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同盟
しおりを挟む皇帝は、家臣の反対を聞き入れず私たちを招き入れ、それでも文句を言い続ける家臣を天幕の外へと追い出した。
「すまないな。彼らは王国を選んでいるから。」
謝罪をされ、受け入れる。
王国も帝国も、戦争をしていて被害が出ているのはお互い様だが、それでも気持ちは分からないでもない。
「さて、同盟の話をしようではないか。」
座りたまえと言われ椅子を勧められ、一瞬、皆で顔を見合わせてから腰掛けた。
こちらもかなり大人数でおしかけてしまったが、難なく座ることが出来た。
ぐるり、と円卓に座った面々の顔を改めて見る。
亜人…と王国では呼ばれている人種の者が多い帝国らしく、臣下の者たちも人族以外に様々いるのが新鮮であった。
「ヨウラドウ公、そしてリリス嬢、そしてお仲間も…良くぞ来てくれた。こちらの誘いに乗ってくれたこと、礼を言う。」
「いえ…。そちらと同様、此方も考えあってのこと。礼には及びません。」
代表して第二王子が返した。
「本来ならば歓待の宴を開くべきだろうが…お互いそのような時間は無いだろう。早速たが本題に入らせて貰う。」
しんと静かになって、皆が皇帝を見つめた。
「貴殿らには、王国内にいるエルフや獣人の子供達の解放と、30年前に奪われた我らの土地の返還を願いたい。」
きっぱりと、皇帝が告げた。
その要求に第二王子が少し考えるような仕草をする。
「30年前というと……シエラの森か。」
シエラの森は帝国との国境近くにある森だ。強い魔物が多く、とてもではないが容易に人が足を踏み入れられるような場所ではない。深く薄暗い森で名産になるような植生もない。元々はどちらにとっても重要な森ではなかった。
しかし、百年前にダンジョンが出現し森の価値が変わる。
ダンジョンを求めて争いが起こった。それ以来、何度か衝突しては森の所有権は変わってきたのだ。
「あれは…我が国にとっても大事な資源だ。そちらの人民を返すのは吝かではないが…散り散りになってしまっている者達を果たして返せるものか…。」
「どちらも承認してくれれば、帝国はヨウラドウ公の王位継承を支援する。…そして、貴殿が王位に就いた暁には…そなたの子孫たちが我らに牙を向かない限り、友好を続けることを誓おうではないか。」
私は不敵に微笑んだ皇帝の言葉を止める。
「牙を向かない限り…とは、武力行使以外も入りますよね?その判断基準はどのように??そちらが攻めてきた場合は?」
「ふむ…人間にとってはそれが懸念事項になり得るのか。私はあと数千年は死なない。二百年前に産まれたばかりなものでな…。私が生きている間は、こちらから攻め入ることはないと約束しよう。武力行使以外のものは…話し合いで解決できないものならば仕方ないが。私も自国の民を守らねばなるないのでな。」
二百年前に産まれたばかり、か…。
長寿のエルフにとって百年、二百年は最近のことなのだろう。
だからこそ、師匠は五百年前の…以前の勇者と花しぐれのことが嫌いなのだと思う。戦争をしたのだから仕方ないと頭では分かっているだろうが…複雑な心境だろう。
「成程…それが本当ならば悪くない契約だ。だけど口約束だけでは信用できませんね。」
第二王子がきっぱりと告げた。
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