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始まり2

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ヨウラドウからすぐに転移を行い、師匠の元に向かう。カーラ師の住む小屋の扉をノックするも反応がなく、開けると置き手紙が置かれていた。



『暫く留守にする。いつ戻るかは分からない。留守の間この家は好きに使って良い。連絡は取れない。』



内容を確認し、小屋を出てすぐにアルムブルクに転移する。

ルイ達に戦が終るまでは村に帰るなと伝えなければならない。


子ども達を探しギルドに入ると呑気そうな声に引き留められる。



「踊り子ぴょん?どうしたのそんなに急いで。」



「マスター。」



私よりも背の高い彼女を見上げ、ほっと息を吐く。奥で話したいと言い、マスターの部屋へと案内される。



「私もね、踊り子ぴょん来ないかな~って待ってたんだけど。」



にこりとする彼女にいつもと違うものを感じて居ずまいを正した。



「マスター?」



「その様子だと宣戦布告を受けたのは知ってるみたいだね。そんでね国王陛下から通達を受けたの。」



すっと差し出された紙。


この辺りでは見かけないような上等なそれに書かれた文章を見て、私は息を呑んだ。



『Sランク冒険者は今回の戦に協力すべし。』



「困ったよねー。今まで不文律で冒険者は戦への参戦が免除されてたって言うのにさ。」



どうしようかねー。と弱ったように頭をかくマスターに、そう言われましても。と見つめ返す。


先程第二王子からは戦場には行かなくて良いと言われたのにこれである。きっとどこかの派閥の独断で国王に打診したことが通ったのだとは思うが、第二王子には何も知らされていなかったのだろう。

後で連絡を入れることにする。


ちなみに小さな字で、騎士爵を授けるから王都に来いとも書いてあった。

騎士爵......ナイトというのは世襲のない準貴族の扱いになる。

Sランク冒険者は一人で一騎当千の戦力を有する者もいるというのに、一番下に仕方ないから入れてやるという扱いになるとは。光栄に思えと言わんばかりの対応に腹立たしくも思う。


しかしこれを無視すれば国家反逆の疑いをかけるとも書いてあるので行かない訳にもいかない。


何ともきな臭い話である。

この感じだと、帝国から宣戦布告を受けたというのも嘘ではないかと思う。



「まあどうしようも出来ないよねー。王都にも行くしかないよねー。そしたらさ、ロア君にも声掛けとくから明日王都に連れていって欲しいんだけど大丈夫そ?」



「明日ですか。大丈夫かと思われますが。」



ロア君もこの一年でSランクに昇級していた。


10代の子どもが最速でSランクに上がったと数ヵ月前まではかなり話題になっていたが、着実に実力を付けた結果なので文句を言う者は誰もいなかった。



「私も行くのかなこれ。業務の引き継ぎとかどうすんのかなー本当頭痛いや。」




マスターも困ってはいるが、戦場に行くことに関しては仕方ないと諦めているようで、行かないと行かないで大変なことになりそうだしねーっといつもより少し固い口調で言っていた。


冒険者は対魔物の専門家だ。

盗賊の討伐にも向かうことはあるが、基本それは衛兵の仕事でその手伝いという体を取る。


対人戦でもそれなりに戦うことは出来るが、出来れば戦には出たくないというのが全冒険者の意見だろう。


またSランク冒険者がいないことによる穴は大きい。


町がドラゴンなどのSランク相当の魔物に襲われた時に対応出来る者が減ってしまうということになる。


果たして国王陛下はどのように捉えているのだろう。


マスターに関してはギルド関係の業務引き継ぎもある。急に言われても困ることも多い。




「取り敢えず私急ぐから、踊り子ぴょんも自分の準備してねー」



マスターはよろよろとした足取りでどこかに向かっていった。



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