5 / 8
第1章 異世界転移
第5話 ゼニスタリア王国
しおりを挟む
街に向かって進んでいくと、大きな門が見えてきた。
おそらくあれが入り口なのだろう。
そこには複数の人影が見えた。
「ここには何しにきた?」
槍を持った衛兵がこちらに質問をしてくる。
門番をしているのであろう彼らは、明らかにこちらを警戒していた。
見慣れない服にところどころ血が付着している。
それなのに丸腰だ。無理もない。
ここは無難な回答をするのがベストだろう。
「いや~それが街にくる途中に盗賊に襲われましてね~。身ぐるみ剝がされてしまいまして。そこで通りすがりの人に助けてもらい命からがらここまできた次第です。」
どうだ?こんな可哀想なやつ、通してやるしかないだろう?
「……」
あれ。なんかむしろ警戒されてないか…。
「盗賊に会ったといったな?どこで会った?」
俺はすかさず答える。
こういうときは時間をかけないほうがいいのだ。
「チニール大森林です!山籠もりをして体を鍛えていました!」
そこですかさず上着を脱ぐ。
どうだこの腹筋。あのウェンディさんですら「凄い体」と言わせたものだぞ。
傷のことかもしれないけど。
俺は勝ち誇った顔で衛兵たちのほうを見ると、槍を構え周囲を囲まれていた。
「貴様!誰の許可でその森に入った!」
誰の許可だと?
許可がいるのか?
ウェンディさんは何も言ってこなかったじゃないか。
一体どういうことだ。
「チニール大森林は国王ゼニス様の名のもと、この国が管理しているものだ!許可なく入ることは許さん!」
そういうと俺の体を押さえつけ拘束された。
抵抗することも考えたが、衛兵を殴ったなどとなれば大事になりかねない。
既に大事になっている気もするが。
まぁ、いい。偉い人に会ったら誤解を解こう。
女神イシスに助けられこの世界に転移してきたと正直に話そう。
それが一番だ。
俺は馬車に乗せられどこかに連れていかれていた。
どこに向かっているのだろうか。
先ほどから聞いているのだが話してくれない。
それどころか目も合わせてくれない。
馬車に乗せられること数十分。
「これより王宮に入る。無礼な態度をとれば即刻死罪だと思え。」
そういうと馬車から降ろされ、布で視界を隠された。
まさか誤解を解く暇もなく殺されるなんてことないですよね。
偉い人、まだですか。 ヘルプミー。
何も見えていないのだが、王宮内に入ったことがすぐにわかった。
雰囲気が変わったのだ。
そこら中から敵意の視線を感じる。
「……ん?」
ひとつ変な視線が混じっているな。
草陰から興味津々でこちらを見ているウサギの視線だな。
…お腹空いたな。
「入れ」
そういわれると目隠しを取られ、部屋に入れられた。
俺はすぐに分かった。
中央で椅子に肘をつきながらこちらを見ている髭を生やした男。
偉い人に会いたかったけど、まさか一番偉い人がくるか。
あれが「国王ゼニス」だ。
「国王陛下、かの者はチニール大森林が国王の所有物だと知りながら侵入し、そこにある果実や鉱石を盗んだ疑いがある者でございます。」
何を言っているんだ?果実?鉱石?
確かに果実は食べたが盗んだわけじゃない。
ちゃんと持ち主に許してもらった。
鉱石なんて触ってすらない。
「誤解があります!私は確かにチニール大森林に入りました。しかし、それは王の所有物だと知らなかったからです!果実は勿論のこと、鉱石には触れてすらいません!」
果実のことは黙っておこう。
それがいい。
「…次に王の許可なく発言したら死罪だと思え。王よ、こやつは嘘をついているかと。この国にあの森が王のものであると知らないものなどいますまい。」
全部あの女神のせいだ。
あいつがあんな森に飛ばしたせいで一年も迷子になり、こんなことになっているんだ。
あのやろう…
「……そなたの名は?」
「あまのみ、ことです。…あっ。『あまのみこと』…でございます。」
ちっ。あの女神のことを考えすぎたせいで同じ口調で言ってしまった。
「変わった名だな。生まれはどこだ?」
「日本でございます。」
「どこか知らんな。ではなぜチニール大森林に入った?」
「…イシスという名の女神にこの世界に飛ばされてきました。そして、気が付くとその森の奥深くに。約一年の間その森をさまよい、つい最近でてこられました。」
周りがざわついている。
女神イシスのことを知っているのか?
「…にわかには信じ難いな。女神イシス、古来よりその存在はこの世界に大きな影響を与えてきた。良くも悪くもな。」
信じられないのも無理はない。
…ならばこのカードを切ろうぞ。
「女神イシスより指名を授かっています。『魔王』を倒してくれと。」
「魔王だと?そなた、本気で言うておるのか?」
「…本気です。」
「……ガハハハッ!女神イシスに飛ばされるか。あの女ならやりかねんな。信じようぞ。『あまのみこと』そなたの罪を不問にしてやる。精々がんばれ。期待しておるぞ。」
「はっ。精進いたします。」
「今の話を聞いてしまったらなおさら……王よ!私の話を…」
なんとか助かった。
女神にも頼まれ、王にも期待された「魔王退治」
がんばろうぞ。
嘘である。
魔王を倒す気などとっくの昔に消え失せた。
この世界にきてすぐはまだあったさ。
女神との約束だとか、俺がこの世界を救いに来たとか。かっこいいことを考えていた。
でも一年もあんな森にいたんだ。
女神との約束?そんなもんしるか。
この世界を救う?だまれ。
冒険者になって遊んで暮らすんだ。
その結果魔王を倒せたならそれはそれでいい。
日本にいた頃の勘違い童貞ナルシストはもういない。
俺は俺のために生きる。
くそ女神どっかで見てんだろ?
しっかり見とけ、俺の人生を。
おそらくあれが入り口なのだろう。
そこには複数の人影が見えた。
「ここには何しにきた?」
槍を持った衛兵がこちらに質問をしてくる。
門番をしているのであろう彼らは、明らかにこちらを警戒していた。
見慣れない服にところどころ血が付着している。
それなのに丸腰だ。無理もない。
ここは無難な回答をするのがベストだろう。
「いや~それが街にくる途中に盗賊に襲われましてね~。身ぐるみ剝がされてしまいまして。そこで通りすがりの人に助けてもらい命からがらここまできた次第です。」
どうだ?こんな可哀想なやつ、通してやるしかないだろう?
「……」
あれ。なんかむしろ警戒されてないか…。
「盗賊に会ったといったな?どこで会った?」
俺はすかさず答える。
こういうときは時間をかけないほうがいいのだ。
「チニール大森林です!山籠もりをして体を鍛えていました!」
そこですかさず上着を脱ぐ。
どうだこの腹筋。あのウェンディさんですら「凄い体」と言わせたものだぞ。
傷のことかもしれないけど。
俺は勝ち誇った顔で衛兵たちのほうを見ると、槍を構え周囲を囲まれていた。
「貴様!誰の許可でその森に入った!」
誰の許可だと?
許可がいるのか?
ウェンディさんは何も言ってこなかったじゃないか。
一体どういうことだ。
「チニール大森林は国王ゼニス様の名のもと、この国が管理しているものだ!許可なく入ることは許さん!」
そういうと俺の体を押さえつけ拘束された。
抵抗することも考えたが、衛兵を殴ったなどとなれば大事になりかねない。
既に大事になっている気もするが。
まぁ、いい。偉い人に会ったら誤解を解こう。
女神イシスに助けられこの世界に転移してきたと正直に話そう。
それが一番だ。
俺は馬車に乗せられどこかに連れていかれていた。
どこに向かっているのだろうか。
先ほどから聞いているのだが話してくれない。
それどころか目も合わせてくれない。
馬車に乗せられること数十分。
「これより王宮に入る。無礼な態度をとれば即刻死罪だと思え。」
そういうと馬車から降ろされ、布で視界を隠された。
まさか誤解を解く暇もなく殺されるなんてことないですよね。
偉い人、まだですか。 ヘルプミー。
何も見えていないのだが、王宮内に入ったことがすぐにわかった。
雰囲気が変わったのだ。
そこら中から敵意の視線を感じる。
「……ん?」
ひとつ変な視線が混じっているな。
草陰から興味津々でこちらを見ているウサギの視線だな。
…お腹空いたな。
「入れ」
そういわれると目隠しを取られ、部屋に入れられた。
俺はすぐに分かった。
中央で椅子に肘をつきながらこちらを見ている髭を生やした男。
偉い人に会いたかったけど、まさか一番偉い人がくるか。
あれが「国王ゼニス」だ。
「国王陛下、かの者はチニール大森林が国王の所有物だと知りながら侵入し、そこにある果実や鉱石を盗んだ疑いがある者でございます。」
何を言っているんだ?果実?鉱石?
確かに果実は食べたが盗んだわけじゃない。
ちゃんと持ち主に許してもらった。
鉱石なんて触ってすらない。
「誤解があります!私は確かにチニール大森林に入りました。しかし、それは王の所有物だと知らなかったからです!果実は勿論のこと、鉱石には触れてすらいません!」
果実のことは黙っておこう。
それがいい。
「…次に王の許可なく発言したら死罪だと思え。王よ、こやつは嘘をついているかと。この国にあの森が王のものであると知らないものなどいますまい。」
全部あの女神のせいだ。
あいつがあんな森に飛ばしたせいで一年も迷子になり、こんなことになっているんだ。
あのやろう…
「……そなたの名は?」
「あまのみ、ことです。…あっ。『あまのみこと』…でございます。」
ちっ。あの女神のことを考えすぎたせいで同じ口調で言ってしまった。
「変わった名だな。生まれはどこだ?」
「日本でございます。」
「どこか知らんな。ではなぜチニール大森林に入った?」
「…イシスという名の女神にこの世界に飛ばされてきました。そして、気が付くとその森の奥深くに。約一年の間その森をさまよい、つい最近でてこられました。」
周りがざわついている。
女神イシスのことを知っているのか?
「…にわかには信じ難いな。女神イシス、古来よりその存在はこの世界に大きな影響を与えてきた。良くも悪くもな。」
信じられないのも無理はない。
…ならばこのカードを切ろうぞ。
「女神イシスより指名を授かっています。『魔王』を倒してくれと。」
「魔王だと?そなた、本気で言うておるのか?」
「…本気です。」
「……ガハハハッ!女神イシスに飛ばされるか。あの女ならやりかねんな。信じようぞ。『あまのみこと』そなたの罪を不問にしてやる。精々がんばれ。期待しておるぞ。」
「はっ。精進いたします。」
「今の話を聞いてしまったらなおさら……王よ!私の話を…」
なんとか助かった。
女神にも頼まれ、王にも期待された「魔王退治」
がんばろうぞ。
嘘である。
魔王を倒す気などとっくの昔に消え失せた。
この世界にきてすぐはまだあったさ。
女神との約束だとか、俺がこの世界を救いに来たとか。かっこいいことを考えていた。
でも一年もあんな森にいたんだ。
女神との約束?そんなもんしるか。
この世界を救う?だまれ。
冒険者になって遊んで暮らすんだ。
その結果魔王を倒せたならそれはそれでいい。
日本にいた頃の勘違い童貞ナルシストはもういない。
俺は俺のために生きる。
くそ女神どっかで見てんだろ?
しっかり見とけ、俺の人生を。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです
熊ごろう
ファンタジー
俺はどうやら事故で死んで、神様の計らいで異世界へと転生したらしい。
そこまではわりと良くある?お話だと思う。
ただ俺が皆と違ったのは……森の中、木にめり込んだ状態で転生していたことだろうか。
しかも必死こいて引っこ抜いて見ればめり込んでいた部分が木の体となっていた。次、神様に出会うことがあったならば髪の毛むしってやろうと思う。
ずっとその場に居るわけにもいかず、森の中をあてもなく彷徨う俺であったが、やがて空腹と渇き、それにたまった疲労で意識を失ってしまい……と、そこでこの木の体が思わぬ力を発揮する。なんと地面から水分や養分を取れる上に生命力すら吸い取る事が出来たのだ。
生命力を吸った体は凄まじい力を発揮した。木を殴れば幹をえぐり取り、走れば凄まじい速度な上に疲れもほとんどない。
これはチートきたのでは!?と浮かれそうになる俺であったが……そこはぐっと押さえ気を引き締める。何せ比較対象が無いからね。
比較対象もそうだけど、とりあえず生活していくためには人里に出なければならないだろう。そう考えた俺はひとまず森を抜け出そうと再び歩を進めるが……。
P.S
最近、右半身にリンゴがなるようになりました。
やったね(´・ω・`)
火、木曜と土日更新でいきたいと思います。
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
レベル“0”ですが、最強です。
勇崎シュー
ファンタジー
突如勇者として転移された鹿羽琢真。
ステータスを確認したところ、何と彼のレベルは1ではなく“0”だった!
それ故戦力外と判断され王国から追放されるが……。
琢真はレベルが一切上がらない代わりに、本来習得出来ない強力な“剣召喚”スキルを手に入れていた!
追放されたのなら好き勝手に生きます。
どんな相手も最強の剣でやりたい放題!
広大な世界を旅するソードファンタジー。
抽選結果は大魔王だったので、剣と魔法と平和と欲に溢れた異世界で、のんびりとスローライフしたいと思います。
蒼樹 煉
ファンタジー
抽選で、大魔王として転生したので、取り敢えず、まったりと魔物生成しながら、一応、大魔王なので、広々とした領土で、スローライフっぽいものを目指していきたいと思います。
※誹謗中傷による「感想」は、お断りです。見付け次第、削除します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
※駄文+誤字脱字+その他諸々でグダグダですが、宜しくお願いします。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる