは……ティア殿は何者だ?」
アリス王女が問う。
──私が何者か?
そんなの、わかりきっていることだろう。
「ただの錬金術師だよ」
「何をしているのだティア殿!」
「いけませんティア様! ペッしてください! ほら、ペッ!」
それが予想外だったのだろう。
全員が驚き、リリスは吐き出させようと背中を叩いてきた。
そうはさせないとコップを手に取り、水で一気に流し込んだ。
「──んぐっ、うん。おっけい」
「何が『おっけい』ですか! 危険な薬だってことを忘れていませんか!?」
凄まじい剣幕に、私は仰け反る。
「い、いや……私にはこれがあるから、大丈夫だよ!」
そう言って右指に嵌めている指輪を見せる。
これには魔術刻印を刻んでいて、効果は『魔力回復』『消費魔力軽減』『自然治癒』『打撃軽減』『斬撃軽減』『属性耐性』『状態異常耐性』『思念伝達』『言語理解』『身代り』の10個。
生きるために必要な効果が、この指輪に全て詰め込まれている。
致命傷を受けない限り、寿命以外では死ななくなる道具だ。
私は神だから普通よりは頑丈だけど、それでも万が一ということがある。なので私は、これを最優先で作っていたのだ。
今回は、それが役に立つ。
薬の副作用は、極端に言うと毒に近い。
それは『状態異常耐性』で無効化出来る。つまり麻薬は、私にとってただの強化薬でしかない。
それを説明すると、リリスは何とも言えないような表情になった。
「もう……これからは、やる前に何か一言ください。焦りましたわ」
「ごめんって。でも、これで材料は判明した。……ふむ、案外面倒な素材で作られているんだね。そうかなるほど……これは良い情報を掴んだかもしれない。でも、まさかこんな連続して同じような問題が起こるのか?
……いや、可能性としては非常に高い。そう考えるのが妥当だけど」
「あ、あの……ティアさん? どうしたのですか?」
「──ん? ああ、薬の材料がわかった。ついでに犯人も絞ることが出来たよ」
「それは本当ですか!?」
そのことにジュドーさんだけではなく、アリス王女とエリックも目を丸くして驚いていた。
「嘘、ではないのだな?」
それでもまだ信じ切れていないのか、疑いの目を向けてくる。
ならば、見せてあげれば嫌でも信じるだろう。
「──ほい」
私は先程飲み込んだ麻薬と全く同じ物を、テーブルの上に『創成』した。
「な、何だこれは!?」
「何だって……例の薬だよ。本当の名前は『デビルパウダー』って言う麻薬らしいね。材料は一部を除いたら簡単な物ばかりだったよ。でも、その一部の入手方法が厄介で、それのおかげで犯人を絞り込めた」
「その材料とは……?」
「──悪魔の心臓だよ」
本来、悪魔には心臓がない。
でも、そう仮定されている部分はある。
体が消滅した時に出来る真っ赤な球体。それが悪魔の核であり、心臓だ。
それは人の手では触れることすら出来ず、それが魔界に返って器を得ることが出来れば再び限界する。
……幻魔の時は、リリスがそれすらも焼却したけどね。
悪魔の心臓をどうにか出来るのは、同じ悪魔のみ。
なので、同じ悪魔が麻薬を広めているのか、それとも悪魔と契約している誰かが、その悪魔と協力をしているのか。
ここまで絞れれば、調査することは限定的となるだろう。
「……まさか、また悪魔が関係しているとは思わなかったけどね。ほんと悪魔ってのは、私に恨みでも持っているのかねぇ」
この下界に落ちて来て、悪魔に連続で邪魔をされた。
今回に関して言えば、そいつらが全て悪いって訳じゃない。それでも悪魔に対して思うところがない訳ではない。
……この野郎邪魔しやがって、程度には思っている。
「大丈夫ですわティア様。今回も、私が全て消滅させて差し上げます」
「いやいや、今回のメインは王女様達であって、私じゃないよ。私はあくまでも補助。麻薬についての情報を出すだけだ。……でも、いざという時は頼りにしている」
「──ええ! ご期待に応えられるよう、頑張りますわ!」
今回の悪魔は、まだどんな相手なのか判明していない。
協力者が麻薬を販売しているだけで、悪魔は戦闘系という可能性もある。
……いや、協力者が居る居ないに関係なく、悪魔は戦闘が得意なタイプだろう。
悪魔の心臓が必要ということは、悪魔を狩っていることは間違いないんだ。もしそいつと対面したら、私は無力な小娘だ。夢の中でしたように、逃げるしかない。
「これまで八方塞がりだった問題を、こんな一瞬で解決してしまうとは……ティア殿は何者だ?」
アリス王女が問う。
──私が何者か?
そんなの、わかりきっていることだろう。
「ただの錬金術師だよ」
0
お気に入りに追加
1,911
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる