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歓迎される一行
しおりを挟む駆けつけたマスターはその惨状を見ても何も言わなかった。マスターが、遺体を掴んで離さない私ごと第一王子を運んだ。
第二王子には私が殺したと伝えた。そう報告するとただ一言、『そうか。』とだけ言った。そしてアンデッドにならぬよう、火葬するようにとの指示が出された。
「踊り子ぴょん…その髪…。」
「この人に。」
切り落とされた髪を、棺の中の彼に握らせる。
「きっとまた再会しましょう。」
私の魔力で紫色に染まった炎が彼を包み燃え上がる。
パチパチと跳ねる火花が私の肌を焦がした。
どうしてだか涙は浮かばない。
心の中は、不思議と凪いでいた。
それでも、彼が骨になるまで私はその場を離れることが出来なくて、骨になった彼を小さな箱に入れた。
全てが終わった後に葬式を執り行うのだと、第二王子が言っていたからだ。王族として行うのか、それとも彼の家族として行うのか。どちらにせよこれは第二王子に渡さなければならない。
私は箱を強く抱き締めた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「リル様。ぼーとされては危険です。」
ルイに呼び掛けられてはっとする。
あれから幾日が過ぎたのだろうか、頭がぼんやりとしていてはっきりとしない。
「あぁ…懐かしい。あなたと出会ったのもここだった。」
私は現在、王都にいた。
国王を幽閉するためだ。
私が先頭に進み、マスター、ロア君、第二王子をティーザー侯爵、ダルボット公爵、マスター、ミキ様、サヨ、ランダ、ディーン、ルイ、ラダのいつものメンバーが囲む。
そして…。
「何だ、アドラー公爵。緊張しているのか。」
「陛下、この子は緊張なんてしない。ただ…色々あっただけ。」
「色々とは?」
「陛下にはまだ早い。」
皇帝と、その護衛になるカーラ師もいた。
皇帝が何故こんな所にいるのかと言えば、
『私も言いたいことがある。』
とのことらしい。
王都は活気に溢れていた。民が口々に、
「第二王子殿下、万歳!!!」
「勇者様、万歳!!!」
「アドラー公爵、万歳!!!」
と叫んだ。このように出迎えられるとは思っていなかっただろう第二王子は少し驚いた顔をしていたが、すぐに気を取り直し、笑顔で民衆に手を振っている。
民は遂に新しい王を迎えるのだと、きっと良くなるだろうと未来に思いを馳せ、勝手な期待をしてくる。
この期待を超えられなかった時…今度は私や第二王子が倒されるのだろうか。
何となくそう思った。
王城が段々と近くなってくる。
民衆の中に、公娼の一人であるルーナがいた。
彼女は私をキッと睨むと立ち去っていく。私はルーナを結局巻き込むだけ巻き込んでしまった。
怪我をしていなくて良かったと思うと同時に、勇者と情を交わした彼女にとって私はもう敵にしか見えないのだろうかと淋しくも思う。
ルーナの件に関しては私が悪かった。
何の関係もない彼女をグロイスター公爵の命とはいえ戦場に連れていき、そして私はグロイスター公爵が亡くなるとすぐに王国軍を離脱してしまった。
いつか謝りにいけるだろうか。
せめて、彼女が守りたかった勇者は生きていると伝えることが出来れば良いのだけれども。
王都は明るく、そして異様な空気に呑まれていく。
私達はただ、国王を幽閉するために進むのだった。
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