224 / 233
第3章
企み
しおりを挟む「なんで、どうしてだ!?」
ボクは叫ぶ。
もう少しで計画は成功するところだった。
どんなに足掻いたところで、あの女は何かを犠牲にしなければならない。プライドの高い女の鼻っ柱をへし折るチャンスだったのに……!
「神、かみ……かみぃぃぃ!!!」
またしても、お前らはボクのことを邪魔するのか!
お前らもあの女に味方をするのか!
「どこまでボクの邪魔をすれば気が済むんだ! どこまで、ボクを馬鹿にすれば気が済むんだ!」
お前らさえいなければ!
あの女さえいなければ!
ボクは、この世界の主になれていたのに……!
──無様だな。
「っ、だれだ!」
何もかもが『存在しない』空間に、聞こえるはずのない声が聞こえた。
──そう驚くな、小僧。
侵入者だ。
ボクが作った、ボクだけが存在できる空間に入り込んだ侵入者だ。
それが出来るのは、ボクと同じか、それ以上の存在だけ。
つまり────
「お前、さっきの神だな!? お前が邪魔したせいで、ボクの計画は台無しだ!」
空気が揺れる。
それは、声の主が笑っているように感じられた。
──貴様の目論見を、我らが見過ごすと思うか?
内心、舌打ちをする。
ボクの計画は、もうすでにお見通しってわけか。
だからって焦ることはない。
なぜなら、あいつらは手を出せないはずだから。
むしろ、ボクの計画を邪魔した神の方が追い込まれているはずだ。
「ハッ! 狡猾なお前ららしい。だが、神が下界の人間に干渉するのは禁じられているはずだ! こんなことをして、タダで済むと思っているのかい!」
──それはこっちの台詞だ。
ブワッ、と全身の毛が逆立つような感覚。
首を締め付けられているように、上手く息が出来ない。手が震える。ボクが恐怖? そんなもの感じるはずがない。…………でも、これは一体。
──よくもやってくれたなぁ、貴様。
──面倒だからと放置していたが、もう好き勝手にはさせぬ。
「お、脅しのつもりかい? ボクを許さないと言っているけれど、そっちはもう何も手出しは出来ないはずだ。ボクの計画を邪魔するなんて、無理だろう?」
さっきも言ったように、神は下界の者との関わりを禁止されている。
今回はその制約に違反していると言っていい。
あの女を助けるために、あの神は馬鹿なことをしたんだ。
もう二度と下界に降りるどころか、近いうちに他との連絡手段を剥奪されるだろう。
あの女にそれだけの価値はないはずだ。
あれのために神であることを放棄するなんて考えられない。
だから、馬鹿な神だとボクは罵る。
──何を勘違いしているのか知らんが、わしにペナルティーは無いぞ。
「……………………は?」
ありえない。
それは、絶対にありえないはずだ。
あの頭の固い連中が、あの女を助けるためだけに例外を許すだって?
──貴様を止めるためだ。
──そのために彼女をこの世界に送り込んだ。
──もう二度と、貴様の好き勝手にさせないために。
「は、ははっ……あの女に、ボクの計画を止めるだけの力があるとでも?」
確かに、あの女は強い。
今までボクの邪魔をしてきた連中とは比べものにならないほどに、強い力を宿している。
でも、それによってボクの計画が無駄になるかと言われたら……話は別だ。
一度会ってみて、確信した。
あの女に、ボクを止める力はない。
今回は、以前に邪魔された腹いせにちょっかいを掛けたけれど、本当は無視しても構わない小さな存在だった。殺そうと思えば簡単に殺せる。……ただ、それをするのが面倒だっただけだ。
──そうだな、今のあやつにはちと厳しいかもしれぬ。
「『今の』、ねぇ……その言い方だと、いつかはボクを止められると言いたげだね?」
──その認識で間違いないだろうな。
さも当然のように肯定されて、ボクは少しムッと表情を顰める。
──そう怒るな、小僧。
──貴様が何をしたところで無駄だ。
──いつか必ず、我らの希望が目を覚ます。
「希望? 何を言っているんだ?」
──我らは希望を欲している。
──それが自覚を得た時が、貴様の最後となるだろう。
「ふざけるな! ボクが負けるはずがない。次こそはお前らをその高みから引き摺り落としてやる! 必ずだ!」
──では、その時を楽しみにしていよう。
ああ、そうしてくれ。
どうかその余裕のまま、後悔して堕ちろ。
あの時のように。
──さらばだ。
その言葉を最後に、見えない気配は霧散した。
同じくボクを縛っていた空気も嘘のように消え去る。
「あの女がボクの邪魔になる?」
それこそ、あり得ない。
…………あの言葉は、ボクを混乱させる嘘に決まっている。
「そうだ。ボクの計画はまだ終わっちゃいない」
誰にも邪魔されない。
もう誰にも邪魔させない。
あの頭の固いジジイ共にも、あの女にだって……絶対に。
0
お気に入りに追加
1,620
あなたにおすすめの小説
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!
実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。
冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、
なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。
「なーんーでーっ!」
落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。
ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。
ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。
ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。
セルフレイティングは念のため。
異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜
トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦
ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが
突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして
子供の身代わりに車にはねられてしまう
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
魔王城の面子、僕以外全員ステータスがカンストしている件について
ともQ
ファンタジー
昨今、広がる異世界ブーム。
マジでどっかに異世界あるんじゃないの? なんて、とある冒険家が異世界を探し始めたことがきっかけであった。
そして、本当に見つかる異世界への経路、世界は大いに盛り上がった。
異世界との交流は特に揉めることもなく平和的、トントン拍子に話は進み、世界政府は異世界間と一つの条約を結ぶ。
せっかくだし、若い世代を心身ともに鍛えちゃおっか。
"異世界履修"という制度を発足したのである。
社会にでる前の前哨戦、俺もまた異世界での履修を受けるため政府が管理する転移ポートへと赴いていた。
ギャル受付嬢の凡ミスにより、勇者の村に転移するはずが魔王城というラストダンジョンから始まる異世界生活、履修制度のルール上戻ってやり直しは不可という最凶最悪のスタート!
出会った魔王様は双子で美少女というテンション爆上げの事態、今さら勇者の村とかなにそれ状態となり脳内から吹き飛ぶ。
だが、魔王城に住む面子は魔王以外も規格外――そう、僕以外全てが最強なのであった。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
インフィニティ•ゼノ•リバース
タカユキ
ファンタジー
女神様に異世界転移された俺とクラスメイトは、魔王討伐の使命を背負った。
しかし、それを素直に応じるクラスメイト達ではなかった。
それぞれ独自に日常謳歌したりしていた。
最初は真面目に修行していたが、敵の恐ろしい能力を知り、魔王討伐は保留にした。
そして日常を楽しんでいたが…魔族に襲われ、日常に変化が起きた。
そしてある日、2つの自分だけのオリジナルスキルがある事を知る。
その一つは無限の力、もう一つが人形を作り、それを魔族に変える力だった。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる