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番外編
狼うさぎ書籍化しますSS(後)
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家庭科室で謹厳な執事のようなローヴェルト先生の授業を受けながら、俺は窓の外、それなりに遠くにあるプールを睨んでいた。
(そうだ、思い出した。プールとは、水着を着て泳ぐ授業のことだ。ルミが話していた。しかも水着がひどく破廉恥な格好で……。脚は付け根まで露出し、体に貼り付くような生地のものを着ると聞いた)
なんということだろう。そんなルミの姿を衆目に晒すなんて耐えられない。しかも男女共学だぞ。ルミが襲われたらどうする。
プールには準備を終えたのか、学生たちが姿を現しはじめた。かなり遠くだが、俺は目がいいのでしっかり見える。
ルミの話に聞いた水着を着ている女生徒たちもいた。それを見てもなんとも思わないが、同じような格好をルミがしていると思うと胸が焼け焦げそうだ。
やがてルミの姿が目に入る。
(駄目だー!)
思わず立ち上がってしまった。
「ベックラーくん、どうしました?」
「い、いえ、なんでもありません」
「そうですか。では、座りなさい」
「はい……」
ローヴェルト先生の厳しい声と眼差しに、我に返った。近くの席のハロンに呆れた目で見られたが、それどころではない。
椅子に腰を落ち着け、再びこっそりプールに目をやると、ルミがなにかを探すように校舎のほうを見ていた。俺を探しているんだろう。腕も脚もすべて露出して、体のラインがはっきりとわかる水着を着て……。
(ああっ、そんなに体を傾けたら、豊かな胸の谷間が見えてしまう!)
校舎は影になっているからか、結局ルミは俺のことを見つけられなかったらしい。諦めたように背を向けた。
(なんだと……、水着が食い込んで、丸いお尻が少し見えてしまっているではないか。行っては駄目だ! 男は獣なんだ!)
授業中にもかかわらず、いきり立ちそうになる自身をなだめながら、どうしたらいいか必死に考える。しかしいい考えは浮かばずに、ルミの背はどんどん見えなくなっていく。
(ルミ……! ルミ……!!)
「ベックラーさん!」
「はっ!?」
気づくと俺はベッドに横たわっていて、ルミが俺の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫ですか? 魘されていましたよ」
「ゆ、夢か……」
「悪夢でも見たんですか」
「ある意味では眼福……、いやいや、悪夢か」
心臓が早鐘を打ち、汗が滲んでいる。心配そうにしているルミに、気まずく思いながらも簡単に説明をした。
「はじめて見るものがたくさんあった。なぜだろうな、ルミから話を聞いたことがあっても、見たことはないはずなのに、とても真に迫っていた」
「あの……、実は私も似たような夢を見ていました」
「なんだと!?」
「細かいことは覚えてないんですけど、懐かしい高校の頃の夢で、でもベックラーさんが彼氏なんです」
ふふっ、と笑うルミを見て、幸福感が溢れ出す。そして気づいた。
(この焦りは、単にルミの水着姿を心配していただけではないな。俺の知らない過去に嫉妬していたんだ)
でも、ルミは今ここに、俺の腕の中にいる。大丈夫だ。知らない過去は話を聞くしかないし、どうにもならないが、ルミと幸せな未来を築いていくことはできるのだから。
「もしかして精霊さんの力でしょうか?」
「待て。仮に精霊が夢に干渉できるとしても、こんなくだらない夢を見せる意味がわからん」
「そうですよね」
ははは、と二人で笑い合うが、話に聞く精霊のおっちょこちょいぶりからすると、そんなことがあってもおかしくない気がする。
「どうせなら、冬服で学ラン姿のベックラーさんを見たかったです」
「俺は夏服と水着姿のルミを見られて嬉しかったが、心配でどうしようかと思った」
本当に、いろんな意味で心臓に悪い夢だった。その内容を思い返していると、ルミが居心地悪そうに身じろぎした。
「あの……」
「なんだ、ルミ?」
「ベックラーさん、その、硬いものが……」
「これは、仕方ないだろう。特に水着姿は……、あれは破廉恥すぎだ」
「昼間も同じこと言って、いっぱいしたじゃないですか」
そう、今日はルミと海水浴をして、こちらの世界の露出の低い水着だが、それでも水着姿のルミに興奮してしまって、いろいろと迷惑をかけたばかりだ。
「ルミの世界の水着はまた別格だな。制服もよかった。俺の前でだけ着てほしい」
「またそういう……」
「今度作らせよう。絶対に本物が見たい」
そう言って抱き締めると「仕方ないですね」と溜息をつかれた。でもこれが拒絶や、俺を嫌ってのことではないのはわかっている。
もし精霊があの夢を見せたのなら、やはり少しは感謝しなければならないのかもしれない。ずっとラブラブでいるためには、時に刺激が必要だからな!
