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苦言と呑気な女勇者
しおりを挟むさて、困ったことに宮廷に連れてこられてしまった。
何故か晒し者のようになっているやたらと短いスカートを履いている珍妙な服装の女が、国王を前にしても礼もせずに立ち呆け、きょろきょろと周囲を見回している。
公娼の候補、というだけあって見た目はかなり良い方だと思う。頭に付いた大きなリボンの方に目がいってしまい、中々顔にまで意識がいかないが。
この辺りでは見られない異国の雰囲気を持っているのも貴族が好きそうな感じだ。
それをイライラとしたように見つめている国王と周囲の貴族だが、その中に下卑た視線が混ざっているのが分かる。
これから娼婦に落として好き勝手に扱おうというのだから、彼らは今、さぞかし楽しい妄想をしていることだろう。
「ミキ・ホシヤマ。」
この国では余り聞き覚えの無い音の名前を陛下が言った。
サヨの国の名前に近いような気もするが、少し違うだろうか。
それが、キョロキョロしている少女の名前だというのは誰に聞かずとも分かった。
「なんですかー?王様ー?」
ちょっと、いやかなり頭の弱そうな間延びした声が響いた。気だるそうな声が余計にそう感じさせるのだろうか。
「国王陛下と呼べといつも言ってるだろう!」
陛下の隣にいた大臣が顔を赤くして怒鳴る。
女に怒鳴るのはどうかと思うが、彼女も彼女で余り気にした様子はない。
「だってー、国王陛下?とかちょっとベロ噛みそうだしー。長いし呼びにくいんですもんー。」
少し傷んだ明るいブラウンの髪の毛を弄りながら、全く悪いとは思ってないことが伝わってくるような口調で言う。
「はぁ。まあ良い。それでミキ・ホシヤマ。お前を公娼とすることが決定した。」
国王陛下がそう言うと、周囲の貴族から嘲笑が涌く。
「こーしょー?なにそれ。」
少女は話が全く分かっていないのか、こてんと首を傾げた。
前もって何の情報も与えられてないことが見て取れた。
「陛下。お言葉ですが。」
そこで割って入るのが第二王子だ。
「来ていたのか。」
面倒臭そうにする陛下に、第二王子も引かずに意見を述べる。
「いきなり公娼にするのは早計かと。女であるということが理由ならば、戦力にならないということの証明にもならないと思います。事実、此処にいる金色の踊り子は此度の戦争で誰よりも戦果を上げました。」
私に視線が集まる。
女の癖に、という侮蔑の混ざった視線が突き刺さった。
「ほう。だから、この女も強くなる可能性があると?」
「はい。」
「成る程。第二王子の意見も一理あるな。」
大して興味もなさそうに言う。陛下にとっては少女が公娼になろうと、そうでなくてもどうでも良い事なのだろう。
「彼女がいなくても我が王国は負けないとは思いますが、戦力は多いに越したことはないのでは?」
「ふむ。そうか。まあ公娼はもう四人もいるしな。これ以上増やす意味も無いか.....良いだろう。しかしお前が面倒を見るならな。」
「分かりました。私がしっかりと訓練しましょう。」
そういうことで、少女は私達と一緒に第二王子の宮殿に向かうことになったのだった。
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