金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

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合流

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戦場へと向かう当日、私達は早朝に集まった。



戦場は王都からは遠く、今日出発しても時間が掛かってしまう。



転移魔法で行けるところまでは行けるが、それでもそこから馬を駆って4日程の距離だ。それでも飛翔魔法で短縮していこうかとは思う。



師匠との修行のお陰で、私の魔力量も上がっていた。三人、二日間程運んだだけでは尽きない。



急ぎ向かいたいので、というのは前もって二人には告げておいた。

二人とも私がそんなに急いでいるとはと驚いていたが了承してくれる。





「転移」





私が行けるなかで一番近い街付近に着いた。



息つく間もなくすぐに飛翔魔法で三人を浮かべる。コントロールも良好。この分なら問題なく行けるだろう。



たまに魔物が飛んでくることもあったが、特に問題なく撃退する。



飛んで行っても二日は掛かってしまう距離だ。仮眠や食事の為に所々で休憩を挟む。

夜になり、飛ぶと危険ということで





「行きたくない!!!」





マスターがここに来て駄々をこね始めた。

そんなの私だって本当は行きたくない。

ロア君も困ったようにマスターを見つめていた。





「行きたくないよ~。踊り子ぴょん。」





「そう言われましても。それなら行かなければとも言えませんし。」





国王の決定に逆らえば、良くて死刑。悪くて一族郎党関係者全員が捕らえられる。

捕らえられた後は酷い拷問を受けるのだとか。



マスターが拒否すれば私も巻き込まれる可能性が高い。勘弁してほしいところだ。





「分かってる。分かってるよ。」





「マスターは戦争とか好きそうだと思っていました。」





ロア君が言うが、マスターは首を振る。





「そりゃ、私は戦闘狂だし強い人と戦うのは大好きだよ。それでもさ戦争ってそういうのじゃないじゃない。多分。出たことないから分からないけどさ。」





「まあ、気持ちは分かりますね。」







戦争となれば、場合によっては戦意消失した敵を殺さなければいけないこともあるだろう。







「私はさ、人殺してして楽しむような血狂いじゃないんだよ。」







溜め息と共に吐き出した言葉が、私にも重くのしかかる。

私は自分の復讐や第二王子のことばかり考えていたが、人を殺すという実感は余り沸いていなかった。

かつて、追手から逃げる生活を送っていたときに、私は沢山の人を殺した。



あの時は生きることに必死で、人を殺したショックなんて感じる余地も無かったが、今はどうだろう。







「でも、仕方ないよね。王家に忠誠心なんて持ってないけど、私だってまだ死にたくないし、何よりもギルドの皆を守りたいもん。」







マスターが空に手を伸ばす。暫くすると







「ごめん!ちょっとめんどくさくなってた!話してスッキリした!」







踊り子ぴょん困っちゃった~?と茶化す彼女はいつものマスターだ。





「マスターが面倒臭くない時はありませんよ。」







ロア君の言葉に三人で見つめ合って笑う。







ーーーーー









第二王子のいる陣営が見えてきた。



陣営の見回り役が私達を見て、指差し何かを叫んでいる。

周囲のものがそれに合わせて空を見上げて武器を構え始めた。





「おっとおっと。踊り子ぴょん。何だか敵認定されるような感じがするよ?」





呑気な声に、





「そういえば飛んでいくって伝えてないですね。」





と思い出す。





「本気で言ってます?狙われてますけど!」





顔を青くしたロア君が叫んだ。





取り敢えずどこに降りようか考えながらも障壁魔法を展開する。





ビュンッ!と矢が飛んできて、障壁に弾かれて明後日の方向に落ちていく。





ゆっくり降り立つと、固い表情の兵士達が私を見て、





「明らかに怪しいやつだ。」





と騒ぎだす。

確かに金色の仮面は知らない人から見たらかなり怪しい。



どう説明しようか。話を聞いて貰えなさそうな雰囲気に、抵抗するつもりはないと両手を挙げてみるも効果はない。





「リル様。お待ちしておりました。」





そう群衆を掻き分けて来た男に安堵する。



第二王子の護衛の男ーーベンだ。

少々呆れたような表情をしているも、私に対して下げなくても良い頭を下げて丁寧に接してくれる。



私のことをリルと呼ぶのは、良く分かっているなと思う。







「踊り子ぴょん、顔見知り?踊り子ぴょんの名前ってリルじゃなかったっけ。」





「ちょっと古い知り合いでして。」





そう言えば、ふーん、と言いつつもそれ以上は聞いてこなかった。





「リル様。それにSランク冒険者のお二方。殿下がお待ちです。」





ベンに案内されて通された天幕には、笑顔を張り付けた第二王子がいた。





「良く来てくれた。長旅で疲れているだろうから今日は身体を休めてくれ。ベン、天幕に案内してやれ。」







さっと挨拶が終わって、ベンについて行こうとすると、





「そこの金色の仮面の変人は残れ。」





と言われて取り残される。ロア君が心配そうにしているのを手を振って、大丈夫だと伝える。





「随分な言い様ですね。殿下。....それよりも、良かったのですか?私と殿下が既知であるということを知られてしまいましたが。」





「お前が悪いんだろう。いきなり空から来るやつがあるか。......皆に知られることはもう気にしなくて良い。寧ろ、お前は俺の味方だと印象付けて欲しいくらいだ。」





「今後は金色の踊り子、リルとしてなら隠さなくても良いと。承知しました。」





戦争が始まったので状況も変わったのだろう。それ以上は聞く必要も無い。

Sランク冒険者と仲良くしているように見えた方が良い、と王子が考えたのだろう。







「他のSランク冒険者達は?」





「....お前達が一番最初だ。合流は明日以降になると連絡が来ている。」





私は他の街にいるSランク冒険者には会ったことがない。どんな人がいるのだろう。





「現状の戦況を伝えるが良いか?」





その言葉に、私は頷いたのだった。

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