64 / 136
子ども達の戦闘
しおりを挟む「ルイ、ミキさん、来るよ。」
魔力探知をして、冷静に周囲に使えるのはランダだ。
私の一番弟子なだけあって、探知の方の腕も上がっている。冒険者としてしっかり経験を積んでいたようだ、と安心する。
素早く反応するのはルイで、少し遅れて武器を構えるのはミキ様だ。
初手はランダの炎の刃が魔物に命中する。が、私もかつて苦戦したコウモリ型の魔物だ。
魔法攻撃に対する耐性のある魔物で、余り効いた様子はない。
それを見たルイが、すぐさま槍を構えて横に一閃する。
ミキ様も地面を蹴って魔物に近付き、体勢を低くしながら魔物の後ろに回り込み切り伏せた。
地面に落ちたそれを見て、ふぅ、と三人が息を吐く。
ルイの指示で皆で解体を始めようとしたその時。
ランダが顔を引きつらせた。
「だから嫌だったんだ!!....また来るよ!今度は10体!」
「せっかく終わったと思ったのにー。だるー。」
ミキ様がノロノロと立ち上がり剣を構えた。緩慢な動きに見えるが隙がない。
ルイはさっと切り換えて敵を見据える。
ランダも先程ので魔法が効かないと分かったようで、かつて村を出るときに私があげた護身用の短剣を手にし、そのまま他の二人に身体強化を掛ける。
ミキ様がさっと動き出し、
「もー、髪がー。服がー。」
と文句を言いながらも容赦なく敵を切り伏せていた。
ルイは黙々とたまにちらりと私の顔を伺いながら敵を倒している。
ランダは慣れないながらも一匹は倒すことが出来たようだ。ほっと息を吐いている。
その後は三人が魔物を解体する。
私はというと、戦闘にもこういった作業にも参加しないと決めており、かなり手持ち無沙汰だ。
「おえ。グロ。」
解体をしながらミキ様が数度えずいている。
話を聞くにミキ様がいた世界というのは、肉は捌いたものが売られている世界で、一般的な人は動物を解体することはないそうだ。
先程まで生きていた魔物の解体は辛いものがあるのか、涙目になっている。
ルイが少し迷惑そうな顔をしながらも、寄越せ、とミキ様の分のコウモリを取り解体する。
「ありがと。」
ミキ様に礼を言われるもルイの方はいつもの調子で、たまにチラチラと私を見て気にしていた。
あれから時間が経つが、彼はちっとも私のことを諦めてはくれていないようだ。
子供達と私はよく言うが、更に背の伸びたルイは、もうすっかり大人の顔をしている。
かっこいいと、アルムブルクの女の子達からも人気で、村にいたときと同様、やっぱりファンクラブなるものがあるらしい。
以前マスターが面白そうに言っていた。
少し休憩を取った後、奥へと進んでいく。
一番疲労の色が濃いのは矢張ミキ様だ。
剣の扱いはそれなりになって、使える魔法も増えてきたが、如何せん体力が足りない。
今のまま戦場に立てばすぐにバテてしまうだろう。
今回は体力作り、そしていつ敵が襲ってくるか分からないという緊張感を味あわせる為にこのダンジョンに来た。
花しぐれのいる奥までは行けなくても良いとは思っているが...。
ミキ様を見て、かつて勇者と共にいたという彼女を思い出す。
Sランクになってから、度々暇を見付けては会いに来ていたが、最近は来れていなかった。元気にしているだろうか。
ふと、上を見上げると少し、時空が歪んでいるように見えた。
あっ、と思う間に私達は渦のようなものに飲み込まれてしまったのだった。
10
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる