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5 魔術初体験(後)
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「ルチア、今説明したことはわかりましたか」
「はい、お母さま」
私は先日初潮を迎え、今日はお母さまから性教育を受けている。その内容は前世の知識にあったことばかりだった。より細かいことについてはさすがに口にするのがためらわれるのか、「もう少し大きくなったらこの本を読んでね」と一冊の薄い本を渡された。ぱらぱらと見たところ、どうやって快感を得るかについて詳しく書かれているようだった。
女性の社会進出とかはまだまだ全然なのに、そんなところだけ進んでいるな。さすがR18世界。
そんな性教育の締めが、以上の魔術事情だった。
「さあ、ルチア、魔術をかけさせてね」
お母さまが、術式の書かれた小さな紙を取り出す。
「それを触ってみてもいいですか」
「いいわよ。でも、魔力を通しちゃだめよ。発動しちゃうからね。貴重なものですし」
かなり精緻な魔方陣が、特殊な調合で作られた紙に、これまた特殊なインクで描かれている。
「これをね、ルチアの、その、大切な部分に当てて、魔力を流すの。ちょっと恥ずかしいかもしれないけれど、すぐ終わるから」
難しいのは位置取りで、奥過ぎることはまずないけれど、手前過ぎて失敗することはたまにあるらしい。なので、目視しないわけにはいかない。
この歳で母親にパンツの中を見られ触れられるのは相当に恥ずかしいが、前世の記憶を探ったら、そう変わらない年頃に高熱を出して、解熱剤をお尻に入れられた経験があった。似たようなものだと思おう。
「じゃあ、いくわよ。……はい、終わり」
スカートを戻されながら、拍子抜けして間抜けな顔をしてしまった。
「あら? どうしたの?」
「何も感じなかったから……」
試しにこっそり指で突いてみると、確かにはっきりと壁ができている。
「それはそうよぅ。感覚があったら、気になってしょうがないでしょう」
「いえ、最初だけは、もっと、魔術がかかった! っていう感じがするのかと思ったんです」
期待外れだと残念そうにしていると、お母さまは小首を傾げた。
「うーん、そういうものかしら? まあ、ルチアが十三歳になったら、実技でいろいろ経験できるわよ。楽しみね!」
残念ながら先は長そうだ。
そんなわけで、私はしばらくは貪欲に知識を蓄え、魔術の理論面と魔力以外の研究を進めた。十三歳になってからは、しばらく魔術実験を伴う研究に注力して、成果を出した。
最初にお金になった術式は、この初体験術式のための鍵魔術だった。魔術協会以外が術式を解けてしまってはいけないけれど、秘密裏に解こうとする人たちはいるもので。例えば、誘拐した貴族の子女のお股を守るこの魔術を解こうとする犯罪組織とか。セキュリティ頑張ってもハッカーに破られる的な攻防があるわけです。
犯罪に利用されないよう、セキュリティレベルを高め、一方でいざという時は魔術協会が解くこともできる鍵魔術は、娘を持つ貴族たちからの熱い支持を受けて、研究予算がめっちゃ増えた。
そんなわけで、私は若干十四歳にして魔術塔に研究室を得た。
充実した日々はあっという間に過ぎ、シシリー様の侍女のお仕事と、魔術塔での研究をなんとか両立しているうちに、結婚もしないまま二十一歳になった。
「はい、お母さま」
私は先日初潮を迎え、今日はお母さまから性教育を受けている。その内容は前世の知識にあったことばかりだった。より細かいことについてはさすがに口にするのがためらわれるのか、「もう少し大きくなったらこの本を読んでね」と一冊の薄い本を渡された。ぱらぱらと見たところ、どうやって快感を得るかについて詳しく書かれているようだった。
女性の社会進出とかはまだまだ全然なのに、そんなところだけ進んでいるな。さすがR18世界。
そんな性教育の締めが、以上の魔術事情だった。
「さあ、ルチア、魔術をかけさせてね」
お母さまが、術式の書かれた小さな紙を取り出す。
「それを触ってみてもいいですか」
「いいわよ。でも、魔力を通しちゃだめよ。発動しちゃうからね。貴重なものですし」
かなり精緻な魔方陣が、特殊な調合で作られた紙に、これまた特殊なインクで描かれている。
「これをね、ルチアの、その、大切な部分に当てて、魔力を流すの。ちょっと恥ずかしいかもしれないけれど、すぐ終わるから」
難しいのは位置取りで、奥過ぎることはまずないけれど、手前過ぎて失敗することはたまにあるらしい。なので、目視しないわけにはいかない。
この歳で母親にパンツの中を見られ触れられるのは相当に恥ずかしいが、前世の記憶を探ったら、そう変わらない年頃に高熱を出して、解熱剤をお尻に入れられた経験があった。似たようなものだと思おう。
「じゃあ、いくわよ。……はい、終わり」
スカートを戻されながら、拍子抜けして間抜けな顔をしてしまった。
「あら? どうしたの?」
「何も感じなかったから……」
試しにこっそり指で突いてみると、確かにはっきりと壁ができている。
「それはそうよぅ。感覚があったら、気になってしょうがないでしょう」
「いえ、最初だけは、もっと、魔術がかかった! っていう感じがするのかと思ったんです」
期待外れだと残念そうにしていると、お母さまは小首を傾げた。
「うーん、そういうものかしら? まあ、ルチアが十三歳になったら、実技でいろいろ経験できるわよ。楽しみね!」
残念ながら先は長そうだ。
そんなわけで、私はしばらくは貪欲に知識を蓄え、魔術の理論面と魔力以外の研究を進めた。十三歳になってからは、しばらく魔術実験を伴う研究に注力して、成果を出した。
最初にお金になった術式は、この初体験術式のための鍵魔術だった。魔術協会以外が術式を解けてしまってはいけないけれど、秘密裏に解こうとする人たちはいるもので。例えば、誘拐した貴族の子女のお股を守るこの魔術を解こうとする犯罪組織とか。セキュリティ頑張ってもハッカーに破られる的な攻防があるわけです。
犯罪に利用されないよう、セキュリティレベルを高め、一方でいざという時は魔術協会が解くこともできる鍵魔術は、娘を持つ貴族たちからの熱い支持を受けて、研究予算がめっちゃ増えた。
そんなわけで、私は若干十四歳にして魔術塔に研究室を得た。
充実した日々はあっという間に過ぎ、シシリー様の侍女のお仕事と、魔術塔での研究をなんとか両立しているうちに、結婚もしないまま二十一歳になった。
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