Ｆと愉快な仲間たち

２０１４年１２月6日

　Ｋから電話がかかってきた。全員が社会人になって１０年、住む場所もバラバラになってからは、なかなかお互いの時間を合わせるのが難しくなり、年に１回個別に会うくらいの頻度になっていた。全員が揃うのはさらに難しく、オレの覚えている限りではこの１０年で２回しかない。気持ちが離れていったわけではないが、家庭を持った者、仕事が波に乗ってきた者、そういった背負うべきものが増えた事で、自然とそうなってしまっていた。そんな中、Ｋからの電話だ。年末も近くなってきているので、会えるかどうかの電話なのだろう、そう思って電話に出た。

　Ｆが癌になったそうだ。


　一瞬で世界が変わった。空気が重たくなった。体で感じるくらいに重たくなった。それと同時に全身に鳥肌がたった。そして、それが発見されたのが今年の夏頃だと聞かされた。４ヶ月もの間、オレは何も知らなかった。知っていたのは、どうやらＫだけみたいだ。オレはすぐに電話を切ってＦにかけ直した。......出ない。
　しばらくすると、Ｆからメッセージが届いた。

　すまんな、ちょっと病院は電波悪くてな。

　さらに体がズシリとなった。病院？Ｋが言ったことがタチの悪い冗談だと、ほんのちょっとだけ期待していた自分がいて、それを見事に打ち砕かれた。でも、聞かなければいかないことがあった。

　なんでオレに言わんかった？

　理由は簡単だった。心配をかけさせたくなかった。Ｋは島に残っているから、その内知られてしまうと思ったから先に伝えておいたんだろう。
オレはＦに怒った。連絡の頻度は少なくなってはきているが、オレ達は仲間だ。その関係は小さな子供の時から変わらない。仲間には心配させたり迷惑をかけるのは当たり前だからだ。Ｆは、すまんな、そうやった、と返答した。
　癌にも色々ある。具体的にどういう病名なのかと聞いたら、悪性の足底部軟部腫瘍という病名だそうだ。一応医療の仕事に携わっているオレだが、これは聞いたことがなかった。
　しばらく他愛もない話をしたあと、ほかの仲間達にこの事を言っていいか、という事と、二週間後の２１～２３日に会う約束をして、やりとりを終えた。
　後で調べてみたが、軟部腫瘍とは、臓器、骨以外にできる腫瘍のようだ。痛みを伴うことは少なく、それゆえに発見が遅れがちになると書かれていたが、Ｆの場合は足底部に発生したともあって、違和感や痛みがあったから、すぐに見つかったらしい。
　とにかく本人と会ってこの目で確認するまでは、気持ちが落ち着かない。オレは首を長くして２１日を待った。