107 / 136
明かされた過去ーダルボット公爵視点ー2
しおりを挟む「シャーロット・エリザベート・ウィスリーに会いたい。」
そんなことを皇太子殿下が言い出したものだから、取り巻きの貴族達が慌てていた。皇太子殿下は社交界が好きでは無く、行ったとしても女の物色だけをしているような人だった。
そんな皇太子殿下が社交界の花たるシャーロット嬢に興味を持つとは…当時の貴族達はその先のことを懸念した。
しかし、シャーロット嬢を守っているのは弟王子であるグロイスター公爵だ。彼はシャーロット嬢を女癖の悪い兄に近付けないように画策しているような気もあった。
女を巡っての王族同士の争いというのは時に国を混乱させることもある…当時の貴族の多くはそれを懸念した。
グロイスター公爵は兄がシャーロット嬢を狙っていると知ってから彼女に社交界に出ることを控えるように言った。シャーロット嬢は疑問に思いつつもそれに従っていた。社交界に顔を出すことを控えたのだ。
中々シャーロット嬢に会うことの出来ない皇太子殿下はイラついた…。それは学舎でも同じことで明らかに周囲を威圧し、癇癪を起こすようになった。
同じ学年で彼に何かを言えるものがいるとすれば…それは…。
「皇太子殿下、王たるものそのように気持ちに振り回されるものでありません。」
アドラー公爵だった。
彼は若いながらも数年前に父が亡くなった際、既に爵位を継承しており公爵となっていた。
皇太子殿下とは従兄弟同士の関係でありかなり高貴な身分の男だった。それに周囲からの人望も厚い。取り巻きの中には入らないものの、たまに皇太子殿下を諌めていた。
皇太子殿下はアドラー公爵に言われると苦い顔をして一旦は落ち着いた。
当時のアドラー公爵の王位継承権は第三位だ。既に宮廷でも力を持ち始めているアドラー公爵は、たかが皇太子にとって無視出来る存在では無かった。
彼が王座を望めば沢山の貴族達が皇太子を廃そうと動くだろう…。
それが分かっているから、皇太子も彼相手には強く出ることが出来なかった。
おそらく、兄王子を追い落とそうとはしない弟王子であるグロイスター公爵よりも、王座に近い男がアドラー公爵だった。
ーーーーーーーそんな事が続いたある日の事だった。
国王の誕生祭が行われたのは。
国王の誕生祭には全ての貴族に出席の義務が課されている。それはシャーロット嬢にも言えることで、社交界の出席を控えていようとも、貴族の義務として出席しなければならなかった。
グロイスター公爵は警戒している様子だったが、当のシャーロット嬢はそこまででも無かったように思う。それでも、諦めの悪いしつこい皇太子にイライラしている様子はあったようだ。
ウィスリー伯爵家は古い家だが、そこまで力のある家柄ではない。彼女が皇太子のハレムの一員となることは伯爵家にとっては喜ばしいことのようで、グロイスター公爵の思惑とは違い、彼女をとりたて飾り付けて誕生祭に出席させた。
いつも美しい彼女が、その日は更に輝いていたのをよく覚えている。
彼女が兄と共に会場入りした時は周囲がざわめいた。
会場にいた男達の視線が彼女に向かっていた。当の私も、彼女から視線を移すことが出来なかったものだ。
あぁ…白状しよう。私もシャーロット嬢に心を奪われた男の一人だったよ。
だからこそ、皇太子に彼女が無理矢理手籠めにされそうなのを静観するしか無い自分に腹が立った。
ダルボット公爵家の跡取りだったとは言え、当時の私には力が無かったからな。皇太子の不興を買えば生き残ることも出来なかっただろう。悔しく思いつつも静観するしか無かった。
そして会場で初めてシャーロット嬢を見た皇太子は…更に彼女への執着を深めた。
24
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる