131 / 136
歓迎される一行
しおりを挟む駆けつけたマスターはその惨状を見ても何も言わなかった。マスターが、遺体を掴んで離さない私ごと第一王子を運んだ。
第二王子には私が殺したと伝えた。そう報告するとただ一言、『そうか。』とだけ言った。そしてアンデッドにならぬよう、火葬するようにとの指示が出された。
「踊り子ぴょん…その髪…。」
「この人に。」
切り落とされた髪を、棺の中の彼に握らせる。
「きっとまた再会しましょう。」
私の魔力で紫色に染まった炎が彼を包み燃え上がる。
パチパチと跳ねる火花が私の肌を焦がした。
どうしてだか涙は浮かばない。
心の中は、不思議と凪いでいた。
それでも、彼が骨になるまで私はその場を離れることが出来なくて、骨になった彼を小さな箱に入れた。
全てが終わった後に葬式を執り行うのだと、第二王子が言っていたからだ。王族として行うのか、それとも彼の家族として行うのか。どちらにせよこれは第二王子に渡さなければならない。
私は箱を強く抱き締めた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「リル様。ぼーとされては危険です。」
ルイに呼び掛けられてはっとする。
あれから幾日が過ぎたのだろうか、頭がぼんやりとしていてはっきりとしない。
「あぁ…懐かしい。あなたと出会ったのもここだった。」
私は現在、王都にいた。
国王を幽閉するためだ。
私が先頭に進み、マスター、ロア君、第二王子をティーザー侯爵、ダルボット公爵、マスター、ミキ様、サヨ、ランダ、ディーン、ルイ、ラダのいつものメンバーが囲む。
そして…。
「何だ、アドラー公爵。緊張しているのか。」
「陛下、この子は緊張なんてしない。ただ…色々あっただけ。」
「色々とは?」
「陛下にはまだ早い。」
皇帝と、その護衛になるカーラ師もいた。
皇帝が何故こんな所にいるのかと言えば、
『私も言いたいことがある。』
とのことらしい。
王都は活気に溢れていた。民が口々に、
「第二王子殿下、万歳!!!」
「勇者様、万歳!!!」
「アドラー公爵、万歳!!!」
と叫んだ。このように出迎えられるとは思っていなかっただろう第二王子は少し驚いた顔をしていたが、すぐに気を取り直し、笑顔で民衆に手を振っている。
民は遂に新しい王を迎えるのだと、きっと良くなるだろうと未来に思いを馳せ、勝手な期待をしてくる。
この期待を超えられなかった時…今度は私や第二王子が倒されるのだろうか。
何となくそう思った。
王城が段々と近くなってくる。
民衆の中に、公娼の一人であるルーナがいた。
彼女は私をキッと睨むと立ち去っていく。私はルーナを結局巻き込むだけ巻き込んでしまった。
怪我をしていなくて良かったと思うと同時に、勇者と情を交わした彼女にとって私はもう敵にしか見えないのだろうかと淋しくも思う。
ルーナの件に関しては私が悪かった。
何の関係もない彼女をグロイスター公爵の命とはいえ戦場に連れていき、そして私はグロイスター公爵が亡くなるとすぐに王国軍を離脱してしまった。
いつか謝りにいけるだろうか。
せめて、彼女が守りたかった勇者は生きていると伝えることが出来れば良いのだけれども。
王都は明るく、そして異様な空気に呑まれていく。
私達はただ、国王を幽閉するために進むのだった。
26
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる