異世界でうさぎになって、狼獣人に食べられました

番外編

アレンカ番外編１

少し時間が巻き戻って、13話～20話頃に裏で起こっていたお話です。

◇◇◇

　ある日、腐れ縁のクソ狼につがいができたという報告が来た。

　狼のことは軍の士官学校に入学した時から知っている。
　学費を必死で捻出してなんとか学校に通っていた私は、ありがたいことに優秀さを見込まれ、学費免除・生活費支給の待遇で、技術幹部候補生として士官学校に迎えられた。私はその時点で二十二歳だった。これは軍の叩き上げ人材が能力を認められて入学するのと同じくらいの年齢だから、恥じることはなかったけれど、学費を稼ぐために労働に費やした数年の時間が悔やまれはする。

　それに対し、エリート家系の狼は十六歳の成人と同時に入学している。卒業後は奨学金と引き換えに軍に縛られる約束させられており、成績が下がるわけにもいかない私と違い、毛艶の良い坊っちゃんは当たり前の顔をして同じ教室に座っていた。立ち居振る舞いも洗練されていて、狼らしくガタイもいい。
　というか、狼なんて少数種族のエリートに生まれついただけで本当に妬ましい。しかも、それが出来の悪いぼんくらなら溜飲を下げることもできたものを、私より年下のくせに頭が回り、成績も良かった。

　実技に関しては、さすがに最初から諦めていたけれど、学問については絶対に負けるもんかと思ったし、実際に負けなかった。

　次第に、あいつはそれなりに努力家だということ、根は素直でいい奴だということがわかり、少なくとも出会い頭に睨むことはしなくなった。でも、家柄も性格も外見も良くて、能力もある人間とか、普通にムカつくだろう？

　そして、そんな狼が、つがいだと？　天が二物も三物も与えすぎていて、本当にムカつく。それに、忙しい時期になんという面倒なことを起こしてくれたんだ。おまえはきな臭い隣国の調査に行ってたんじゃないのか。おい、まさか隣国の人間じゃないだろうな。

　……と思ったら、なんと相手は「精霊の愛し遣い」らしい。
　それが本当だとすれば、私の最大の懸案だった、私の・・「精霊の愛し遣い」の問題に解決の目処が立つかもしれない。そうだとすれば、狼に対し感謝することもやぶさかではない。

　そんなことを考えながら、現状考えつく限りの手を打って、私は一路、狼たちの泊まる宿に向かった。
　はじめて会った狼野郎のつがいに少し意地悪をしてしまったのはご愛嬌だ。ルミは驚くほど美人で、ますますもげろと思った。

　そして、狼がデレデレになっていたのには正直ちょっと引いた。あいつもそうやって少し馬鹿になればいいと思う。その方が人間らしい。

　検査にかこつけて――まあ、そう仕向けたのは私だが――いちゃいちゃし始めた二人を置いて、一旦家に戻る。簡単な血液サンプルの検査は部下に任せたし、私は私のつがいに話があるのだ。