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第21話 改装再び
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男達が阿鼻叫喚しているのを見て満足した後、私は迷宮の改装をするために戻っていた。
入り口は目立つし、そこはギルドの関係者が警備しているので、私とレイン、アリスの三人しか存在を知らない裏口を使って中に入る。迷宮内は階層を自由に行き来出来るので、一気に70層の玉座の間まで転移した。
「おかえりなさいませ、セリア様」
転移先でレインがお出迎えしてくれたけれど……アリスの姿が見えないな。
どこに行っているんだろう?
レインなら知っているかな?
「アリスは?」
「調理場の掃除をしています」
「朝もやっていなかったっけ? まだ終わっていないの?」
今はお昼時だけど、頑固な汚れとでも戦っているのかな。
「朝には終わっていたのですが、その、料理に失敗して……」
「へぇ、アリスが失敗なんて珍しいね」
「いえ、私が料理をしようとしたら、なぜか調理室ごと爆発してしまい──」
「今すぐ片付けに戻れ!」
私が情報を集めている時に、何をやっているんだ私の従者は!
というかレインには料理を禁止していたはずなのに、どうしてこの子は料理をやっているんだ。
それの後始末をさせられているアリスが可哀想だ。
すぐにレインの首根っこを掴み、調理場に転移する。
「あ、お帰りなさいませ、ご主人様!」
そこには煤だらけになったアリスが、涙目でテーブルを拭いていた。
そして私が来たのを素早く察して、サッと佇まいを正す。
「ただいま、アリス。……大丈夫?」
「申し訳ございません、こんな薄汚れた格好で……」
「いや、むしろアリスを巻き込ませちゃったのが申し訳ないよ」
「本当にすまん……まさか爆発するとは思ってなかったんだ」
レインも申し訳ない気持ちはあるのか、深々と頭を下げて謝罪をする。
「そもそもレインは何を作ろうと思っていたの?」
「それは私も思っていました。残骸の中に肉などの加熱が必要なものは見えませんでしたし……」
……ってことは、アリスは他の場所を掃除していて、爆発音が聞こえたから駆けつけて来てみれば、調理場の惨劇が広がっていたのか。
本当に大変だったんだろうな。
「アリスに教えてもらったおにぎりなるものを作ろうと思っていました」
「…………は? なんでおにぎりに爆発要素があるの?」
おにぎりってあれでしょ?
子供とお母さんが仲良く米をにぎにぎして作る。とても平和的な光景が見れるやつでしょ?
「初手から始めるにはおにぎりが良いと聞いたのですが、我はおにぎりというものを知らず、とりあえず我の思ったおにぎりを作ろうとした結果、このようになってしまいました」
アリスを見ると、頭が痛そうに額に手を添えていた。
「基本的に誰でも知っているもので、簡単に作れるものを……と思ったのですが、まさかおにぎりを知らなかったとは……」
「もう料理をするなとは言わないけど、次からは私かアリスが同伴している時にやること。わかった?」
「はいっ! 次からはおにぎりが何なのかを調べてから作ります!」
レインさん、知らない料理を調べるのは当たり前のことなのだよ。
◆◇◆
予想外の事件はあったものの、私は二人を引き連れて迷宮核のところに来ていた。
今回のことで冒険者の実力を知ることができた。
だから、弱い奴らが勝てる程度の階層を作らなければならない。
階層の入れ替えは自由にできるので、まだ何も入っていない階層に雑魚を配置する。それを5層くらい作って、下に入れ替えた。その上にはもう少し強い雑魚を、次の階層にはまた少し強いやつを。そうして色々と変えていったら、百層になってしまった。
間にボスを配置したり、迷宮たちの生活区間を作ったり、予想外に魔力を消費してしまった。所々には私の遊び心がある階層も作ってみた。
……多分、その遊びで余計に消費したかもしれない。
ちょうど良いので、迷宮のおさらいをしよう。
1層から20層までは、弱い冒険者でも何とか踏破できる程度の魔物が。
39層までは、ある程度の実力を持った冒険者が攻略できるレベルで。
40層は、第一ボス部屋だ。ここには風狼族という、風属性魔法を得意とした大狼を配置している。
背に乗って走ってもらうと楽しそうだなぁ、という感想しかないけど、アリスの意見を聞く感じちょうどいい難易度らしい。
私とレインは存在がチートなので、普通というのがわからない。だからアリスの意見にはとても助かっている。
49層までは、私の遊び心が詰まったエリアになっている。
ボス戦で疲れている体には優しいものとなっているので、冒険者からしたら救いだろう。
50層は、第二ボス部屋だ。ここは牛頭のミノタウロスが配置されている。私の身長くらいある斧を振り回していて、見た目通りの脳筋な戦い方だけど、うちにはもっと脳筋馬鹿がいる。「まだまだ甘いな」というのがレインの感想だったけど、お前が異常なんだぞ? と言いたかった。
51層からは、私の支配下にある魔物達が出てくるようになる。
