58 / 136
えーっと、つまりそれって?
しおりを挟む少女は私達に連れてこられて、戸惑ったような顔をしていた。
「ここどこ?あんた達誰ー?全然意味分かんないんだけど。」
イライラとしたような声を出し足を揺する彼女に、これは怒るよなと半ば諦めた気持ちで向き合う。
「ごめんなさい。驚きましたよね。ここは第二王子殿下の宮殿です。あなたは先程、娼婦にさせられそうだったのですが、殿下が止めてくださいました。」
「しょーふ?しょーふってふーぞく嬢のことだっけ?あーし、歴史とかあんま詳しくないから分かんないや。」
「歴史...は関係ないとは思います。」
思わず天を仰いだ。
ちょっと頭が弱いどころじゃなく、かなり弱いのかも知れない。
何だろう。話が通じるとか通じないとか以前の問題のような。
「ちょっと良く分からないんだけどさ、あーしはそもそも何でこの国?世界?に呼ばれたの?なんか勇者様~!って崇められたと思ったら、すぐに狭い部屋に閉じ込められたんだけどー。それで何でしょーふになる話になるのかさっぱり意味不明。」
勇者と崇められたのは一緒に来た他二人だろう。この国の人々は何故か女は勇者でないと思っているし。
困ったと第二王子を見ると、ニヤニヤしながら紅茶を嗜んでいた。
少女の対応は私に任せるつもりらしい。
自分で連れてきておいて、と思わなくもないが、放って置くわけにもいかないので仕方ない。
「貴女は勇者として召還されたのですが...女性だったので勇者として見なされなかったみたいで。」
「は?ちょっと待って。」
少女が考え込むようにして、下を向く。
ショックを受けているのだろうと思っていたが、すぐに私の瞳を真っ直ぐ見て言った。
「えーっと、つまりそれって?ダンソンジョヒってやつ?私が女だから勇者として認められなかったってこと?」
「簡単に言えばそういうことですね。」
「何それ、ふるーい。」
続けて遅れてる~と言った彼女だが、さして気にしていなさそうだ。
どちらかというと他人事と言うか。なんと言うか。
「っていうか、私はしょーふだけど、山田と結城は勇者ってこと??何それ。うけるんだけど。」
似合わねーと、ゲラゲラと笑い出す。
ヤマダ、ユウキというのはもう二人の勇者だ。
噂で聞いた名前がそんな感じだったと記憶している。
「他のお二人とは知り合いなのですか?」
「んー?そだね。クラスメイトってやつかな。」
「クラスメイト。」
「そー。パッとしない奴らなんだけどねー、話すと面白いんだー。」
クラスメイトとは何だろうとは思うが、質問するより前に彼女が話し始めてしまったので後で聞くことにする。
「他のクラスメイトには暗いって嫌われてるんだけどさ、明るい奴らばっかじゃないのって普通じゃん?あーしはそういう奴らがいても良いかなーと思ってたりして。」
「成る程。その辺りのお話は後で聞きますね。話を戻しますと.....あなたが殆んどこの世界のことが分かってないということは分かりました。」
「あはは。あーし馬鹿だからねえ。」
説明されても覚えらんないしー。まあ説明されてないけど。とのことで1から説明を始める。
勇者とは、この世界を魔王から救うために呼ばれる伝説の存在であるということ。
現在魔王というものは存在していないが、国王陛下から見れば敵国である国は魔王軍と同じ扱いであるらしいということ。
そして先程も伝えた通り、勇者として遇しなければならないところ、娼婦にする、という話になってしまったので其処にいる第二王子が止めたこと。
「今のあなたには選択権があります。勇者として強くなる選択をしても良いし、関係のない戦争に首を突っ込みたくない、というのならば私が責任を持って安全な場所に逃します。」
そもそもこの戦争に勇者など必要ない。というのが私や第二王子の考えだ。
関係のない者を巻き込むには、余りにも身勝手な戦争だからだ。
「にゃるほど?勇者として修行みたいなのしたら、魔法とか使えるようになる?」
「確証はありませんが、他二人の勇者様も使えると聞きましたし恐らくは。」
「え、じゃあ勇者やる!」
この子はちゃんと話を聞いていたのだろうか。
心配になる。
「だって魔法だよ?あーし達のいた所では使えなかったから使ってみたかったんだよねー。山田と結城は先に修行始めてるっぽいしー。二人とも楽しそうだしさ。」
「本当に良いのですか?そんな理由で決めてしまって。」
「良いの良いの。あーし馬鹿だし戦争のじじょーとか難しいことは分からないもん。」
楽しみ~、と笑う彼女に私としても戸惑いを隠せない。
本当に分かっているのだろうか。
心の中で再度そう思うのだった。
20
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる