37 / 136
ラダの仕事1
しおりを挟むラダ視点の話です。
アルファポリス限定公開です!
少し前の時系列の話になります。
ーーーーーー
「ラフィさん。昇級おめでとう。」
アルムブルクで昇給試験を受けたわたくしに、試験管の先輩冒険者が言った。
「ありがとうございます!とても嬉しいですわ!」
あらあら。流石わたくし。
この短期間でCランクにまで上がってしまいましたわ。
お姉様にご報告したいのですが、残念ながらお姉様は今この街にはいらっしゃらない。
早くお会いしたい。そう思うが、連絡を取るとなるとお忙しいお姉様の負担になってしまうのではと思い遠慮してしまう。
お姉様が大好きなわたくしにとって、お姉様と会えない日々は苦痛なものだった。
毎日毎日、好きでもない殿方に好き勝手に呼ばれては抱かれる日々。
お姉様のことを思い出して何とか耐えられた。
元々、わたくしがしたくてしている仕事ではなく、強制して行わされていることなので、殊更に苦しい。
今日もアルムブルクを出たらお客様の所に向かわないといけない。
深い、深い溜め息が出てしまう。
※※※※※※※※※※
「ラダ。やっと来たか。」
お客様との待ち合わせの宿に入ると、低い声が響いた。思わず身体がビクリ、と跳ねる。
彼はブライ侯爵という方で、黒い噂の多い方。
わたくしのことを何故か気に入ってくれ、呼ばれることが多いのは有難いのだが、機嫌が悪い時に当たってしまうと大変だ。
酒を飲んでいるのか既に顔が赤い。でっぷりと太ったブライ侯爵がわたくしを見て不機嫌そうに呟いた。
「遅い。」
ガンッと机を蹴る侯爵様に、慌てて地面に額を擦り付けて謝る。
「侯爵様をお待たせしてしまい大変申し訳ありません。」
本当は明日の約束だったのを、勝手に早めに宿に入っていたので本当なら謝る必要はないのだけれど、わたくしはそもそもの身分が低いので貴族様を怒らせれば謝るしかない。
「おい、何でまだ服を着てる。本当に謝ってるのか?誠意が見られないなあ。」
頭を踏みつけられ、グリグリと圧をかけられる。
このような仕打はいつものことだ。慣れている。だから大丈夫。自分に言い聞かせて気持ちを落ち着ける。
「早く脱げ。」
黙って脱ぎ始めると、
「違うだろ。」
と頬を叩かれる。
痛い。
「ちゃんと私に見えるように脱ぎなさい。」
こういう時は何も考えないで大人しく言うことを聞いた方が良いということを経験で分かっていた。
私はお姉様とは違う。
エルフ混じり、奴隷身分の出身ということをお客様が知っているから、扱いも最下層に対するそれだ。
侯爵様に見えるように正面に立って服を脱ぎ始める。
「全く、でかく育ちやがって。」
わたくしの胸を見て舌打ちする。そう言われても大きくしたくてしたわけではないのだから困ってしまう。
お姉様は、おっぱいが嫌いな殿方はいないと言っていたけれど、本当かしら。
もしそうなのなら、どうしてこの方はこんなにイライラしているのか。
「グロイスター公のせいでイライラしてるんだ。早くこっちに来い。」
恐る恐る近付くと、胸を鷲掴みにされ、乱暴に揉まれる。そのまま強く噛まれ痛みに顔を歪める。涙が目に溜まっているのを感じる。
痛みと不快感と恐怖で脚が震えた。
グロイスター公なんて人、わたくしは知らない。
貴族様の事情に迂闊に首を突っ込めば処刑の可能性もある。わたくしの命の軽さは、わたくしが一番分かってる。
関係の無いことは聞かなかったことにする方が良い。
「泣くんじゃない。面倒臭い。」
「はい。ご、ごめんなさっ!」
髪を引っ張られ、ますます涙が浮かぶ。
幼い頃から染み付いた恐怖心が、わたくしを襲った。
怖い。
もうなにもしたくない。
出来ることなら早く死にたい。
お姉様。お姉様。
お姉様はどうしてこのような仕打ちに耐えることが出来るのですか。
わたくしはもう苦しいのです。
「ふん。詰まらない女だ。」
それなら呼ばないでくれれば良いのに。
何故何度も呼んでは酷い仕打をするのだろう。
わたくしは何もしてないのに。
3
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる