金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

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リリスとしての仕事 第一王子の場合

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次の日。


宿を出る。

ローブを目深に被ったまま、人目につかないように街を出る。

長い街道が続いていて、人通りはそれなり。

人の多いところで転移魔法を使うと、間違えて魔法陣に乗ってしまった人を巻き込む可能性もあるので、ある程度の広さの誰もいない場所で魔法を展開する必要がある。


転移魔法は移動に時間が掛からず便利だが、その分、制約もあって近距離の移動なら歩くか飛んでいった方が早かったりして、少し使い勝手が悪い。


人の少ない森に入り、魔力を練って魔方陣を展開させる。


魔力の色は人によって違う。私の魔力は紫色で、魔法を発動させると必ず紫色に光る。

魔法使いが隠密行動に向かない理由が、魔法を発動させる時に魔力が光ってしまう為だという。

どんなに鍛練を詰んでも、これは抑えることが出来ない。寧ろ魔力が強ければ強いほど光は強くなってしまうので、強い魔法使いほど隠密行動は向かないのである。


光輝く転移魔方陣に乗るとすぐに景色が変わる。

転移魔法は距離に応じて使う魔力も増えるが、まだ成長期とも言える私の魔力は増え続けている。

ある程度の距離なら疲れなくなっていた。

こういったところは魔力が無尽蔵に増え続けるという王族の血が入っていることに感謝をしなければならない。


王都近くの草原地帯に転移すると王都を囲む城壁に向かって歩き出す。

今回は『リリス』として仕事に来たので、門で検閲をしている兵士に例の懐中時計を見せて中に入る。

兵士は興味本位でか私の顔を覗こうとしていたが、もう一人の兵士に止められていた。

『王子のお気に入りだ』と耳打ちしているのが聞こえる。


娼婦は差別され蔑まれる職業だ。それは別に『公娼』であっても変わらない。

私も公爵令嬢であったときには、娼婦という職業に何となく汚いイメージを持っていた。


娼婦なんてやっている女には何をしても良いと思われていて、実際店の外で乱暴されたという女の話をよく聞いた。

衛兵も見ていたが止めに入ることも無かったというのだから、酷い話である。


それでも王都で私に手を出したりすれば、第一王子が黙ってはいないだろう。

私が他の貴族を客として取るのも嫌がる男だ。しかし、仕事だといえば納得はしてくれるが、仕事でなくただ襲われたとなれば話は別だ。相手を牢獄に入れるくらいのことはするだろう。

女一人のためにそこまですることは、この世の常識では、おかしいことだと分かっていても。

アホな男である。



********


そのアホな男に会うために私は王都に来た。

第一王子は特別金払いが良い。以前財政を傾けてから、呼ばれる回数は減ったが、それでも一晩相手をすれば暫く働かなくても暮らしていけるだけの金額は貰える。


いつも王子と落ち合うために使っている宿屋に入る。相手が第一王子なのでセキュリティ的な意味でも下手な所に泊まるわけにもいかない。

都で一番の宿であるが、私が宿代を払うわけではないので遠慮はしなくていいのが気が楽だ。


王子宛の手紙を宿の者に預けると、心得ている恭しく持って行った。


夕方くらいになれば王子が来るだろう。昼間は公務をしている筈だ。

私と会うことを王は禁止にはしなかったが、王族としての務めを果たすことを王子に求めた。


王子が来るまでゆっくり魔導書を読む。

此処のところ少し忙しかったので、こういった高級宿でゆっくり出来るのは嬉しかった。


気が付くと寝てしまっていた。

少し日が傾きかけてきたので王子を迎える準備をする。


まずはお風呂に入る。お湯を水魔法と火魔法を使い貯めて、性的に刺激する特別な薫りの香油を滴す。


身体に薫りを染み込ませて、肌を磨く。


15歳の時に逃亡生活で痩せた私の身体は、19歳になった今、公爵令嬢だった時よりも大きく発育していた。主に胸が。

手入れをされた肌は白く、毛穴は見られない。お湯から出た後は乾燥をしないように、お湯に滴したものと同じ香油を練り込んでいく。


髪の毛もブラシをかけて丁寧に整えておいた。


白いレースのネグリジェを着る。大事な所が透けているが、王子はこういった物が好みなのだ。


客の好みに合わせて準備するのも大事な仕事である。それだけの大金を貰っている、というのもあるが。



すっかり空が赤くなった頃、王子が来た。

私と同じ薄い金髪と青い瞳。年は今年でま30歳くらいだっただろうか。親族であるお父様に少し似ているので見るとつい思い出してしまう。

部屋に入ってくるときには、護衛の者はいない。また扉の外で待機しているのだろう。


王子を見て私は三つ指をついて頭を下げた。

彼のことはどちらかといえば嫌いだが、大事なお客様だ。彼が『客』として振る舞うのならば、丁寧に接しなければならない。


「顔を上げよ」


尊大な言い方は変わらない。

お父様はこのような言い方はしなかった。

全く偉ぶるところのなくて、尊敬できる人だった。


顔を上げると、彼の顔が近くにあった。

そのまま口付けをされる。

ぞわり、と鳥肌が立ちそうなのを我慢して、舌を絡めて受け入れる。


そのまま立たされてベッドにもつれ込む。

此処のベッドは柔らかい。昨日の公爵家のベッドよりも寝心地が良いかもしれない。


関係ないことを考えると少し落ち着く。

血が近いからだろうか。私は彼との行為が苦手だ。

私を頻繁に呼ぶ客の中では一番苦手かもしれない。

でも私の家が没落した原因に、この人も一枚噛んでいるかも、という噂を聞いた。

だとしたら許せない。


何か掴むか関係ないと分かるまで、本当は嫌がっているということを悟らせてはいけない。まだ客としてリリスを利用してくれなくては困る。


胸をガシッと掴まれ、乱暴に揉まれる。

痛みに息が漏れるが、快楽と勘違いした男は益々激しくする。

暫くそのまま揉みしだくと満足したのか、ネグリジェのレースの上から胸の頂きを転がされる。

先程とは違い、優しい動きに少し身体が反応してしまう。


「んっ」


自分の声ではないような声がつい出てしまう。

香油の効果が出てきたのだろうか。

先程の香油は、匂いを嗅いだ人に効果があるのは勿論、塗られた方にも効果がある。寧ろ肌から直接吸収しているので、効果が高い。


私の反応が良くなってきて調子が出てきた王子に首筋をなめられながら、下腹部や太ももを撫でられる。


その度に私の身体は軽く跳ねてしまう。


香油で性感を高められた身体は、少しの刺激で反応し、塗れていた。


だらしない声が出るのも抑えられず、王子の服を脱がしていく。

早く欲しいと、思っているように相手には見えなければいけない。

そんな行動を取るのは、この数年で慣れてしまった。


わざとボタンで手間取り、「ふらふらして、難しいです」と甘えてみると、ふっと笑った彼に抱き寄せられて口付けをされる。


片手で私に触れながらネグリジェを丁寧に脱がし、もう片方の手で自分のボタンを外していった。


ズボンと下着を脱ぐと、大きな陰部を差し出される。それを口にくわえて手で扱きながら丁寧に舐めてやると、益々大きくなった。


貴族の女性はこんなサービスはしてくれない。行為中も全く動かない所謂マグロな方が多いだろう。


喉の奥をガンガンと突くようなことは、この人はしない。どこまでも私を大切にしてくれているのを、頭に乗せられた暖かい掌から感じる。


それでも私はこの人を愛することは出来ない。


サービスならいつでもしてあげる。私が娼婦として活動している間ならば。


「リリス」


切な気に呼ばれて、「クロウ様」と呼び返す。普段名前を呼ばれることの少ない彼は、それだけで喜んでくれる。


ふいに再び押し倒され、口から抜き出されたそれが奥に突き刺さった。

身体がしっかりと受け入れてしまうのも、もう慣れてしまった。今さら戸惑うこともない。


初めはゆっくりと、徐々に早くなっていく動きに身体の熱さも増していく。

彼の動きに合わせて私も腰を動かす。彼の顔がくしゃりと歪んだ。

暫くすると彼は私の中で動かなくなった。

魔法道具による避妊が完璧なので、妊娠の心配はない。


汗をかき、息も荒い彼が私の隣にゴロンと横たわった。私は怠い身体を起こして予め作っておいた冷茶をコップに入れてベッド横の机に置いた。


「ありがとう」


そう言ってお茶を飲む彼を眺める。

やっぱりお父様に似ている。

だから嫌いなのに憎みきることが出来ないのだろうか。

私は多分、また国の財政を傾けようと思えば出来てしまう。

彼は私に会いたいと言われれば飛んでくるし、いくらだって払ってくれる。欲しいものだって何でも買ってくれるであろう。そんなことを言ったこともないが、何となく分かってしまう。


だから苦手なのだ。長年の付き合いでバカだけどそう悪い人間でもないことは知っている。

だけど、私が知っているのはこの人の『男』の部分だけ。娼婦としてはそれで正解だけど、客の私生活に踏み込んで良いことなんてない。


「少し眠る。」


そう言って私を抱き枕にして眠ってしまう。

これでも第一王子だ。暇なわけがない。公務で疲れているのだろう。

眉間にシワがよっていた。


私が公爵令嬢だったことを彼は知らない。社交界デビューがまだだった私のことを、彼は噂程度でしか知らなかっただろう。


だから、初めて会ったときに私はすぐに気が付いたけど彼は未だに気が付かない。


『お前とは初めて会った気がしないのだ』


と言われたが、それはそうだ。親戚なのだから体格や雰囲気が少し似ている。

顔は私はお母様に似たので王子とは似ていないが、髪の色と瞳の色は同じだった。


もしあの反乱にこの人が関わっていたのならば、許すことは出来ない。

その時は、この人が私に逆らえないことを知っていて、私はこの人に残酷なお願いをするだろう。

そんなことをしなくて良いように、彼がバカな男のままでいてくれればいいのに。

すっかり情の移った私はそう思うのだった。


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