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第2章
考察します
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ヴィエラさんと私が調べてきた『エルフの秘術』が、アカネさんが調査した結界であり、魔女もそれに関与している。
今まで調べたものが見事に繋がりました。
それは都合の良い考えなのでしょうか。
……でも、たとえ都合の良い考えだと理解していても、やはり納得してしまう。
私は腕を組み、ソファに深く沈みます。
「…………あり得ますね」
「意外と驚かないのじゃな」
「ええ、納得し得る情報だったので」
私とヴィエラさんが探し続けている『エルフの秘術』と、私がエルフ達に目をつけられる原因となった『魔女』。
私はもともと、その二つには何らかの関係があるのではないか? と睨んでいました。
「エルフの秘術が件の結界であり、魔女がそれを作り出している。……ヴィオラさんはどう思われました?」
「私もそれで間違い無いと思っている。出来過ぎた情報だと思っているけれど、何度考え直しても、やっぱりそれしか考えられない」
「でも、それだと不思議なのです。どうして魔女は、あのエルフ族を守ろうとしているのでしょうか?」
森全体を包み込む大規模な結界。あれは並大抵の魔力で作り出せるようなものではありません。私が保有する魔力全てを使い果たしてでも、あれほどの結界は作れないでしょう。エルフの力を結集させたとしても、やはり難しいです。
『結界』を作り出す魔法に特化しているのであれば、もしかしたら出来るのかもしれません。
私は回復魔法がカンストしています。誰かが結界魔法をカンストさせていて、私と同じくらいのチート能力を持っていると考えたら、可能でしょう。
それが『魔女』なのか、それとも他にも協力者が居るのか。
それは不明ですが、どちらかであると私は考えます。
つまり、エルフ達の裏に潜んでいるのは、私とほぼ同格の実力を持つ『誰か』となります。そんな人がどうしてエルフなんかに手を貸し、何百年も守っていたのでしょう。
──何か、互いに利益があった?
エルフ側はわかります。あの結界のおかげで全ての危険から逃れることが出来ているのですから、エルフにとってあの結界は命よりも大切なものとなります。
でも、協力者側の利益が全くわかりません。
だってあのエルフです。めちゃくちゃ強い訳ではなく、むしろめちゃくちゃ弱いくせに、吠えるのだけは上手な負け犬同然の人達です。彼らを守って何かが得られるとは、まじで思えません。
──だとしたら、エルフはまだ何かを隠している?
ありえます。
彼らは長い年月、エルフが持つ全ての技術を隠してきました。その技術の中に、協力者が望む何かがあったとしたら、可能性はあるでしょう。
チート級の結界を作り出す人が何を望んでいるかはわかりませんが、現状で考えられる理由は、それが一番濃厚でしょう。
「リーフィアの考えは、一理ある」
私が述べた考えを聞き、アカネさんは神妙な面持ちになりました。
「じゃが、気になることがある」
「気になること……教えていただけますか?」
「うむ」
アカネさんは難しく唸り、重々しく口を開きました。
「なぜ、エルフはリーフィアを求める?」
──それは私が魔女に選ばれたからです。
そう答えようとして、私は言葉を止めました。
どうして私は魔女に選ばれたのでしょう?
ダインさん……でしたっけ? 彼は『魔女が選んだ』と言っていましたが、彼女はどうやって私を見つけたのでしょう?
