金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

文字の大きさ
上 下
97 / 136

覚悟

しおりを挟む







帝国と同盟を結ぶ上で一番の問題はミキ様だった。

本当に勇者が信用出来るのか、いきなり寝返ったりはしないのか。それが帝国の懸念事項だったようだ。


しかし彼女が



「せんせーにはお世話になったし?ここまできたらどうなるのか気になるから付き合うよー。」



と言ったことで帝国側の気が抜けて私が側にいるという条件で受け入れられた。


彼女には何度もどこかに隠れていても良いことを伝えるが、なかなか首を縦に振らない。どうしてか聞けば、「せんせーが好きだから。」とのことだ。


一番関係のない彼女だが、ここまで来てしまえばもう引き返すことは出来ない。旧知である勇者達とは敵同士となるが良いのか聞けば、




「えー、だってあいつら弱いし~?戦っても怪我させないで勝つくらい出来るよ。多分。」




とのことだ。




「せんせー、あーし、すごいバカだけどさ、ちゃんと分かってるよ。覚悟だってしてるから大丈夫!」




そう言う彼女の肩が少し震えているのを見て見ぬふりをした。





ーーーーーーーーーーー




「そういうことならば歓迎しよう。花しぐれ共々な。」




皇帝に報告すると、爽やかな笑顔と共にそう告げられた。他の諸侯達の中には不満そうな者もいたが、表立って皇帝に意見する者はいなかった。


しかし花しぐれの名前を聞くと、嫌悪感に顔を歪める者も多かった。彼女は帝国にとって古くからの敵なのだろう。


本人は余り気にした様子は無かった。戦争とはそういうものだと割り切っているようだ。


初代勇者に頼まれた王国の安寧は、第2王子や私と共にいた方が叶いそうだとのことで、王国と一時的に敵対することに思うことはあるようだが、否とは言わなかった。


各々が、各々の覚悟を決めて…出陣の準備を整える。


現状、第二王子陣営が動かない王国軍は圧倒的に劣勢だった。それでも、勇者の存在によってそこまで大きく士気は落ちていなかった。彼らが前線に出て戦っているのが、多少なりとも王国軍を支える力となっているようだ。


私もその一助をしていたので苦々しくも思う。


それにルーナ…あの子は大丈夫だろうか。


あの子自身に大きな力がある訳では無い。貴族達の中で、彼女を守ってくれる者はいない。


勇者と近しい彼女を疎ましく思う者もいるだろう。無事にこの戦の終わりに再会出来ると良いのだが。




「リル…話がある。」




いつになく真剣な表情で、どこか緊張した様子の第二王子に呼び止められる。


二人で天幕に入ると、暫く沈黙が落ちた。






「殿下、どのような…。」




「リル、お前にこれを渡そうと思う。次の戦で、お前はこれを持って戦場に出よ。」





渡されたそれを見て、私は思わず激しく嗚咽を漏らしたのだった。




「殿下…有難うございます…。」




それを抱き締めて、何とかそう絞り出した私の肩に、彼はそっと手を添えたのだった。










しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...