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師との出会い

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アルムブルクに戻ると、既にギルドは祭り騒ぎだった。



どうして私が最深部に到着したことを知っているのか、マスターに聞いてみると、





「だって踊り子ぴょんの肩にこれが付いてるもん。」





と肩に付いていた桃色の花びらを取ってニコリと笑った。笑った顔はかなり美人だ。

動くと残念だけど。





「どうだった?花しぐれは。」





耳元で囁かれた声に苦笑を浮かべる。





「マスターが行きたくないという理由は分かりました。」





他人に記憶を覗かれるのは良い気分じゃない。



そしてダンジョンを出た後に気が付いたのだが、魔力をごっそり失っていた。

記憶を覗かれるとこちらの魔力を消費するらしい。

私もかなり疲労感を感じたが、魔力が私よりも少ないマスターならば倒れてもおかしくない。





「そうそう。行くのは良いんだけど、ものすんごい疲れるんだよねー。」





あははーと笑うマスターもため息を付いていた。



そして、私は晴れてSランク冒険者となったのである。













ーーーーー







そうしてまた数ヶ月の時が経過した。



変わらず仕事をしつつ、たまに村やアルムブルクに顔を出している。第二王子とは他派閥に悟られぬよう、こっそり連絡を取り合っていた。



今はSランク冒険者としての依頼を受けているところだ。



ランクが上がってからというもの、冒険者としての報酬はかなり上がった。



その分、断れない依頼やかなり危険な依頼も増えたのだが、今の所大きな怪我はしてない。



無理と思った時には素直に今までと同じくマスターや、最近またランクの上がったロア君を前衛に連れていっている。



今日は珍しく一人での依頼。



Sランクの討伐依頼だったが幸い相性は悪くなく、難なく討伐が終了した。







解体終了後、何となく咲いている花を見てボーとしている時だった。



突然背後からギャーという音が聞こえ、振り返ると大きな鴉が現れる。



ノアールコルヴォという名のSランク相当の魔物で、闇属性魔法を使い空から襲撃してくる為討伐が難しい。



また独自魔法により魔法に対する防御力が高く、私では苦戦する相手だった。



魔力探知は怠っていなかった。しかし気配を隠すのが上手い相手だ。ここまで接近を許してしまうとは。



バサッと空を旋回する様子を伺ったときに足が五本あるのが見え、冷や汗が垂れる。



この鴉型の魔物は足が多くなるほど強くなるという。



五本だとノワールコルヴォの中でもかなり上位の個体で、強さで言えば以前マスターと討伐したドラゴンの上をいく。



かなり困った状況だ。



一人では倒せないので出来るだけ逃げたい。



しかし瞬間移動魔法では遠くに行くことが出来ないし、転移魔法は使用するまでの時間が長過ぎる。

何よりこの状況で転移先を呑気にイメージするのは難しい。



そんなことを考えている間に、地面に魔力が集まる。



飛んで回避するとそこに大きな黒い針のような物が突き刺さっていた。

少しでも反応が遅ければ串刺しになっていただろう。



いやいや。これ死ぬって。



一先ず身体強化を掛け、駄目元で中級光魔法を放ってみるが結界のようなものに弾かれる。



本当に相性が悪い。最悪だ。



この辺りにノワールコルヴォの目撃情報が無いからと警戒を怠った私のせいでもあるのだが。



マスターか、せめてロア君がいればと思うが後悔先に立たず。



此処は瞬間移動魔法を使用しなければアルムブルクから二日ほどかかる距離の場所で、ロア君やマスターが通り掛かると期待する方が間違っている。



短剣を握り、地面を蹴って魔法で飛翔。



そのままノワールコルヴォに向かい突っ込もうとしたところで、翼で吹き飛ばされる。



「がはっ!」



地面に叩きつけられ、口の中に知の味が滲む。



怯んでる時間は無く悲鳴を上げる身体にムチ打ち、飛んで向かって来る魔法を回避した。



あばら骨が折れているのだろうか。



痛いような気がする。



回復魔法を使おうとするも、その隙を与えてくれるような敵ではなく、次々と放たれる魔法を回避するので精一杯だ。



どうしよう。



考えるも、良い策は思い付かない。



障壁で魔法を防ぎ、隙を見て回復魔法を使おうとしたところを猛スピードで突っ込んでこられて、腹部に嘴が突き刺さった。



肉を抉られ血がどくどくと流れ出る。



焼けるような痛みに耐え切れなくなり、思わず膝を付いた。





死ぬのだろうか。



今まで魔法ばかりに頼って、録に身体を鍛えていなかった罰だ。



やっぱりSランクになったとはいえ、マスターは格が違ったのだなと思う。



自分から溢れる血を見て、死にたくないと叫びたくなった。



今死んだら何のためにしたくもない仕事をしてきたと言うのか。



何のために。



生き地獄のような日々を生きていたと言うのだろうか。



声にならない呻き声のような声が口から漏れた。



気付くと頬が濡れていることに気が付いた。



鴉は嬉しそうに私に向けて嘴を開けていた。



食べられる。そう思った時。





周囲が眩しく光り輝いたのと同時に、ザクッと何かを着る音が聞こえた。





ドサッ。





目の前に落ちてきた大きな鴉の顔に、小さく悲鳴を上げた。



頭が混乱して、思考がまとまらない。



一体、何があったというのだろう。



分かるのは死にかけたけど生きてる。という事実だけだった。





「............大丈夫?」





声を掛けられるまで、そこにいた人物には気が付かなかった。



恐る恐る声の方を見ると、鴉の頭の上に緑色の長い髪を靡かせた女が立っていた。



返り血だろう。



真っ赤に染まっていたが、それでもその美しさは損なわれることはない。



そしてその女はこの国では見ない特徴を持っていた。











「エ、ルフ........?」











尖った耳を見てそれだけ何とか絞り出すと私の意識は落ちた。













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