魔女は私と同格くらいだと仮定して話を進めるのであれば、魔女はどこかで私の存在を知った。もしくは私を何かで見つけたということになります。もしかしたらエルフ独自の魔法で見つけ出したという可能性もありますが、何らかの手段を用いて選ばれたのは確実でしょう。
でもなぜ、今になって私を選ぶのでしょう。
「その人の寿命が近づいている、とかですかね?」
「その可能性はあるな。じゃが、幾ら何でも急ではないか? そしてなぜ奴らはリーフィアに拘る?」
「彼らの行動が急なのは、寿命が残り僅かだと気付いて焦ったのでしょう。そして私に拘るのは、」
『魔女は一度決まってしまえば、それを覆すことは出来ない』
それは、あの森でダインさんが口にした言葉です。私の意思とは関係なく、彼らは魔女の決定に従う。それが絶対に正しいのだと盲目的になってまで……。
「リーフィアはあまり結界を作り出すのは得意ではないのじゃろう?」
「ええ、そうですね。本気でやっても、この城くらいの大きさが限界でしょう」
「それでも十分規格外だと思うが、森を覆い隠すとなれば不十分じゃな」
「その通りです。私では魔女の代わりになれません。なのに。エルフはそんなの御構い無しに私を求めるのです。…………そして、迎えられないのであれば、殺すことも厭わない様子でした。実際、エルフの誘いを断った私に、管理者は刃を向けました」
「殺すじゃと? どうしてそうなるのじゃ?」
「……わかりません。理由も何も言わずに、彼はこう言ったのです」
──我らの意思に背く魔女は、必要ない。
──ここで死んでもらう。
「意思に背く魔女は必要ない。死んでもらう。…………なんとも、野蛮な連中じゃな」
「そうですね。魔女は一度決まると絶対に変えられなくて、死ぬまで代替わりは許され…………死ぬまで、許されない?」
「リーフィア? おいリーフィア、どうしたのじゃ?」
ダインさんは言いました。
魔女が私を『次の魔女』に選んだと。そして一度決まってしまえば、魔女は何があっても代われない。出来るとすれば新たな魔女を殺し、また魔女を探すのみ。
「──なぜ彼らは、それを知っているのでしょう?」
「なぜ、とは?」
「ダインさんが話したことは、どれも魔女が死ななければわからないことです。なのにどうして……彼らは魔女が死ななければ代替わりできないと知っていたのでしょう?」
そこで私は気づきました。
気づくと同時に、納得もしてしまいました。
エルフは長年、魔女と協力を結んできた。
しかし、長寿であるエルフでさえも、何千年と生きるのは不可能です。
それなのに魔女の力は今も引き継がれている。
様々な考えから導き出された答えは、一つ。
「魔女はすでに何度か、代替わりしている……?」
今まで調べたものが見事に繋がりました。
それは都合の良い考えなのでしょうか。
……でも、たとえ都合の良い考えだと理解していても、やはり納得してしまう。
私は腕を組み、ソファに深く沈みます。
「…………あり得ますね」
「意外と驚かないのじゃな」
「ええ、納得し得る情報だったので」
私とヴィエラさんが探し続けている『エルフの秘術』と、私がエルフ達に目をつけられる原因となった『魔女』。
私はもともと、その二つには何らかの関係があるのではないか? と睨んでいました。
「エルフの秘術が件の結界であり、魔女がそれを作り出している。……ヴィオラさんはどう思われました?」
「私もそれで間違い無いと思っている。出来過ぎた情報だと思っているけれど、何度考え直しても、やっぱりそれしか考えられない」
「でも、それだと不思議なのです。どうして魔女は、あのエルフ族を守ろうとしているのでしょうか?」
森全体を包み込む大規模な結界。あれは並大抵の魔力で作り出せるようなものではありません。私が保有する魔力全てを使い果たしてでも、あれほどの結界は作れないでしょう。エルフの力を結集させたとしても、やはり難しいです。
『結界』を作り出す魔法に特化しているのであれば、もしかしたら出来るのかもしれません。
私は回復魔法がカンストしています。誰かが結界魔法をカンストさせていて、私と同じくらいのチート能力を持っていると考えたら、可能でしょう。
それが『魔女』なのか、それとも他にも協力者が居るのか。
それは不明ですが、どちらかであると私は考えます。
つまり、エルフ達の裏に潜んでいるのは、私とほぼ同格の実力を持つ『誰か』となります。そんな人がどうしてエルフなんかに手を貸し、何百年も守っていたのでしょう。
──何か、互いに利益があった?
エルフ側はわかります。あの結界のおかげで全ての危険から逃れることが出来ているのですから、エルフにとってあの結界は命よりも大切なものとなります。
でも、協力者側の利益が全くわかりません。
だってあのエルフです。めちゃくちゃ強い訳ではなく、むしろめちゃくちゃ弱いくせに、吠えるのだけは上手な負け犬同然の人達です。彼らを守って何かが得られるとは、まじで思えません。
──だとしたら、エルフはまだ何かを隠している?
ありえます。
彼らは長い年月、エルフが持つ全ての技術を隠してきました。その技術の中に、協力者が望む何かがあったとしたら、可能性はあるでしょう。
チート級の結界を作り出す人が何を望んでいるかはわかりませんが、現状で考えられる理由は、それが一番濃厚でしょう。
「リーフィアの考えは、一理ある」
私が述べた考えを聞き、アカネさんは神妙な面持ちになりました。
「じゃが、気になることがある」
「気になること……教えていただけますか?」
「うむ」
アカネさんは難しく唸り、重々しく口を開きました。
「なぜ、エルフはリーフィアを求める?」
──それは私が魔女に選ばれたからです。
そう答えようとして、私は言葉を止めました。
どうして私は魔女に選ばれたのでしょう?
ダインさん……でしたっけ? 彼は『魔女が選んだ』と言っていましたが、彼女はどうやって私を見つけたのでしょう?
魔女は私と同格くらいだと仮定して話を進めるのであれば、魔女はどこかで私の存在を知った。もしくは私を何かで見つけたということになります。もしかしたらエルフ独自の魔法で見つけ出したという可能性もありますが、何らかの手段を用いて選ばれたのは確実でしょう。
でもなぜ、今になって私を選ぶのでしょう。
「その人の寿命が近づいている、とかですかね?」
「その可能性はあるな。じゃが、幾ら何でも急ではないか? そしてなぜ奴らはリーフィアに拘る?」
「彼らの行動が急なのは、寿命が残り僅かだと気付いて焦ったのでしょう。そして私に拘るのは、」
『魔女は一度決まってしまえば、それを覆すことは出来ない』
それは、あの森でダインさんが口にした言葉です。私の意思とは関係なく、彼らは魔女の決定に従う。それが絶対に正しいのだと盲目的になってまで……。
「リーフィアはあまり結界を作り出すのは得意ではないのじゃろう?」
「ええ、そうですね。本気でやっても、この城くらいの大きさが限界でしょう」
「それでも十分規格外だと思うが、森を覆い隠すとなれば不十分じゃな」
「その通りです。私では魔女の代わりになれません。なのに。エルフはそんなの御構い無しに私を求めるのです。…………そして、迎えられないのであれば、殺すことも厭わない様子でした。実際、エルフの誘いを断った私に、管理者は刃を向けました」
「殺すじゃと? どうしてそうなるのじゃ?」
「……わかりません。理由も何も言わずに、彼はこう言ったのです」
──我らの意思に背く魔女は、必要ない。
──ここで死んでもらう。
「意思に背く魔女は必要ない。死んでもらう。…………なんとも、野蛮な連中じゃな」
「そうですね。魔女は一度決まると絶対に変えられなくて、死ぬまで代替わりは許され…………死ぬまで、許されない?」
「リーフィア? おいリーフィア、どうしたのじゃ?」
ダインさんは言いました。
魔女が私を『次の魔女』に選んだと。そして一度決まってしまえば、魔女は何があっても代われない。出来るとすれば新たな魔女を殺し、また魔女を探すのみ。
「──なぜ彼らは、それを知っているのでしょう?」
「なぜ、とは?」
「ダインさんが話したことは、どれも魔女が死ななければわからないことです。なのにどうして……彼らは魔女が死ななければ代替わりできないと知っていたのでしょう?」
そこで私は気づきました。
気づくと同時に、納得もしてしまいました。
エルフは長年、魔女と協力を結んできた。
しかし、長寿であるエルフでさえも、何千年と生きるのは不可能です。
それなのに魔女の力は今も引き継がれている。
様々な考えから導き出された答えは、一つ。
「魔女はすでに何度か、代替わりしている……?」
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