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リリスとしての仕事 第二王子の場合2
しおりを挟む「××××。」
かつての愛称で呼ばれ、思わず睨み付けた。
「殿下、私はリリスです。そのような名前ではありません。」
どこで誰が聞いているか分からない城内で、いくら部屋に二人きりとは言え迂闊にかつての名前を呼ばれても困る。
「すまない。昔の知り合いに似ているものだから。」
その名前の少女は死んだ。
民衆による反乱の混乱の最中、刺客によって殺されたのだ。
再会した時、第二王子とはそのように認識のすり合わせを行っていた。
リリスやリルはその人物とは無関係。
そうでなくてはならない。
「いいえ。私こそ失礼致しました。......それで此度はどのような要件でお呼びに?」
呼ばれて来たのだ。
何か用事があるのだろう。そう思って聞くと、眉間に皺を寄せた彼が、カツカツと靴音を立てて近付いてくる。
「俺は用事が無ければ娼婦一人呼ぶことも出来ないのか?」
責められるような口調で言われ、頭を下げる。
「過ぎたことを申しました。」
冷たい視線に背筋が凍る。
子ども時代の彼は優しい少年だった。
かつてはこのように人を威圧すること等無かった彼が変わってしまったのは、数年前に戦の前線に送られてからだろうか。
お父様が領内の小競り合いを片付ける間、宮廷における彼の味方が何故か減っていた。
第二王子の派閥と言えば当時それなりに大きいものであったのに、だ。
半分程が自分の領地で何かしらの問題が起こり、その対応に当たる間、第二王子が戦の前線へ出ることが決まってしまったのだ。
表向きの理由は、『王子に戦争時での指揮を経験させる為』である。
それを言えば当時とうに成人していた第一王子や王弟グロイスター公が適任であると目されており、そもそも前線ではなく後方にて指揮を取るという話であったのが、どういうわけかその時の会議では『第二王子を前線に』と推す声が多かったのだという。
第二王子は会議の後、すぐに前線へと派遣された。
私が領内の反乱を収めようと、助力を請いに行った時には既に出兵していた後で、彼は戦の前線に向かってしまっていた。
派閥最大のアドラー公爵家が潰えた上に、派閥内の半数以上の貴族の領内での異変による弱体化、主格の第二王子は前線へと向かい、いつ帰ってくるかも分からぬ身。残った数少ない派閥の貴族は、ある者は王子を追いかけて前線へと向かい、ある者は日和見を決め込み、ある者は他派閥へと寝返った。
二年後に彼が帰ってきた時には既に、第二王子陣営は風前の灯と化して、宮廷に彼の居場所は無くなっていた。
そして数年後、第二王子と再会した時には、彼は以前の面影が少なく、冷たい瞳を持つ青年になっていた。
惜しむらくは父の死だろう。
彼が生きてさえいればこのような事態にはなっていなかった筈だ。
『アドラー公さえ生きていれば。』
再会した彼が、力無く言った言葉を思い出す。
「リリス。」
呼ばれ、伏せていた顔を上げた。
コバルトブルーの瞳が此方を見据えていた。
髪を掬われ口付けをされる。
だけどそこに何の感情もないのを知っている。
あるとすれば、それは古い顔馴染みに対する情だ。私に金が必要なことを知っているからたまに呼んでくれているに他ならない。
一瞬紳士的にも見える彼の振る舞いは、しかしそこに何の感情も伴わないことを知ると空虚に感じた。
「此処ではお辞めください。」
いつ人が来るとも知れない場所だ。
こんな所で出来るわけがない。
それに、せめて水浴びがしたい。
伝えるが、
「関係ない。」
と却下されてしまった。
そのまま唇を塞がれ、机にぶつかる。上に置かれた書類が無造作に散らばっていった。
拾わなければ、と伸ばした手を抑えられる。
いきなり始まったな、と思うがいつもの事なので頭を切り替える。
まだ私はこの関係には慣れていない。彼とは幼馴染みで、小さい頃はお兄様と呼んでいた相手だ。
いつか結婚するかもとは思っていたが、子どもがどうやって出来るかも知らなかった私は、こんなことをするなんて思ってもみなかった。
するり、と冷たい手が私が履いていたスカートの中に入り込んでくる。
チュニックの下に着ているシュミューズが太もも辺りでヒラヒラと所在なげに動くのを感じた。
スーッと脚の付け根を触られて、ビクリと身体が反応してしまう。
そのまま秘花を触られるが、正直いつもの香油も使ってないのに、まだ濡れている訳はない。
彼の手を胸に運び揉んで貰うように促す。
始まってしまったものは仕方ないが、このまま挿入されたのでは痛くて仕方ない。
何とかしなくては。
たまに気合いで濡らせみたいなことを言ってくる男性がいるが、気合いとかいう問題ではないので無理な要求は止めて欲しい。
ろくに触れ合ってもないのに無茶だ。
自分で服をはだけさせ、彼のトラウザーズ(ゆったりとしたズボン)をずらし、股間を露出させ跪き口に含んだ。
はだけた服の隙間から滑り込んできた手の平が、優しく乳頭を転がす。
「んっ」
鼻にかかったような声が漏れるが、此処は執務室であったと思い出し、声を出さないように細心の注意を払う。
水音だけが部屋に響き、たまに身体をくねさせては反応を楽しんで貰う。
「もう良い」
と口から引き抜かれ、立たされて机に上半身を付けさせられる。
そのまま後ろから挿入される。
彼の物は少し大きいので、メリメリと食い込みながら入ってきて苦しい。
深く息を吸って耐える。
少し時間が経ち馴染んでくると、彼が動き始めた。
淡々とした動きだが、中を抉られるような感覚に、声が出そうになるのを手で抑えて我慢する。
時折、近くを通る使用人の声や衣擦れの音に余計に緊張した。
向こうからしても何をしているかは分かってはいるだろうが、それでも出来るだけバレたくはない。
机の横にあるカウチの上に移動させられて、くるりと向きを変えて仰向けにされ再び挿入される。
息が漏れて彼の耳にかかる。
「殿下。リリス様。紅茶をお持ちしましたが。」
先程出ていった執事が戻ってきてお茶の用意が出来たと告げる。
今入ってこられては困る。
そう思って第二王子を見上げるが、何を考えているのか分からない瞳に見つめ返され困惑する。
口を読めば、『お前が答えろ。』との事だった。
この野郎くそ野郎とは思うが、このままでは入って来てしまう。仕方なしに返事をする。
「ありがとうっ、ございっますっ!........(ちょっと動かないで貰えませんか。)そこにっ!置いておいてくださいっ!」
答える間も案の定というか、動きを止めてくれないので、変な声が出ないようにした結果、妙に声が上ずってしまった。
そこに、と言ってもそとは廊下だ。
完全に気が付かれたと思って、第二王子を睨むが気にする様子もない。
「畏まりました。」
良く出来た執事で、こちらの様子に触れること無く去っていってくれた。
「ほら。誰もいなくなった。」
だからもう大丈夫だろうと激しく動かれる。首を振って駄目だとアピールしてみるが効果は薄かった。
羞恥に涙が浮かんで来るが、乳頭を摘ままれ二度三度と達してしまい、小さく声が漏れるのを耐えることが出来ない。
頭がフワフワとしてきたところで、彼が出して終わった。
引き抜かれると、ドロリと白濁液が垂れてくる。
流石に舐めて掃除しろとは言われずに、手触りの良いハンカチを貰う。
「それで拭け、」
服を整えながら言われるが、流石に絹で拭くようなものではないことは分かる。
結局ハンカチは返し、マジックボックスからガーゼを出して拭いた。
衣服を整え、紅茶を取りに行き二人で休憩する。
無言の空気が流れるが、気まずさはなかった。
王子は紅茶を飲んだ後、少し寝ると言ってそのままカウチで寝てしまったので私は散らばった書類の片付けや掃除などをして過ごした。
私は王子の寝顔を見て、この表情は小さい頃と余り変わってないなと思いながら見つめていた。
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