金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

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えーっと、つまりそれって?

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少女は私達に連れてこられて、戸惑ったような顔をしていた。




「ここどこ?あんた達誰ー?全然意味分かんないんだけど。」



イライラとしたような声を出し足を揺する彼女に、これは怒るよなと半ば諦めた気持ちで向き合う。



「ごめんなさい。驚きましたよね。ここは第二王子殿下の宮殿です。あなたは先程、娼婦にさせられそうだったのですが、殿下が止めてくださいました。」


「しょーふ?しょーふってふーぞく嬢のことだっけ?あーし、歴史とかあんま詳しくないから分かんないや。」


「歴史...は関係ないとは思います。」




思わず天を仰いだ。

ちょっと頭が弱いどころじゃなく、かなり弱いのかも知れない。

何だろう。話が通じるとか通じないとか以前の問題のような。



「ちょっと良く分からないんだけどさ、あーしはそもそも何でこの国?世界?に呼ばれたの?なんか勇者様~!って崇められたと思ったら、すぐに狭い部屋に閉じ込められたんだけどー。それで何でしょーふになる話になるのかさっぱり意味不明。」



勇者と崇められたのは一緒に来た他二人だろう。この国の人々は何故か女は勇者でないと思っているし。


困ったと第二王子を見ると、ニヤニヤしながら紅茶を嗜んでいた。


少女の対応は私に任せるつもりらしい。


自分で連れてきておいて、と思わなくもないが、放って置くわけにもいかないので仕方ない。




「貴女は勇者として召還されたのですが...女性だったので勇者として見なされなかったみたいで。」


「は?ちょっと待って。」



少女が考え込むようにして、下を向く。

ショックを受けているのだろうと思っていたが、すぐに私の瞳を真っ直ぐ見て言った。



「えーっと、つまりそれって?ダンソンジョヒってやつ?私が女だから勇者として認められなかったってこと?」


「簡単に言えばそういうことですね。」


「何それ、ふるーい。」



続けて遅れてる~と言った彼女だが、さして気にしていなさそうだ。

どちらかというと他人事と言うか。なんと言うか。



「っていうか、私はしょーふだけど、山田と結城は勇者ってこと??何それ。うけるんだけど。」



似合わねーと、ゲラゲラと笑い出す。


ヤマダ、ユウキというのはもう二人の勇者だ。

噂で聞いた名前がそんな感じだったと記憶している。



「他のお二人とは知り合いなのですか?」


「んー?そだね。クラスメイトってやつかな。」


「クラスメイト。」


「そー。パッとしない奴らなんだけどねー、話すと面白いんだー。」



クラスメイトとは何だろうとは思うが、質問するより前に彼女が話し始めてしまったので後で聞くことにする。



「他のクラスメイトには暗いって嫌われてるんだけどさ、明るい奴らばっかじゃないのって普通じゃん?あーしはそういう奴らがいても良いかなーと思ってたりして。」


「成る程。その辺りのお話は後で聞きますね。話を戻しますと.....あなたが殆んどこの世界のことが分かってないということは分かりました。」


「あはは。あーし馬鹿だからねえ。」



説明されても覚えらんないしー。まあ説明されてないけど。とのことで1から説明を始める。


勇者とは、この世界を魔王から救うために呼ばれる伝説の存在であるということ。

現在魔王というものは存在していないが、国王陛下から見れば敵国である国は魔王軍と同じ扱いであるらしいということ。


そして先程も伝えた通り、勇者として遇しなければならないところ、娼婦にする、という話になってしまったので其処にいる第二王子が止めたこと。



「今のあなたには選択権があります。勇者として強くなる選択をしても良いし、関係のない戦争に首を突っ込みたくない、というのならば私が責任を持って安全な場所に逃します。」



そもそもこの戦争に勇者など必要ない。というのが私や第二王子の考えだ。

関係のない者を巻き込むには、余りにも身勝手な戦争だからだ。



「にゃるほど?勇者として修行みたいなのしたら、魔法とか使えるようになる?」


「確証はありませんが、他二人の勇者様も使えると聞きましたし恐らくは。」


「え、じゃあ勇者やる!」



この子はちゃんと話を聞いていたのだろうか。

心配になる。



「だって魔法だよ?あーし達のいた所では使えなかったから使ってみたかったんだよねー。山田と結城は先に修行始めてるっぽいしー。二人とも楽しそうだしさ。」


「本当に良いのですか?そんな理由で決めてしまって。」


「良いの良いの。あーし馬鹿だし戦争のじじょーとか難しいことは分からないもん。」



楽しみ~、と笑う彼女に私としても戸惑いを隠せない。

本当に分かっているのだろうか。

心の中で再度そう思うのだった。



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