そうして俺はルミを美味しくいただいたのだった。
ーーーーー
エスさん「僕の導いた二人の物語が書籍化! ルミ・タカギさんに夢でお告げをしようとしたら、間違ってそのつがいに地球の夢を見せてしまいました」
ルミ「またミスですか……」
エスさん「すみません!(土下座) で、でも、内容はお二人が昼間にお話しされたことが元になっていてですね、まるっきり僕のせいというわけでは……」
ルミ「でも夢を見せたのはエスさんなんですよね。まあ、高校生のベックラーさん他みなさんというのもちょっと新鮮でしたけど」
エスさん「それはよかったですー。特にですね、地球のお話なので耳や尻尾などがないところが特徴ですよ!」
ルミ「その点はもふもふ度が低くてマイナスでした」
エスさん「ええー」
ルミ「ともかく、書籍化のお話ですね?」
エスさん「そうなんです! 表紙のイラストが公開されました! ぜひ活動報告を覗いてみてくださいね。お二人のイチャイチャイラストが可愛いですよー。書籍版は大幅加筆修正ありで、新キャラも登場します!」
??「呼んだかい?」
エスさん「ああーっ、まだ出てきちゃ駄目ですぅ!」
ルミ「私とベックラーさんのお話、ぜひ書籍版でもお楽しみください!」
現パロキャスト
ベックラー、ハロン、アレンカ:高校三年生
ルミ、ウルリク:高校一年生
カレンベルグ大将:校長
アーベライン中将:体育教師
マカルーキ先生:英語教師
ローヴェルト:家庭科教師
出版に伴い、番外編やSSを残し、本編は取り下げることになります。ご承知おきくださいませ。
(そうだ、思い出した。プールとは、水着を着て泳ぐ授業のことだ。ルミが話していた。しかも水着がひどく破廉恥な格好で……。脚は付け根まで露出し、体に貼り付くような生地のものを着ると聞いた)
なんということだろう。そんなルミの姿を衆目に晒すなんて耐えられない。しかも男女共学だぞ。ルミが襲われたらどうする。
プールには準備を終えたのか、学生たちが姿を現しはじめた。かなり遠くだが、俺は目がいいのでしっかり見える。
ルミの話に聞いた水着を着ている女生徒たちもいた。それを見てもなんとも思わないが、同じような格好をルミがしていると思うと胸が焼け焦げそうだ。
やがてルミの姿が目に入る。
(駄目だー!)
思わず立ち上がってしまった。
「ベックラーくん、どうしました?」
「い、いえ、なんでもありません」
「そうですか。では、座りなさい」
「はい……」
ローヴェルト先生の厳しい声と眼差しに、我に返った。近くの席のハロンに呆れた目で見られたが、それどころではない。
椅子に腰を落ち着け、再びこっそりプールに目をやると、ルミがなにかを探すように校舎のほうを見ていた。俺を探しているんだろう。腕も脚もすべて露出して、体のラインがはっきりとわかる水着を着て……。
(ああっ、そんなに体を傾けたら、豊かな胸の谷間が見えてしまう!)
校舎は影になっているからか、結局ルミは俺のことを見つけられなかったらしい。諦めたように背を向けた。
(なんだと……、水着が食い込んで、丸いお尻が少し見えてしまっているではないか。行っては駄目だ! 男は獣なんだ!)
授業中にもかかわらず、いきり立ちそうになる自身をなだめながら、どうしたらいいか必死に考える。しかしいい考えは浮かばずに、ルミの背はどんどん見えなくなっていく。
(ルミ……! ルミ……!!)
「ベックラーさん!」
「はっ!?」
気づくと俺はベッドに横たわっていて、ルミが俺の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫ですか? 魘されていましたよ」
「ゆ、夢か……」
「悪夢でも見たんですか」
「ある意味では眼福……、いやいや、悪夢か」
心臓が早鐘を打ち、汗が滲んでいる。心配そうにしているルミに、気まずく思いながらも簡単に説明をした。
「はじめて見るものがたくさんあった。なぜだろうな、ルミから話を聞いたことがあっても、見たことはないはずなのに、とても真に迫っていた」
「あの……、実は私も似たような夢を見ていました」
「なんだと!?」
「細かいことは覚えてないんですけど、懐かしい高校の頃の夢で、でもベックラーさんが彼氏なんです」
ふふっ、と笑うルミを見て、幸福感が溢れ出す。そして気づいた。
(この焦りは、単にルミの水着姿を心配していただけではないな。俺の知らない過去に嫉妬していたんだ)
でも、ルミは今ここに、俺の腕の中にいる。大丈夫だ。知らない過去は話を聞くしかないし、どうにもならないが、ルミと幸せな未来を築いていくことはできるのだから。
「もしかして精霊さんの力でしょうか?」
「待て。仮に精霊が夢に干渉できるとしても、こんなくだらない夢を見せる意味がわからん」
「そうですよね」
ははは、と二人で笑い合うが、話に聞く精霊のおっちょこちょいぶりからすると、そんなことがあってもおかしくない気がする。
「どうせなら、冬服で学ラン姿のベックラーさんを見たかったです」
「俺は夏服と水着姿のルミを見られて嬉しかったが、心配でどうしようかと思った」
本当に、いろんな意味で心臓に悪い夢だった。その内容を思い返していると、ルミが居心地悪そうに身じろぎした。
「あの……」
「なんだ、ルミ?」
「ベックラーさん、その、硬いものが……」
「これは、仕方ないだろう。特に水着姿は……、あれは破廉恥すぎだ」
「昼間も同じこと言って、いっぱいしたじゃないですか」
そう、今日はルミと海水浴をして、こちらの世界の露出の低い水着だが、それでも水着姿のルミに興奮してしまって、いろいろと迷惑をかけたばかりだ。
「ルミの世界の水着はまた別格だな。制服もよかった。俺の前でだけ着てほしい」
「またそういう……」
「今度作らせよう。絶対に本物が見たい」
そう言って抱き締めると「仕方ないですね」と溜息をつかれた。でもこれが拒絶や、俺を嫌ってのことではないのはわかっている。
もし精霊があの夢を見せたのなら、やはり少しは感謝しなければならないのかもしれない。ずっとラブラブでいるためには、時に刺激が必要だからな!
そうして俺はルミを美味しくいただいたのだった。
ーーーーー
エスさん「僕の導いた二人の物語が書籍化! ルミ・タカギさんに夢でお告げをしようとしたら、間違ってそのつがいに地球の夢を見せてしまいました」
ルミ「またミスですか……」
エスさん「すみません!(土下座) で、でも、内容はお二人が昼間にお話しされたことが元になっていてですね、まるっきり僕のせいというわけでは……」
ルミ「でも夢を見せたのはエスさんなんですよね。まあ、高校生のベックラーさん他みなさんというのもちょっと新鮮でしたけど」
エスさん「それはよかったですー。特にですね、地球のお話なので耳や尻尾などがないところが特徴ですよ!」
ルミ「その点はもふもふ度が低くてマイナスでした」
エスさん「ええー」
ルミ「ともかく、書籍化のお話ですね?」
エスさん「そうなんです! 表紙のイラストが公開されました! ぜひ活動報告を覗いてみてくださいね。お二人のイチャイチャイラストが可愛いですよー。書籍版は大幅加筆修正ありで、新キャラも登場します!」
??「呼んだかい?」
エスさん「ああーっ、まだ出てきちゃ駄目ですぅ!」
ルミ「私とベックラーさんのお話、ぜひ書籍版でもお楽しみください!」
現パロキャスト
ベックラー、ハロン、アレンカ:高校三年生
ルミ、ウルリク:高校一年生
カレンベルグ大将:校長
アーベライン中将:体育教師
マカルーキ先生:英語教師
ローヴェルト:家庭科教師
出版に伴い、番外編やSSを残し、本編は取り下げることになります。ご承知おきくださいませ。
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