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第2章
遊びにも本気です
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「さぁ、何をして遊ぶ!」
ミリアさんに手を引かれ、やって来たのは魔王城の庭園でした。
そこは大人数で駆け回っても十分なくらい、とても広い場所です。隅の方には長椅子が設置されており(私が設置させました)、天気の良い日にあそこで日向ぼっこをすると、とても気持ちよく眠ることが出来ます。
「…………」
今日は晴天。
その天気の良い日でもあります。
……ああ、睡眠の誘惑が私を……。
「おい待て」
長椅子に誘われる私の腕を、ミリアさんがガシッと掴みます。
「遊ぶと言っているのに、何を早速寝ようとしておるのだ?」
「日光と長椅子の誘惑に負けるところでした……」
「お前、強いくせして本当にそれだけは弱いよな」
「まぁ……性分なので」
眠りたいと思ったら眠る。
それが私の掲げている志であり、絶対不変のルールです。
……と格好つけてみますが、ただ単純に眠いだけですね。
『ダメだよリーフィア……! 遊ぶって約束したんだから、約束は守らないと、だよ』
ウンディーネが珍しく張り切っています。そのやる気を、主人である私が無下にするわけにはいきません。……張り切っているウンディーネを見るのも、十分に癒されますし。
「……お前、本当にウンディーネにだけは甘いよな」
「そうでしょうか? ……そうかもしれませんね」
なんたってウンディーネは、この世界に来て初めて出会った私の友人なのです。甘やかすのは当然でしょう。
「余を甘やかしてくれても良いのだぞ?」
……上目遣いで何を言っているのですかね、この魔王は。
「あなたは十分甘やかされているでしょう。これ以上求めると、馬鹿になりますよ? ……っと、手遅れか」
「おい最後! 聞こえてるのだぞ!?」
「…………さぁ? 何を言っているのか、さっぱり」
「そこでとぼけるか!?」
「まぁ、細かいことは気にしない気にしない。それより、遊ぶなら早く遊びましょう? 時間は有限。このままお話も良いですが、それでは納得しないでしょう?」
今は昼時。
日が暮れても遊ぶとヴィエラさんが注意してきそうですし、夕飯もあります。
そこがタイムリミットでしょう。
私としてはそっちの方が疲れないので嬉しいのですが、ミリアさんとウンディーネは足りないと言いそうです。
そうなれば明日も同じようなことを言われてしまいそうなので、このお子様方(精神のみ)を満足させなければなりません。
「今日はボール遊びをするぞ!」
「…………(ふっ)」
「なんか、今無性に馬鹿にされた気がする」
「いえ、ミリアさんらしいと思いますよ?」
やはり、子供はボール遊びですよね。
うん。良いと思いますよ。ボール遊び。
「でも、ボール遊びと言っても種類はあります。何をするのです?」
「この前ディアスに教えてもらった……『さっかー』だ!」
「ああ、サッカーですか」
『……? さっかーって、なぁに?』
ウンディーネはサッカーについて何も知らないようです。
わかっていたことですが、やはりこの世界と元の世界では、文化がちょっとだけ異なるようです。
ミリアさんもディアスさんに教えてもらったと言っていますし、地球で流行っていた遊びは基本的に存在しないと思って良さそうです。
……あれ? これで金稼ぎできるんじゃね?
と思ったそこのあなた。面倒なのでその役は任せます。
そんなのを流行らせて儲けるよりも、私にとっては睡眠の方が大切ですからね。
それに生活はこの魔王城で十分なので、これ以上稼ぐ必要もありませんし、意外と充実した生活なんですよねぇ、これ。
うるさいのが玉に瑕ですけれど。
「まずはウンディーネにサッカーのルールを教えましょうか」
と言っても私だってガチ勢ではありません。
ボールを相手のゴールに入れる。
手はゴールキーパー以外使えない。
悪質な接触は禁止。
オフサイドという言葉がありますが、それは説明が面倒です。別に教えなくても良いでしょう。
それに今日は三人です。基本的なルールさえ守っていれば、後は適当で問題はありません。
「……と、このような遊びです。理解は出来ましたか?」
『うん……このボールを、蹴ればいいんだね?』
「はい。蹴ってゴールに入れる。そんな簡単な遊びです」
昔、子供の頃の話ですが、休憩の時間に友達と遊んでいました。
ルールだけを聞けばとても簡単な遊びですが、これが熱中すると奥が深い遊びでもあります。……まぁ、私は何かに熱中するということが子供の頃から皆無だったので、遊ぶとしても自分からはやりませんでした。
「チーム分けは、私。それとミリアさんとウンディーネの二人で良いでしょう」
「……ふむ、良いのか? それではリーフィアが不利では無いのか?」
「──ハンッ! こちとら数十年前からサッカー知っているのですよ。最近覚えた程度のお子様には負けません」
私は挑発するようにそう言い、ちょいちょいと手を曲げてみせます。
それがミリアさんのプライドに触れたのでしょう。
こめかみをピクピクと動かし、ふっふっふっと不気味に笑います。
……気のせいでしょうか。
彼女の背後には、黒い靄がかかっているように見えます。
まぁ、だからどうしたって話ですが。
「ウンディーネ……やるぞ」
『えっと……うんっ! 頑張ろうね、ミリアちゃん!』
お二人はやる気十分のようですね。
「どうせ遊ぶのです──本気でやって差し上げます」
こう見えて私は、かなりの負けず嫌いです。
人数差がある。
相手は魔王と上位精霊。
そんなの関係ありません。
