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明かされた過去ーダルボット公爵視点ー
しおりを挟むシャーロット・エリザベート・ウィスリーという少女は、不思議な魅力を持っていた。その美しい容姿は勿論のこと、この国の女らしくないその性格に魅了される男達が当時の社交界には溢れていた。
「どうしてわたくしが貴方の言う事をきかなければなりませんの?」
柔らかい口調とは反対に、言葉からは気の強さが滲み出していた。自分よりも身分の高い、侯爵家の男に声を掛けられた時も彼女は毅然と男を袖にしていた。
「シャーロット、そんな風に言うのは良くないと思うよ…。」
そんな彼女の隣にいつもいたのはグロイスター公爵だった。彼が兄の影のように生きており、今ほど宮廷内の力も無かった頃だ。
しかしグロイスター公爵は殊更シャーロット嬢とはかなり親しい様子だった。
彼女を窘めるのはいつも彼の仕事だったように思う。そんな二人は母親同士が友人であり、幼い頃から交流を重ね兄妹のように接していた。
と言っても、兄妹のようだ…と思っているのはシャーロット嬢だけで、グロイスター公爵が彼女に気があるのは分かりきったことだった。
さり気なく男に絡まれる彼女を助けに入っては、ボソリと何かを男の方に告げて退場させるのは彼の務めで…。兄の影に隠れているとはいえ、彼とて歴とした王族だ。そんなグロイスター公爵を差し置いて彼女を奪おうとする貴族というのは案外多くはなかった。
当時のグロイスター公爵は線が細く、中性的な顔立ちも相まって男装の麗人のようにも見えた。
二人は幼馴染ということもあって、社交界では頻繁にダンスのペアを組んでいた。美しい二人が並んでいると、自分が入ることも恥ずかしくなるくらい、眩しく見えたものだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
貴族の男性というのは、学舎に入ることがある。高位貴族であるならば尚更だ。
その学者では私と現国王陛下…当時の皇太子殿下とアドラー公爵は同期だった。
現国王陛下の女癖の悪さは社交界でも学舎でも有名で、どんな高位の貴族の娘であっても簡単に手出しをするのでよく思わない貴族も多かった。
そんな彼がシャーロット嬢に興味を持ち始めたのは、社交界での噂を聞いたのがきっかけだったろうと思う。
当時社交界はシャーロット嬢の噂で持ち切りだった。彼女のダンスの相手になることを望まない男がいない程に…。
しかし彼女は気に入らない相手とはダンスであっても踊らない。そして彼女とダンスを踊った男は誰であっても彼女に魅了されてしまうのだ。
そんな噂を聞いた当時の皇太子は、彼女に強い興味を抱くようになった。
これが、全ての不幸の始まりだったのだと、今なら思うが当時の私達は、殿下の酔狂が始まったとしか思っていなかった。
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