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土曜日1※
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こんなことって、ある?
目覚めて最初に思ったのがそれだ。
いやいやいや、おかしいでしょう。
なんで後輩くんが私のベッドにいるのでしょうか。
滅多に酔わないくらいにはお酒に強く警戒心も強い私が、久方ぶりに楽しくなっちゃうくらいに飲み、同じく卒のない後輩――遠矢くんも珍しく素を見せるくらいには酔っていて、なんやかんやあって、現在土曜の朝。薄く開いたカーテンから降り注ぐ朝の日光が瞼越しにも眩しい。
目が覚めると遠矢くんの手が私の胸を揉んでいて、腰にはごりごりと硬いものが押し付けられていて、私は混乱を極めて寝たふりをしている最中である。
そしてこの手が遠矢くんのものだと確信しちゃっている理由は、昨夜も同じように触れられたからだ。
あと、時折溢れる囁きがな、この寝起きで掠れた、低くてセクシーな声がな、紛れもなく彼のものだから。こんな声の持ち主が早々いてたまるか。そして耳元で「東海林先輩」とか呼ぶな。
それだけでもゾクゾクするというのに、触り方も徐々にいやらしくなってきていて、そろそろ寝たふりは限界だ。
いや、もう、どうしようね? どうしたらいいんですかね?
「あっ」
考えているうちに限界を超えてしまったようで、堪えきれなかった声が漏れてしまった。
「おはようございます。東海林先輩」
「お、おはよう……、あっ、んんっ」
「少し前から起きてましたよね? あ、昨夜みたいに杏奈先輩って呼んだほうがよかったですか? 杏奈先輩」
「いや、んんっ、それより、なんでっ、あっ、ちょっと待って、んっ」
的確に気持ちのいいところを触られ、翻弄され、最後にはうるさいとばかりに口を唇でふさがれた。
(遠矢くん、キスうまっ! 殺す気か!)
胸の先端をいじられながら息もつかせぬキスを施されれば、あっという間に力が抜けて抵抗できなくなってしまう。
「先輩、キスだけでこんなになっちゃって、可愛い」
(キスだけじゃないでしょうが!)
心のなかで言い返すも、私の身体はもう言うことを聞かなくなっていて、たぶん蕩けた顔を晒していると思う。
「それとも乳首弱いです?」
そう言いながら両方の先端を摘んで、少しだけ引っ張りながらクリクリといじられた。
「あああっ、だめぇっ」
寝起きであまり働いていない理性は、すでにほとんど「どうにでもしてっ」というくらいにグズグズになっていたけれど、ダメ押しのようになにかのスイッチを入れられた気がする。
「あっ、あっ、だめっ、イっちゃう」
「乳首だけでですか? 感度よすぎじゃないですか?」
「そればっかり、やぁ……」
「……先輩が想像以上に可愛くて、どうしよう」
耳元でそんなことを呟かれ、さらに耳を甘噛みされれば、簡単に快感が決壊し、私は軽く達してしまった。でもそれはお腹の奥に燻りを残したままで、到底満足のいくものではない。
「う、うう、なんで……」
理性が脆くも崩れ去って馬鹿になっている私は、胸ばかり触って肝心の、こう、下の方に手を伸ばさないのか、と聞きたかったのだけど、後輩くんは違うように取ったようで、ズレた回答が返ってきた。
「先輩、昨日の夜、触っていいって言ったじゃないですか」
確かに言った。飲み会の二次会で、遠矢くんが「あまりボリュームのない人としか付き合ったことがない」「一度ボリューミーなものに思う存分触れてみたい」というようなことを、まあ、酔った勢いで男の同僚と話していて、それをお手洗いから戻ってきた私がうっかり聞いてしまったのだ。
要するに、巨乳を揉みたい、と。
職場ではお硬い人間として通っている私の前で、男性たちが気まずくなりそうになったところを、遠矢くんはうまくとりなしてくれた。だから帰り際に彼にお礼を言って、それでなんやかや三次会に行くことなく二人で帰ることになって、……今に至る。
なんでだ。
でもなんか楽しかったし、うちで飲み直すことになったからブラ苦しくて外したら、遠矢くん目を丸くして驚いていて、「世の中には小さく見せるブラってものがあってだね」なんて話をしてしまった。
昨夜の私の人格はどこから来たのか。あれが本質だとしたら、ガチガチに固めた「会社向けの私」の鎧が完全に剥がれていたことになる。
ともあれ、遠矢くんは美形すぎて存在自体の現実味が薄いし、「後輩」というカテゴリーの観賞用の生き物だと思っていたから、「あの話は男同士の話を円滑にするために言っていただけで、他意はなかったんですけど」と言いつつ、明らかに酔って「やっぱり触らせてください~」と迫ってきたのも「まあいっか」くらいで受け入れてしまったのだ。
だいたい、その時はあまりいやらしい感じじゃなくて、服の上からふにふに触って無邪気に「たわわだ!」とか言って感動してる感じで……。
そんなこんなで、触れられたところで何事もなく、シャワーを浴びて寝てしまった。
誓って言うが、こんなルーズなことをしたのは生まれてこの方はじめてだ。付き合ってもいない男性を家に上げたのも、酔っ払って一定以上他人を近づけたのも。ベッドにはたぶん勝手に入ってきたけど、私が先に寝ちゃったし、他に寝る場所がないから仕方ないと言えば仕方ない。
目覚めて最初に思ったのがそれだ。
いやいやいや、おかしいでしょう。
なんで後輩くんが私のベッドにいるのでしょうか。
滅多に酔わないくらいにはお酒に強く警戒心も強い私が、久方ぶりに楽しくなっちゃうくらいに飲み、同じく卒のない後輩――遠矢くんも珍しく素を見せるくらいには酔っていて、なんやかんやあって、現在土曜の朝。薄く開いたカーテンから降り注ぐ朝の日光が瞼越しにも眩しい。
目が覚めると遠矢くんの手が私の胸を揉んでいて、腰にはごりごりと硬いものが押し付けられていて、私は混乱を極めて寝たふりをしている最中である。
そしてこの手が遠矢くんのものだと確信しちゃっている理由は、昨夜も同じように触れられたからだ。
あと、時折溢れる囁きがな、この寝起きで掠れた、低くてセクシーな声がな、紛れもなく彼のものだから。こんな声の持ち主が早々いてたまるか。そして耳元で「東海林先輩」とか呼ぶな。
それだけでもゾクゾクするというのに、触り方も徐々にいやらしくなってきていて、そろそろ寝たふりは限界だ。
いや、もう、どうしようね? どうしたらいいんですかね?
