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もうすぐ全てが終わる
しおりを挟むあの人がいる…心臓がドクドクと煩く鳴った。
「リル様、大丈夫ですか?顔色が…。」
相変わらず私をリルと呼ぶルイが、私のことを心配そうに見つめ言った。
「大丈夫です。」
軽く手を挙げて心配する必要はないと合図をするも、心配性の少年は得心していないようであった。不安そうに瞳の色を暗くすると、何かあったらすぐに下がってください、そう言った。
不安になることなど、何一つ無いというのにこの子は…。思わず苦笑いが浮かぶ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それからどれくらいの時間が経っただろうか。飛ぶのとは違い行軍とはやたらと時間が掛かる。
これだけの大世帯なのだから仕方ないとも思うが、もどかしさも感じた。
相変わらず民間人は人っ子一人いない土地、かなり遠いところにズラリと黒い群れが見えた。
よく見るとそれは人のようで、上げられた徽章を見るに、第一王子軍のようであった。
彼の魔力を近くに感じ、ドクンとまた心臓が跳ねた。
「踊り子ぴょん、私が全部やるよ。」
マスターの申し出を首を振って断った。彼女に私の使命まで背負わせるわけにはいかない。これだけ多くの無関係な人を巻き込んで、私だけ何もしないなんて許されるわけも無いと思った。
それにこれは…私の復讐だ。
あの日家族を失った時の気持ちは未だに薄れていない。
復讐なんて馬鹿馬鹿しい…そんな風に思いそうになって、何度も死にたいと思った。そんな私をここまで生かしたのは復讐をするのだと誓ったあの頃の私の覚悟だった。
もうすぐ…もうすぐ全てが終わる。
遠くにいる彼と目が合ったような気がした。
「アドラーの娘!そなたのしていることは国家反逆にも成りうる事だと分かっているのか!!!」
第一王子軍の誰かが私にそう呼びかけた。大きく張り上げた声に、一瞬、後ろにいる兵達が動揺したのが伝わる。
私はそれに答えない。その代わりに、後ろを振り返り大きく息を吸った。そして万の兵士に呼び掛ける。
「国王陛下は悪魔に取り憑かれ、国民を傷付けてきました。そしてそれを支持する第一王子もまた、悪魔の手に堕ちてしまいました………。けれど、天の神は私達を見捨てることはありませんでした!!真の勇者ミキ様を遣わし、悪魔よりお救いになると約束されました!この国を思う心があるのならば、私と共に戦いましょう!!」
剣を引き抜き、天に掲げる。
「「「「「「「「「「「「「「「おう!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
野太い声が周りに響いた。
そのまま剣を前に突き出し、
「進め!!」
言いたくもない言葉が、口をついて出た。
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