60層は第三ボス、ノーライフキングの登場だ。
多分、本当に強い奴しかここに到達できないと思うので、しばらくノーライフキングは出番がないだろう。
61層には休憩スペースを設けている。
70層までボスラッシュなので、ここでしっかりと休憩してほしい。
どうせ警戒して十分に休まないだろうけど、その時は地獄を見るだけだよ。
……まぁ、今回だけは初回ってことで戻してあげてもいいかな。
ボスラッシュが終われば、また休憩スペースだ。その場所では、死んだら装備の全てを失う代わりに、迷宮の入り口に戻る護符を販売する。次がレインだから絶対に勝てないだろうから、さすがにここは優しくする。それに、ここまで来ることができた褒美……という訳ではないけど、命だけは取らないようにした。
もし、レインを倒せる人がいたなら、次は最終ボス、私の出番だ。
私のいる場所『玉座の間』に入った瞬間に勝負は決まっているので、速攻で殺すけど。
護符はレイン専用だ。私の魔眼を見た人を生かして返す訳がないので、結局待っているのは確実な『死』だ。
そこから上は魔物の生活区だったり、娯楽施設を設置したりしている。もちろん図書館もあって、どの魔物でも自由に行き来出来るようになっている。
最上階の100層は、私とレイン、アリスの三人以外は出入りを禁止している。
三人の部屋と、さっき木っ端微塵になっていた調理場、お風呂場、リビング、キッチン、迷宮核のある部屋と、私達専用の生活空間となっている。
調理場は大勢の客が来た時用に、キッチンは私達の食事をアリスが作る用に、と分けている。今回はレインが調理場を使ってくれて助かった。もし、キッチンを利用していたら、隣にあるリビングにも被害が及んでいただろう。
……とまぁ、これが迷宮の全貌だけど、まだまだ改装するかもしれない。というか、する。
でも今は迷宮の魔力を使い果たしたので、今回はここで終わりだ。
「とりあえず、これで大丈夫かな」
「むしろ十分すぎる気がしますが……」
アリスが困ったようにそう言う。
「やっぱりそう思う? ……ま、準備を怠るよりは良いと思うよ」
当日はどんな人たちが調査に来るのかわからない。
レインの報告にあった王国騎士団というのがどれほどのものか把握していないので、必要以上に準備する方が良いでしょ。
「さて、後はその時を待つだけだね」
従者の二人の顔が真剣なものに切り替わる。
初めての敵を想像して、今から緊張しているのだろう。
その様子に私は小さく笑い、迷宮核の部屋を出る。
「では、我は下の者達の訓練の様子を見てきます」
「私は魔物の皆に、今回の改装のことを伝えてきますね」
二人は迷宮のために今出来ることを考え、部屋を出たところで転移してしまった。
そして私は──
「疲れた。寝よう」
そそくさと自室に戻ったのだった。
入り口は目立つし、そこはギルドの関係者が警備しているので、私とレイン、アリスの三人しか存在を知らない裏口を使って中に入る。迷宮内は階層を自由に行き来出来るので、一気に70層の玉座の間まで転移した。
「おかえりなさいませ、セリア様」
転移先でレインがお出迎えしてくれたけれど……アリスの姿が見えないな。
どこに行っているんだろう?
レインなら知っているかな?
「アリスは?」
「調理場の掃除をしています」
「朝もやっていなかったっけ? まだ終わっていないの?」
今はお昼時だけど、頑固な汚れとでも戦っているのかな。
「朝には終わっていたのですが、その、料理に失敗して……」
「へぇ、アリスが失敗なんて珍しいね」
「いえ、私が料理をしようとしたら、なぜか調理室ごと爆発してしまい──」
「今すぐ片付けに戻れ!」
私が情報を集めている時に、何をやっているんだ私の従者は!
というかレインには料理を禁止していたはずなのに、どうしてこの子は料理をやっているんだ。
それの後始末をさせられているアリスが可哀想だ。
すぐにレインの首根っこを掴み、調理場に転移する。
「あ、お帰りなさいませ、ご主人様!」
そこには煤だらけになったアリスが、涙目でテーブルを拭いていた。
そして私が来たのを素早く察して、サッと佇まいを正す。
「ただいま、アリス。……大丈夫?」
「申し訳ございません、こんな薄汚れた格好で……」
「いや、むしろアリスを巻き込ませちゃったのが申し訳ないよ」
「本当にすまん……まさか爆発するとは思ってなかったんだ」
レインも申し訳ない気持ちはあるのか、深々と頭を下げて謝罪をする。
「そもそもレインは何を作ろうと思っていたの?」
「それは私も思っていました。残骸の中に肉などの加熱が必要なものは見えませんでしたし……」
……ってことは、アリスは他の場所を掃除していて、爆発音が聞こえたから駆けつけて来てみれば、調理場の惨劇が広がっていたのか。
本当に大変だったんだろうな。
「アリスに教えてもらったおにぎりなるものを作ろうと思っていました」
「…………は? なんでおにぎりに爆発要素があるの?」
おにぎりってあれでしょ?
子供とお母さんが仲良く米をにぎにぎして作る。とても平和的な光景が見れるやつでしょ?
