金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

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ー勇者視点ー

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「おえっ!!」




魔王軍からの奇襲を受けてからというもの、俺の親友ー山田織音おりおんは肉を見る度に吐くようになった。




「オリオン、飯の途中で吐くなら外行けよ。」


「…うっ!……………名前で呼ぶな!!」




吐きながらも言い返す様子を見て、何だかんだ元気そうだなと思う。

彼の名前は少し…いやかなり…今風に言えばキラキラネーム。昔で言えばハイカラな名前だ。山田の容姿が金髪碧眼のイケメンなら違和感も生まれなかっただろう。しかし、残念なことに山田は見れない程の不細工ではないが、女子が騒ぐようなイケメンでもない。所謂フツメンである。日本人らしい顔…といえば良いのだろうか、とにかく名前ほどに特徴はない顔立ちだ。



本人もそれをかなり気にしていて、昔から名前で呼ぶと怒る。

子供の頃は授業前の出欠確認でフルネームで呼ばれる度に泣きながら先生に苗字だけにしてくれと懇願するくらいには嫌がっていた。



「だけど、お前、あんなの見てから良く肉なんて食えるよな。」



俺は無理だ。と山田が手元に目を移してから…また青ざめて言った。



「俺だって怖かったんだぜ。でもさ、それとこれとは別と言うか。」



俺の中ではそこは繋がっていなかった。人間の首がすぱんと切れたのを見て、食肉と同じようには見えなかったからだろうか。


どちらかというと、ホラー映画を見てるような、そんな気分だった。

だけど目の前で吐かれれば流石に食欲も無くなる。

肩をすくめて残すことにした。

召使を呼んで食器と吐いたものを片付けさせる。


もう食べないのかと3度くらい聞かれた。俺が迷惑そうにすると慌てて頭を下げて、片付け始めたが、




「勇者勇者って皆がおだてるから気分良くなってたけど…俺たち戦争に出てるんだよな。」



「…そうだな。」




おだてられて、何も考えずに戦争に出ると言った自分たちを叱りたい気持ちになった。




「魔王ってどんなやつだろうな。」




山田がポツリと言った。




「魔王軍ってもっとおどろおどろしい感じの、ゲームの中の魔物みたいな敵が出てくるのかと思ったら、エルフっぽいのとか獣人ぽいのとか、ドワーフぽいのとか、普通の人もいたりとかしたし。俺等は…一体誰と戦ってるんだ?」




俺も疑問に思っていたことを山田が口にする。

魔王軍から世界を救ってくれ…初めてそう言われた時はゲームやWeb小説によくある展開のようだ、とワクワクしたものだが、実際に目の前で人が死んだり、人を殺した同級生…星山を見て心の中がざわついていた。


星山は女だから勇者ではないと判断されてどこかに連れて行かれた。

安全な所にいると聞いていたのが、俺等を助けに来たのだから驚いた。しかも俺等みたいに取り乱したりはせず、淡々と剣を振るうその姿に…正直怖くなった。


星山は元々、俺等とそこまで仲の良い訳ではなかった。


俺等はスクールカーストの中で中の下くらいだが、星山は所謂一軍女子といった体で、学校の中でも目立つ存在だった。


たまたま二人でアニメの話をしている時に、星山が混ざってきて、その時に教室の床に浮かんだ魔法陣に三人で吸い込まれた。


気がついたら異世界…なんて、本当にアニメみたいだと思っていた。

だけど敵から血が噴き出すのを見て、これは現実なんだと思ったのだ。





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