「あっ」
考えているうちに限界を超えてしまったようで、堪えきれなかった声が漏れてしまった。
「おはようございます。東海林先輩」
「お、おはよう……、あっ、んんっ」
「少し前から起きてましたよね? あ、昨夜みたいに杏奈先輩って呼んだほうがよかったですか? 杏奈先輩」
「いや、んんっ、それより、なんでっ、あっ、ちょっと待って、んっ」
的確に気持ちのいいところを触られ、翻弄され、最後にはうるさいとばかりに口を唇でふさがれた。
(遠矢くん、キスうまっ! 殺す気か!)
胸の先端をいじられながら息もつかせぬキスを施されれば、あっという間に力が抜けて抵抗できなくなってしまう。
「先輩、キスだけでこんなになっちゃって、可愛い」
(キスだけじゃないでしょうが!)
心のなかで言い返すも、私の身体はもう言うことを聞かなくなっていて、たぶん蕩けた顔を晒していると思う。
「それとも乳首弱いです?」
そう言いながら両方の先端を摘んで、少しだけ引っ張りながらクリクリといじられた。
「あああっ、だめぇっ」
寝起きであまり働いていない理性は、すでにほとんど「どうにでもしてっ」というくらいにグズグズになっていたけれど、ダメ押しのようになにかのスイッチを入れられた気がする。
「あっ、あっ、だめっ、イっちゃう」
「乳首だけでですか? 感度よすぎじゃないですか?」
「そればっかり、やぁ……」
「……先輩が想像以上に可愛くて、どうしよう」
耳元でそんなことを呟かれ、さらに耳を甘噛みされれば、簡単に快感が決壊し、私は軽く達してしまった。でもそれはお腹の奥に燻りを残したままで、到底満足のいくものではない。
「う、うう、なんで……」
理性が脆くも崩れ去って馬鹿になっている私は、胸ばかり触って肝心の、こう、下の方に手を伸ばさないのか、と聞きたかったのだけど、後輩くんは違うように取ったようで、ズレた回答が返ってきた。
「先輩、昨日の夜、触っていいって言ったじゃないですか」
確かに言った。飲み会の二次会で、遠矢くんが「あまりボリュームのない人としか付き合ったことがない」「一度ボリューミーなものに思う存分触れてみたい」というようなことを、まあ、酔った勢いで男の同僚と話していて、それをお手洗いから戻ってきた私がうっかり聞いてしまったのだ。
要するに、巨乳を揉みたい、と。
職場ではお硬い人間として通っている私の前で、男性たちが気まずくなりそうになったところを、遠矢くんはうまくとりなしてくれた。だから帰り際に彼にお礼を言って、それでなんやかや三次会に行くことなく二人で帰ることになって、……今に至る。
なんでだ。
でもなんか楽しかったし、うちで飲み直すことになったからブラ苦しくて外したら、遠矢くん目を丸くして驚いていて、「世の中には小さく見せるブラってものがあってだね」なんて話をしてしまった。
昨夜の私の人格はどこから来たのか。あれが本質だとしたら、ガチガチに固めた「会社向けの私」の鎧が完全に剥がれていたことになる。
ともあれ、遠矢くんは美形すぎて存在自体の現実味が薄いし、「後輩」というカテゴリーの観賞用の生き物だと思っていたから、「あの話は男同士の話を円滑にするために言っていただけで、他意はなかったんですけど」と言いつつ、明らかに酔って「やっぱり触らせてください~」と迫ってきたのも「まあいっか」くらいで受け入れてしまったのだ。
だいたい、その時はあまりいやらしい感じじゃなくて、服の上からふにふに触って無邪気に「たわわだ!」とか言って感動してる感じで……。
そんなこんなで、触れられたところで何事もなく、シャワーを浴びて寝てしまった。
誓って言うが、こんなルーズなことをしたのは生まれてこの方はじめてだ。付き合ってもいない男性を家に上げたのも、酔っ払って一定以上他人を近づけたのも。ベッドにはたぶん勝手に入ってきたけど、私が先に寝ちゃったし、他に寝る場所がないから仕方ないと言えば仕方ない。
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