「初手から始めるにはおにぎりが良いと聞いたのですが、我はおにぎりというものを知らず、とりあえず我の思ったおにぎりを作ろうとした結果、このようになってしまいました」
アリスを見ると、頭が痛そうに額に手を添えていた。
「基本的に誰でも知っているもので、簡単に作れるものを……と思ったのですが、まさかおにぎりを知らなかったとは……」
「もう料理をするなとは言わないけど、次からは私かアリスが同伴している時にやること。わかった?」
「はいっ! 次からはおにぎりが何なのかを調べてから作ります!」
レインさん、知らない料理を調べるのは当たり前のことなのだよ。
◆◇◆
予想外の事件はあったものの、私は二人を引き連れて迷宮核のところに来ていた。
今回のことで冒険者の実力を知ることができた。
だから、弱い奴らが勝てる程度の階層を作らなければならない。
階層の入れ替えは自由にできるので、まだ何も入っていない階層に雑魚を配置する。それを5層くらい作って、下に入れ替えた。その上にはもう少し強い雑魚を、次の階層にはまた少し強いやつを。そうして色々と変えていったら、百層になってしまった。
間にボスを配置したり、迷宮たちの生活区間を作ったり、予想外に魔力を消費してしまった。所々には私の遊び心がある階層も作ってみた。
……多分、その遊びで余計に消費したかもしれない。
ちょうど良いので、迷宮のおさらいをしよう。
1層から20層までは、弱い冒険者でも何とか踏破できる程度の魔物が。
39層までは、ある程度の実力を持った冒険者が攻略できるレベルで。
40層は、第一ボス部屋だ。ここには風狼族という、風属性魔法を得意とした大狼を配置している。
背に乗って走ってもらうと楽しそうだなぁ、という感想しかないけど、アリスの意見を聞く感じちょうどいい難易度らしい。
私とレインは存在がチートなので、普通というのがわからない。だからアリスの意見にはとても助かっている。
49層までは、私の遊び心が詰まったエリアになっている。
ボス戦で疲れている体には優しいものとなっているので、冒険者からしたら救いだろう。
50層は、第二ボス部屋だ。ここは牛頭のミノタウロスが配置されている。私の身長くらいある斧を振り回していて、見た目通りの脳筋な戦い方だけど、うちにはもっと脳筋馬鹿がいる。「まだまだ甘いな」というのがレインの感想だったけど、お前が異常なんだぞ? と言いたかった。
51層からは、私の支配下にある魔物達が出てくるようになる。
60層は第三ボス、ノーライフキングの登場だ。
多分、本当に強い奴しかここに到達できないと思うので、しばらくノーライフキングは出番がないだろう。
61層には休憩スペースを設けている。
70層までボスラッシュなので、ここでしっかりと休憩してほしい。
どうせ警戒して十分に休まないだろうけど、その時は地獄を見るだけだよ。
……まぁ、今回だけは初回ってことで戻してあげてもいいかな。
ボスラッシュが終われば、また休憩スペースだ。その場所では、死んだら装備の全てを失う代わりに、迷宮の入り口に戻る護符を販売する。次がレインだから絶対に勝てないだろうから、さすがにここは優しくする。それに、ここまで来ることができた褒美……という訳ではないけど、命だけは取らないようにした。
もし、レインを倒せる人がいたなら、次は最終ボス、私の出番だ。
私のいる場所『玉座の間』に入った瞬間に勝負は決まっているので、速攻で殺すけど。
護符はレイン専用だ。私の魔眼を見た人を生かして返す訳がないので、結局待っているのは確実な『死』だ。
そこから上は魔物の生活区だったり、娯楽施設を設置したりしている。もちろん図書館もあって、どの魔物でも自由に行き来出来るようになっている。
最上階の100層は、私とレイン、アリスの三人以外は出入りを禁止している。
三人の部屋と、さっき木っ端微塵になっていた調理場、お風呂場、リビング、キッチン、迷宮核のある部屋と、私達専用の生活空間となっている。
調理場は大勢の客が来た時用に、キッチンは私達の食事をアリスが作る用に、と分けている。今回はレインが調理場を使ってくれて助かった。もし、キッチンを利用していたら、隣にあるリビングにも被害が及んでいただろう。
……とまぁ、これが迷宮の全貌だけど、まだまだ改装するかもしれない。というか、する。
でも今は迷宮の魔力を使い果たしたので、今回はここで終わりだ。
「とりあえず、これで大丈夫かな」
「むしろ十分すぎる気がしますが……」
アリスが困ったようにそう言う。
「やっぱりそう思う? ……ま、準備を怠るよりは良いと思うよ」
当日はどんな人たちが調査に来るのかわからない。
レインの報告にあった王国騎士団というのがどれほどのものか把握していないので、必要以上に準備する方が良いでしょ。
「さて、後はその時を待つだけだね」
従者の二人の顔が真剣なものに切り替わる。
初めての敵を想像して、今から緊張しているのだろう。
その様子に私は小さく笑い、迷宮核の部屋を出る。
「では、我は下の者達の訓練の様子を見てきます」
「私は魔物の皆に、今回の改装のことを伝えてきますね」
二人は迷宮のために今出来ることを考え、部屋を出たところで転移してしまった。
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