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少ししごいただけ、世話はしてません

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師から貰ったペンダントに魔力を籠める。純粋な私の魔力を入れたので、周囲に紫色の光が広がった。




「リル。遅い。」




勝ち誇ったように笑みを浮かべるカーラ師が瞬間移動してきたのは光が収まった頃だった。

周囲には私、第二王子、マスター、ロア君、ミキ様、そして同席したいと言い張ったラダがいた。子供達は私の意向に付いていくということで、今この場にはいない。


この人数の集まる所に難なく転移してくるところを見るに、相変わらずとんでもない魔力コントロールだ。




「それを使ったってことは、覚悟が決まったってこと?」



こてん、と首を傾げたその仕草が容姿も相まって幼く見える。

きょろきょろと辺を見回して一言。




「嫌な気配がする…。」




そして不機嫌になった。



「久しいのお。カーラ。」



ひょっこりとミキ様の影から顔を出す花しぐれを見て、カーラ師が益々顔を歪めた。




「そんな顔をするな。元は仲間ではないか。」



「貴女は裏切った。最初の勇者の時なら兎も角、その後何度も。」



最初の勇者、というのは魔王を討伐した勇者だろう。花しぐれ曰く、その時はまだ帝国と王国は協力関係にあったそうだ。初代勇者のパーティーメンバーにエルフの魔法使いがいた。そのエルフと勇者によって漂う精霊は花しぐれとなったのだと言う。




「……お前はまだ産まれてなかっただろう。」



「私の父や母が言っていた。500年前の戦争で貴女に殺されたけど。」



「戦争とはそういうものだろう。まさか、自分達は何も悪くなかったのに、とでも言うつもりかえ?」




口の上手さは花しぐれが上なのだろう。カーラがぐっと言葉に詰まった。




「まあ、良い。貴女がこちらに付くの言うのならば、帝国も貴女を歓迎する。……それでリル。貴女は本当に良いの?今日まで一緒に戦っていた人達と、敵対することになるけど。」




息をゆっくり吸い、頷いた。




「はい。」




声が少し震えた。

こちら側に知り合いが全く残らない、という訳では無い。

だけど…私は…下らない利権争いや女の奪い合いで家族を殺されたことが分かって…。


王国を許すことは出来そうに無かった。




「…エイデン・オーガスタス・アーネスト・ヨウラドウ公とお見受けします。」




カーラ師が、第二王子にカーテシーを取る。綺麗な礼に、彼女がかなり身分の高い存在であることが伺えた。




「誰それ?」




空気の読めないミキ様を花しぐれが叩く。




「第二王子の名前じゃよ。…前に説明されたろうに。」




この娘は、と花しぐれが深い溜息を吐いている。

ミキ様のことは花しぐれに任せておこう。




「貴女はリリスの師だという者だな。リリスが世話になった。」



「少ししごいただけ。世話はしてません。」




少し…というところで全員が微妙な顔をした。




「良くわかんないけどさ、ちょっとであんな強くなるもん?」




ミキ様がそんなことを言うので、花しぐれが静かにせいとまた叩いたのだった。

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