28 / 136
リリスとしての仕事 第二王子の場合2
しおりを挟む「××××。」
かつての愛称で呼ばれ、思わず睨み付けた。
「殿下、私はリリスです。そのような名前ではありません。」
どこで誰が聞いているか分からない城内で、いくら部屋に二人きりとは言え迂闊にかつての名前を呼ばれても困る。
「すまない。昔の知り合いに似ているものだから。」
その名前の少女は死んだ。
民衆による反乱の混乱の最中、刺客によって殺されたのだ。
再会した時、第二王子とはそのように認識のすり合わせを行っていた。
リリスやリルはその人物とは無関係。
そうでなくてはならない。
「いいえ。私こそ失礼致しました。......それで此度はどのような要件でお呼びに?」
呼ばれて来たのだ。
何か用事があるのだろう。そう思って聞くと、眉間に皺を寄せた彼が、カツカツと靴音を立てて近付いてくる。
「俺は用事が無ければ娼婦一人呼ぶことも出来ないのか?」
責められるような口調で言われ、頭を下げる。
「過ぎたことを申しました。」
冷たい視線に背筋が凍る。
子ども時代の彼は優しい少年だった。
かつてはこのように人を威圧すること等無かった彼が変わってしまったのは、数年前に戦の前線に送られてからだろうか。
お父様が領内の小競り合いを片付ける間、宮廷における彼の味方が何故か減っていた。
第二王子の派閥と言えば当時それなりに大きいものであったのに、だ。
半分程が自分の領地で何かしらの問題が起こり、その対応に当たる間、第二王子が戦の前線へ出ることが決まってしまったのだ。
表向きの理由は、『王子に戦争時での指揮を経験させる為』である。
それを言えば当時とうに成人していた第一王子や王弟グロイスター公が適任であると目されており、そもそも前線ではなく後方にて指揮を取るという話であったのが、どういうわけかその時の会議では『第二王子を前線に』と推す声が多かったのだという。
第二王子は会議の後、すぐに前線へと派遣された。
私が領内の反乱を収めようと、助力を請いに行った時には既に出兵していた後で、彼は戦の前線に向かってしまっていた。
派閥最大のアドラー公爵家が潰えた上に、派閥内の半数以上の貴族の領内での異変による弱体化、主格の第二王子は前線へと向かい、いつ帰ってくるかも分からぬ身。残った数少ない派閥の貴族は、ある者は王子を追いかけて前線へと向かい、ある者は日和見を決め込み、ある者は他派閥へと寝返った。
二年後に彼が帰ってきた時には既に、第二王子陣営は風前の灯と化して、宮廷に彼の居場所は無くなっていた。
そして数年後、第二王子と再会した時には、彼は以前の面影が少なく、冷たい瞳を持つ青年になっていた。
惜しむらくは父の死だろう。
彼が生きてさえいればこのような事態にはなっていなかった筈だ。
『アドラー公さえ生きていれば。』
再会した彼が、力無く言った言葉を思い出す。
「リリス。」
呼ばれ、伏せていた顔を上げた。
コバルトブルーの瞳が此方を見据えていた。
髪を掬われ口付けをされる。
だけどそこに何の感情もないのを知っている。
あるとすれば、それは古い顔馴染みに対する情だ。私に金が必要なことを知っているからたまに呼んでくれているに他ならない。
一瞬紳士的にも見える彼の振る舞いは、しかしそこに何の感情も伴わないことを知ると空虚に感じた。
「此処ではお辞めください。」
いつ人が来るとも知れない場所だ。
こんな所で出来るわけがない。
それに、せめて水浴びがしたい。
伝えるが、
「関係ない。」
と却下されてしまった。
そのまま唇を塞がれ、机にぶつかる。上に置かれた書類が無造作に散らばっていった。
拾わなければ、と伸ばした手を抑えられる。
いきなり始まったな、と思うがいつもの事なので頭を切り替える。
まだ私はこの関係には慣れていない。彼とは幼馴染みで、小さい頃はお兄様と呼んでいた相手だ。
いつか結婚するかもとは思っていたが、子どもがどうやって出来るかも知らなかった私は、こんなことをするなんて思ってもみなかった。
するり、と冷たい手が私が履いていたスカートの中に入り込んでくる。
チュニックの下に着ているシュミューズが太もも辺りでヒラヒラと所在なげに動くのを感じた。
スーッと脚の付け根を触られて、ビクリと身体が反応してしまう。
そのまま秘花を触られるが、正直いつもの香油も使ってないのに、まだ濡れている訳はない。
彼の手を胸に運び揉んで貰うように促す。
始まってしまったものは仕方ないが、このまま挿入されたのでは痛くて仕方ない。
何とかしなくては。
たまに気合いで濡らせみたいなことを言ってくる男性がいるが、気合いとかいう問題ではないので無理な要求は止めて欲しい。
ろくに触れ合ってもないのに無茶だ。
自分で服をはだけさせ、彼のトラウザーズ(ゆったりとしたズボン)をずらし、股間を露出させ跪き口に含んだ。
はだけた服の隙間から滑り込んできた手の平が、優しく乳頭を転がす。
「んっ」
鼻にかかったような声が漏れるが、此処は執務室であったと思い出し、声を出さないように細心の注意を払う。
水音だけが部屋に響き、たまに身体をくねさせては反応を楽しんで貰う。
「もう良い」
と口から引き抜かれ、立たされて机に上半身を付けさせられる。
そのまま後ろから挿入される。
彼の物は少し大きいので、メリメリと食い込みながら入ってきて苦しい。
深く息を吸って耐える。
少し時間が経ち馴染んでくると、彼が動き始めた。
淡々とした動きだが、中を抉られるような感覚に、声が出そうになるのを手で抑えて我慢する。
時折、近くを通る使用人の声や衣擦れの音に余計に緊張した。
向こうからしても何をしているかは分かってはいるだろうが、それでも出来るだけバレたくはない。
机の横にあるカウチの上に移動させられて、くるりと向きを変えて仰向けにされ再び挿入される。
息が漏れて彼の耳にかかる。
「殿下。リリス様。紅茶をお持ちしましたが。」
先程出ていった執事が戻ってきてお茶の用意が出来たと告げる。
今入ってこられては困る。
そう思って第二王子を見上げるが、何を考えているのか分からない瞳に見つめ返され困惑する。
口を読めば、『お前が答えろ。』との事だった。
この野郎くそ野郎とは思うが、このままでは入って来てしまう。仕方なしに返事をする。
「ありがとうっ、ございっますっ!........(ちょっと動かないで貰えませんか。)そこにっ!置いておいてくださいっ!」
答える間も案の定というか、動きを止めてくれないので、変な声が出ないようにした結果、妙に声が上ずってしまった。
そこに、と言ってもそとは廊下だ。
完全に気が付かれたと思って、第二王子を睨むが気にする様子もない。
「畏まりました。」
良く出来た執事で、こちらの様子に触れること無く去っていってくれた。
「ほら。誰もいなくなった。」
だからもう大丈夫だろうと激しく動かれる。首を振って駄目だとアピールしてみるが効果は薄かった。
羞恥に涙が浮かんで来るが、乳頭を摘ままれ二度三度と達してしまい、小さく声が漏れるのを耐えることが出来ない。
頭がフワフワとしてきたところで、彼が出して終わった。
引き抜かれると、ドロリと白濁液が垂れてくる。
流石に舐めて掃除しろとは言われずに、手触りの良いハンカチを貰う。
「それで拭け、」
服を整えながら言われるが、流石に絹で拭くようなものではないことは分かる。
結局ハンカチは返し、マジックボックスからガーゼを出して拭いた。
衣服を整え、紅茶を取りに行き二人で休憩する。
無言の空気が流れるが、気まずさはなかった。
王子は紅茶を飲んだ後、少し寝ると言ってそのままカウチで寝てしまったので私は散らばった書類の片付けや掃除などをして過ごした。
私は王子の寝顔を見て、この表情は小さい頃と余り変わってないなと思いながら見つめていた。
15
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。
アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。
それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。
するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。
それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき…
遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。
……とまぁ、ここまでは良くある話。
僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき…
遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。
「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」
それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。
なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…?
2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。
皆様お陰です、有り難う御座います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる