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明かされた過去ーダルボット公爵視点ー2
しおりを挟む「シャーロット・エリザベート・ウィスリーに会いたい。」
そんなことを皇太子殿下が言い出したものだから、取り巻きの貴族達が慌てていた。皇太子殿下は社交界が好きでは無く、行ったとしても女の物色だけをしているような人だった。
そんな皇太子殿下が社交界の花たるシャーロット嬢に興味を持つとは…当時の貴族達はその先のことを懸念した。
しかし、シャーロット嬢を守っているのは弟王子であるグロイスター公爵だ。彼はシャーロット嬢を女癖の悪い兄に近付けないように画策しているような気もあった。
女を巡っての王族同士の争いというのは時に国を混乱させることもある…当時の貴族の多くはそれを懸念した。
グロイスター公爵は兄がシャーロット嬢を狙っていると知ってから彼女に社交界に出ることを控えるように言った。シャーロット嬢は疑問に思いつつもそれに従っていた。社交界に顔を出すことを控えたのだ。
中々シャーロット嬢に会うことの出来ない皇太子殿下はイラついた…。それは学舎でも同じことで明らかに周囲を威圧し、癇癪を起こすようになった。
同じ学年で彼に何かを言えるものがいるとすれば…それは…。
「皇太子殿下、王たるものそのように気持ちに振り回されるものでありません。」
アドラー公爵だった。
彼は若いながらも数年前に父が亡くなった際、既に爵位を継承しており公爵となっていた。
皇太子殿下とは従兄弟同士の関係でありかなり高貴な身分の男だった。それに周囲からの人望も厚い。取り巻きの中には入らないものの、たまに皇太子殿下を諌めていた。
皇太子殿下はアドラー公爵に言われると苦い顔をして一旦は落ち着いた。
当時のアドラー公爵の王位継承権は第三位だ。既に宮廷でも力を持ち始めているアドラー公爵は、たかが皇太子にとって無視出来る存在では無かった。
彼が王座を望めば沢山の貴族達が皇太子を廃そうと動くだろう…。
それが分かっているから、皇太子も彼相手には強く出ることが出来なかった。
おそらく、兄王子を追い落とそうとはしない弟王子であるグロイスター公爵よりも、王座に近い男がアドラー公爵だった。
ーーーーーーーそんな事が続いたある日の事だった。
国王の誕生祭が行われたのは。
国王の誕生祭には全ての貴族に出席の義務が課されている。それはシャーロット嬢にも言えることで、社交界の出席を控えていようとも、貴族の義務として出席しなければならなかった。
グロイスター公爵は警戒している様子だったが、当のシャーロット嬢はそこまででも無かったように思う。それでも、諦めの悪いしつこい皇太子にイライラしている様子はあったようだ。
ウィスリー伯爵家は古い家だが、そこまで力のある家柄ではない。彼女が皇太子のハレムの一員となることは伯爵家にとっては喜ばしいことのようで、グロイスター公爵の思惑とは違い、彼女をとりたて飾り付けて誕生祭に出席させた。
いつも美しい彼女が、その日は更に輝いていたのをよく覚えている。
彼女が兄と共に会場入りした時は周囲がざわめいた。
会場にいた男達の視線が彼女に向かっていた。当の私も、彼女から視線を移すことが出来なかったものだ。
あぁ…白状しよう。私もシャーロット嬢に心を奪われた男の一人だったよ。
だからこそ、皇太子に彼女が無理矢理手籠めにされそうなのを静観するしか無い自分に腹が立った。
ダルボット公爵家の跡取りだったとは言え、当時の私には力が無かったからな。皇太子の不興を買えば生き残ることも出来なかっただろう。悔しく思いつつも静観するしか無かった。
そして会場で初めてシャーロット嬢を見た皇太子は…更に彼女への執着を深めた。
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