金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

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休息

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第一王子も忙しいらしく、会瀬は夜が明けると終わってしまった。



薄明かるい中を、彼は何も言わずに私の額にキスを落として去っていく。





「クロウ様。どうかご無事で。」





一ヶ月後には戦場に向かう彼の背中にそう伝えてため息を吐いた。



復讐の相手が第一王子であることはもう分かっている。

分かっているのだが遂行出来ないのは何故だろう。



今はタイミングではないというのが一番大きいだろうが、第一王子に関しては、そこまで積極的に殺してやりたいとまでは思わなかった。

寧ろ.....有り得もしないことを考えそうになって頭を振って消した。



バルド伯爵だったら寝込みを襲って殺したところで何の罪悪感も持たないのだろうが。



なんて冗談のようなことを思う。



力のある貴族や王族を暗殺するとなると、かなり問題になるため余り現実的ではない。



下手を打てば私が処刑されるだろう。



そんな非現実的なことを考えながら、私もまたヨウラドウの街へと戻るのであった。











「踊り子ぴょん!おかえり!」



「踊り子さん、おかえりなさい。」







まだ早朝だというのに訓練でもしていたのだろうか、マスターとロア君が滴る汗を拭いながら声を掛けてきた。



二人ともいつもより薄着だ。

前衛職なだけあって、無駄のない綺麗な体つきをしている。

すっかり一緒にいることが当たり前になった二人の顔を見て、ほっと安心してしまう。







「戻りました。」







言うと、ぽん、と肩を叩かれた。







「勇者ちゃんは大丈夫だから、今日はゆっくりしなね。踊り子ぴょん、酷い顔してるよ。」







嗚呼、そうか。そんな酷い顔をしているのか。



確かに身体が重怠くかなり疲労が溜まっているのが自分でも分かった。



戦争が始まってから数ヵ月、まともな休息なんて取っていなかったことを思い出した。







「すみません。そしたら今日1日、お休みさせて頂きます。」







言った瞬間、ふっと力が抜けた。







「踊り子さん?!」







ロア君の慌てたような声が意識の落ちる前に聞こえた。









ーーーーーーー









「気付いたか?」







うっすらと目を開けると、顔色の悪い第二王子が見えた。





「エイデンお兄様?」





思わず昔の呼び方になってしまったのを、慌てて周囲を見回し、ほっと息を吐いた。

今は第二王子の他に部屋に誰もいないようだ。







「その呼び方も懐かしいな。.......それにしても働きすぎだ。医者が過労だろうと。」





「そんなに働いてましたかね。」







そう呟けば、気付いていなかったのか、と呆れられる。







「休めるときにはちゃんと休め。余裕が出来る度に徹夜で訓練するのは止めろ。お前は一体何になるつもりだ。....お前に倒れられては困る。」







仕方のない奴だ。と苦笑いする第二王子の表情が、昔のエイデンお兄様のようで、子供の頃も私が体調を崩すとこうしてお見舞いに来てくれたことを思い出した。



私たちの関係も、お互いの性格もすっかり変わってしまったと思っていたけれど、変わらない部分もあるのだと嬉しくなる。







「お姉様!倒れたと聞きましてよ!」







騒がしく入って来たのはラダだ。

その後ろに心配そうな子供達と、マスター、ロア君。そして勇者であるミキ様もいた。





「せんせー、かろーだって?ちゃんと寝ないとダメじゃんね。」







ミキ様が相変わらずの口調で言う。







「本当に心配しました....。」







青ざめたルイが私の顔を見て安心したのか、へなへなと座り込んだ。







「ルイ君、心配しすぎー。」







ずっと心ここにあらずって感じだったよねー、ゲラゲラと言うミキ様をランダがこらこらと嗜める。



歳が近いためか、子供達とミキ様は仲が良い。



ディーンにも軽く注意され、膨れたミキ様をサヨが慰めている。



全くお前らは騒がしいなと第二王子が頭を抱えていた。







「お姉様のことはわたくしがしっかりと看病致しますわ!皆様は訓練にお戻りになってくださいませ。」







ラダが強引に他のメンバーを追い出す。

ニコニコとしているが、怒っているのを感じた。







「お姉様、お話は元気になりましたらしっかりと聞かせて頂きますわ。」





そう言われて、大人しく頷くことしか出来なかった。









その日は1日、ゆっくりとベッドの上で過ごした。



サヨの作ったお粥を、ラダが口に運んでくれる。







「自分で食べられますよ。」





断るも、





「お姉様は今日は休んでください!」







と、言われてしまう。

仕方ない。

幼い子供のように口に運ばれるがまま食事をするのだった。





次の日には元気になり、顔色も良くなった、とのことで看病から解放された。



絶対に無理をしないようにとラダに約束をさせられてから、またミキ様の訓練をするための準備を始めたのだった。





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