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第2章

変質者です……?

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「──ん?」

 それは魔王城へ帰っている途中のことでした。
 私は不意に何かを感じ取り、立ち止まります。

『どうしたの?』

「…………いえ、何でもありません」

 誰かに見られているような気がしたのですが、今は何も感じません。
 私はエルフですし、精霊のウンディーネも居ます。目立つ要素は十分なので、誰かが見ていただけだと思われます。

 ……きっと気のせいでしょう。

「──っ」

 そう思ってまた歩き出した時のことです。

「…………やはり、見られていますね」

 場所は斜め右後ろ。
 裏路地に続く建物の角から視線を感じます。

 ……そしてその視線は消え、少ししたら再び視線が注がれます。

 これはウンディーネに、ではありませんね。
 私に注がれた視線です。

「はぁ~~~~ぁ……ウンディーネ予定変更です。もう少し歩きますよ」

『えっ……う、うん……』

 長い溜め息の後、ウンディーネの手を取り、行く道を変更します。
 右へ左へ。細い道を進んでいくうちに、広場から大きく外れた裏道に入っていました。

「…………もしかしたら、と思っていたのですが……上手い具合に進みませんねぇ」

 私は立ち止まり、再び溜め息を吐きました。
 視線は、まだ感じたままです。

「出てきてください。見えているのですよ」

 それを合図に、曲がり角の奥から大勢の人が現れました。
 全員がフード付きのマントを羽織っていて、顔がよく見えません。
 ……そのマントに認識妨害の魔法でも掛かっているのか、魔力をあまり感じません。

 ですが、人間ではないでしょう。
 それは雰囲気で何となくわかります。

『り、リーフィア……この人達は……?』

「誰でしょうね?」

『リーフィアも知らないの?』

「知っていたらもう少し明るい場所で歓迎していましたよ」

 いや、知り合いだろうと歓迎するのは面倒ですね。やっぱり無視して魔王城に帰っていたでしょう。
 というか今も眠いので帰って良いですかね?

「ウンディーネ。やっぱり帰りましょう」

『え、でも……何か用があるみたいだよ?』

「だるいです」

『……あ、うん……』

「ですが…………あちらは返してくれそうにありませんね」

 私達が呑気に話している間に、謎の人達に囲まれていました。

 ……ふぅむ。

「意外と統率が取れていますね」

『うん……この人達は、もしかして…………』

「ストーカーのくせに」

 ──ガクッ。

 私を囲っている人達。ウンディーネ。
 そこにいる全ての人達が一斉にコケました。

 …………あれ?
 私何か変なこと言いました?

『リーフィア……うちの目には、変質者に見えるけど……?』

「ええ、変質者ですよね…………え? つまりストーカーではないのですか?」

『それは……そうだけど…………なんか違う気がする』

「そうですか? まぁ……どうでも良いです」

 そう、どうでも良いです。
 私が知りたいことは、この人達がストーカーかどうかではありません。

 私が知りたいことはただ一つ。

「どうして私を見ていたのですか?」

 …………ふむ、返事はありません。
 何も言うつもりはないようですね。
 だったら、こちらから言いたいことを言ってやりましょう。

「どうして私なのですか?」

「『…………?』」

 変質者達は首を傾げます。
 どうやら、事の重大さをわかっていない様子です。

「私よりもウンディーネの方が可愛いでしょう。見るなら絶対にこっちでしょう……!」

 ──ガクッと、再び変質者達とウンディーネがコケました。

『リーフィア!?』

 …………あれ? また変なことを言ってしまいましたか?

「だって見るのならウンディーネでしょう? 可愛いのは絶対にこっちでしょう? あなた達の目は腐っているのですか? 攫うならまず彼女を狙うでしょう普通。それともウンディーネは可愛くないと? ぶっ殺しますよ?」

『そろそろストーカーの概念から離れよう!? ……後、物騒なのはダメだよ……!』

「あ、はい……すいません」

 ……コホンッ。まぁ、良いです。
 これ以上この人達と関わっても意味はありません。

 私はウンディーネの体を抱き寄せ、魔力をその身に纏います。

「──っ、抑えろ!」

 変質者の一人が手を伸ばしますが──遅いです。

「──ダウンバースト」

 変質者の全てが、私に頭を垂れるように地に伏せました。

「もう少し強くしましょうか」

 私は魔力をより強く流しました。
 風はより一層勢いを増し、それは圧力となって変質者達を襲います。ミリアさんやウンディーネくらいでなければ抗えない風の拘束。それをそこら辺のストーカーが受けて無事なわけがありません。

 彼らはすぐに動かなくなりました。
 …………あ、殺してはいませんよ? 気絶しただけです。

「さて、ストーカーも気絶したことですし、行きましょうか」

 意識を取り戻して、また別の女の子をストーカーし始めたら困ります。
 念のために縄できつく縛って、私はその場を後にしました。警備隊に持っていく? そんな面倒なことはしませんよ。これを見かけた人が勝手に持って行くでしょう。

「結局、今のストーカーは何だったのでしょうかね?」

『……ストーカーなのは、もう変わらないんだね……』

「え? ストーカーじゃなかったのですか!?」

『…………もう、ストーカーで良いと思う……』

 ウンディーネから呆れたような視線を感じました。
 ……なんか、今日は色々な視線を向けられますね。

「…………?」

 私は意味がわからず、首を傾げるのでした。
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