やるのなら、本気でやる。
そしてその後、思うままに寝る。
「では、始めましょう」
何処からともなく、試合開始のホイッスルが鳴ったような気がしました。
ミリアさんに手を引かれ、やって来たのは魔王城の庭園でした。
そこは大人数で駆け回っても十分なくらい、とても広い場所です。隅の方には長椅子が設置されており(私が設置させました)、天気の良い日にあそこで日向ぼっこをすると、とても気持ちよく眠ることが出来ます。
「…………」
今日は晴天。
その天気の良い日でもあります。
……ああ、睡眠の誘惑が私を……。
「おい待て」
長椅子に誘われる私の腕を、ミリアさんがガシッと掴みます。
「遊ぶと言っているのに、何を早速寝ようとしておるのだ?」
「日光と長椅子の誘惑に負けるところでした……」
「お前、強いくせして本当にそれだけは弱いよな」
「まぁ……性分なので」
眠りたいと思ったら眠る。
それが私の掲げている志であり、絶対不変のルールです。
……と格好つけてみますが、ただ単純に眠いだけですね。
『ダメだよリーフィア……! 遊ぶって約束したんだから、約束は守らないと、だよ』
ウンディーネが珍しく張り切っています。そのやる気を、主人である私が無下にするわけにはいきません。……張り切っているウンディーネを見るのも、十分に癒されますし。
「……お前、本当にウンディーネにだけは甘いよな」
「そうでしょうか? ……そうかもしれませんね」
なんたってウンディーネは、この世界に来て初めて出会った私の友人なのです。甘やかすのは当然でしょう。
「余を甘やかしてくれても良いのだぞ?」
……上目遣いで何を言っているのですかね、この魔王は。
「あなたは十分甘やかされているでしょう。これ以上求めると、馬鹿になりますよ? ……っと、手遅れか」
「おい最後! 聞こえてるのだぞ!?」
「…………さぁ? 何を言っているのか、さっぱり」
「そこでとぼけるか!?」
「まぁ、細かいことは気にしない気にしない。それより、遊ぶなら早く遊びましょう? 時間は有限。このままお話も良いですが、それでは納得しないでしょう?」
今は昼時。
日が暮れても遊ぶとヴィエラさんが注意してきそうですし、夕飯もあります。
そこがタイムリミットでしょう。
私としてはそっちの方が疲れないので嬉しいのですが、ミリアさんとウンディーネは足りないと言いそうです。
そうなれば明日も同じようなことを言われてしまいそうなので、このお子様方(精神のみ)を満足させなければなりません。
「今日はボール遊びをするぞ!」
「…………(ふっ)」
「なんか、今無性に馬鹿にされた気がする」
「いえ、ミリアさんらしいと思いますよ?」
やはり、子供はボール遊びですよね。
うん。良いと思いますよ。ボール遊び。
「でも、ボール遊びと言っても種類はあります。何をするのです?」
「この前ディアスに教えてもらった……『さっかー』だ!」
「ああ、サッカーですか」
『……? さっかーって、なぁに?』
ウンディーネはサッカーについて何も知らないようです。
わかっていたことですが、やはりこの世界と元の世界では、文化がちょっとだけ異なるようです。
ミリアさんもディアスさんに教えてもらったと言っていますし、地球で流行っていた遊びは基本的に存在しないと思って良さそうです。
……あれ? これで金稼ぎできるんじゃね?
と思ったそこのあなた。面倒なのでその役は任せます。
そんなのを流行らせて儲けるよりも、私にとっては睡眠の方が大切ですからね。
それに生活はこの魔王城で十分なので、これ以上稼ぐ必要もありませんし、意外と充実した生活なんですよねぇ、これ。
うるさいのが玉に瑕ですけれど。
「まずはウンディーネにサッカーのルールを教えましょうか」
と言っても私だってガチ勢ではありません。
ボールを相手のゴールに入れる。
手はゴールキーパー以外使えない。
悪質な接触は禁止。
オフサイドという言葉がありますが、それは説明が面倒です。別に教えなくても良いでしょう。
それに今日は三人です。基本的なルールさえ守っていれば、後は適当で問題はありません。
「……と、このような遊びです。理解は出来ましたか?」
『うん……このボールを、蹴ればいいんだね?』
「はい。蹴ってゴールに入れる。そんな簡単な遊びです」
昔、子供の頃の話ですが、休憩の時間に友達と遊んでいました。
ルールだけを聞けばとても簡単な遊びですが、これが熱中すると奥が深い遊びでもあります。……まぁ、私は何かに熱中するということが子供の頃から皆無だったので、遊ぶとしても自分からはやりませんでした。
「チーム分けは、私。それとミリアさんとウンディーネの二人で良いでしょう」
「……ふむ、良いのか? それではリーフィアが不利では無いのか?」
「──ハンッ! こちとら数十年前からサッカー知っているのですよ。最近覚えた程度のお子様には負けません」
私は挑発するようにそう言い、ちょいちょいと手を曲げてみせます。
それがミリアさんのプライドに触れたのでしょう。
こめかみをピクピクと動かし、ふっふっふっと不気味に笑います。
……気のせいでしょうか。
彼女の背後には、黒い靄がかかっているように見えます。
まぁ、だからどうしたって話ですが。
「ウンディーネ……やるぞ」
『えっと……うんっ! 頑張ろうね、ミリアちゃん!』
お二人はやる気十分のようですね。
「どうせ遊ぶのです──本気でやって差し上げます」
こう見えて私は、かなりの負けず嫌いです。
人数差がある。
相手は魔王と上位精霊。
そんなの関係ありません。
やるのなら、本気でやる。
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