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僕と彼女とその一夜②
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僕の二、三歩前を機嫌よさげな頼子さんが軽い足取りで歩いている。
手を捕まえているから安心して見守っていられるけど、酔っ払った彼女はまるで警戒心がなくてなんだか危なっかしい。
時折振り返っては僕の顔を見てにっこり笑う。つられて僕が微笑むと、さらに嬉しそうにする。
こんな懐いているふうに接してもらうと、もしかして意外と心を開いてもらえてるんじゃないか、なんて勘違いしてしまいそうになる。きっと、酔っ払ったら誰にでもこうなんだと考えて、もう下手な希望は持たないようにした。
すると、いつの間にか隣に戻っていた頼子さんがじっと僕の顔を見て、つんつんと額をつついた。
「眉間にシワできてるよ。悩み事?」
どうやら胸の内が表に出てしまっていたみたいだ。
「うーん、ちょっと……」
ちらりと横目でうかがうと、心配げな表情は普段の歳上らしい雰囲気を少しだけ取り戻している。やっぱり別人ではないんだと当たり前のことに安堵した。
「どうしたの? 聞くよ?」
そんなふうに訊ねる頼子さんは、酔いのせいで昨夜の出来事など忘れているのかもしれない。
僕が悩んでいるのはあなたのことですよ。
少し意地悪な気持ちになって、言うつもりのなかった言葉が口をついた。
「僕のこと、好きですか?」
いや、だからってこれは酔った相手に聞くべきじゃない。
でも僕はずっと不安で、もう限界だったから。
頼子さんは即答した。綺麗な微笑つきで。
「好きだよ」
桃色の唇がその言葉を紡いだ途端、たまらず僕は細い身体を抱きしめていた。加減ができなくて、腕の中から微かな悲鳴が上がる。少しだけ力を抜いた僕は小さな頭に頬ずりした。
なんかもう、これだけでいい。頼子さんが好きだって口にしてくれた事実だけで満足。酔っ払いの戯れ言だってかまわないんだ。
そう思ってしまうほど、僕の精神は参っていた。
ぎゅっと隙間なく身体をくっつけたら、彼女もおずおずと背中に手を回してくれて、触れ合ったところからちょっと駆け足な鼓動が伝わる。
熱いと思っていた頼子さんの体温はいつの間にか僕にも移って、二人で寄り添っているのがとてもとても気持ちがよかった。
彼女が応じてくれたことに舞い上がって、どうせならもっと気持ちよくなりたいなんて、浅ましいことを考えてしまう。
不埒な欲求に突き動かされた僕は、さっと抱擁を解くと彼女の手をつかんで二人きりになれる場所を一心に目指した。
頼子さんの部屋に帰りついたその足でベッドに直行する。
口付けを交わし押し倒したところで、はっと思い出した。
「コンドーム……」
タイミングよく持ってたりするわけがない。
しかもよく考えたら、酔った勢いのセックスなんて頼子さんの意思を無視することにもなるんじゃないか。
こんな千載一遇のチャンス、もう二度とないかもしれないけど、我慢……。
悲壮な決意を固めていたところで、僕の下にいた頼子さんがちょいちょいと袖を引く。
「あるよ」
「え?」
「コンドーム。昨日買っておいたから……」
まるで秘密を打ち明けるように、恥ずかしそうにベッド脇の棚を指す。ドラッグストアのレジ袋に包まれた小箱がそこにあった。
「それって……」
昨日の頼子さんには、僕とそうなるつもりがあったってこと?
――喜びでどうにかなるんじゃないかと思った。
「頼子さん」
思わず呼んだ声は、速まる鼓動のせいで上擦っていた。
「なに?」
ベッドに横たわる頼子さんが僕を見上げる。それだけで胸が熱くて燃えてしまいそうだ。
「僕のこと、好きですか?」
「……うん」
「ちゃんと言葉で言ってください」
僕がせがむと、彼女の頬の赤みがじわっと増した。
「何度も言わせないで……」
顔を隠すようにシーツを引き寄せ、それでもか細い声でまた「好き」と言ってくれた。
こんな彼女を前にして、我慢なんて無理。
僕はシーツを奪いとってベッドから落とすと、頼子さんの唇に吸い付いた。
「ん、ふっ……んぅ……っ」
ちゅっちゅっとわざと音をたてながら滑らかな唇を丹念に味わった。それから隙間に舌を差し込み、奥で恥じらうそれを絡めとる。
頼子さんの舌は薄くて柔らかかった。それに敏感。ちゅうちゅうと吸い立てると「んっ、んっ」と声を漏らして身体がピクピク震える。
彼女の色っぽい声と水音で僕の興奮はぐんぐん高まっていった。
互いの口の周りがべとべとになるまでキスを堪能して、唾液を舐め取りながら頼子さんの首筋へと降りていく。手は胸元をまさぐり、ブラウスのボタンを一つずつ外す。
「はぁ……ん、は……」
デコルテのやわやわとした触れ方は少しもの足りないらしい。もどかしそうな吐息に合わせて腰のあたりがもぞもぞ動いている。それを焦らすようにじっくりと首筋から鎖骨にかけて口付けを繰り返していると、頼子さんの両手が僕の顔を挟んだ。
「も……早く、して」
眉を下げていじらしくおねだりされたら、僕なんてイチコロに決まってる。
「分かりました」
返事をしてから、僕の行動は早かった。
頼子さんの衣服をすべて剥ぎ取り、自分もワイシャツを脱ぎ捨てる。白い肌を赤く染め、恥ずかしがる頼子さんの身体を開かせて愛撫し、キスの雨を降らせた。
その傍らで忍び込ませるように指を秘裂に差し込むと、とろりとした温かい愛液に触れて僕は嬉しくなった。指をさらに押し進めると、蜜壷は抵抗なくするりと受け入れ、さらにもっとと誘い込むようにひくひくうごめいた。
「すごい。頼子さん、ここもう入れそう」
まだ前戯を始めたばかりなのに、濡れやすいんですね。
とは口に出さなかったけれど、十分伝わったようだ。頼子さんが真っ赤になった顔を両手で押えた。
「そういうの、教えてくれなくていいからっ。オミくんも早く脱いで」
顔だけじゃなく手や肩まで赤くしているのがたまらない。
いつもクールな頼子さんがベッドではこんなにも可愛らしいなんて。彼女が望むなら、めちゃくちゃ丁寧に尽くしてあげたくなる。
そんな惚けたことを考えながら、ベルトのバックルに手をやったとき、下半身の異変に気がついた。
「あれ……?」
――勃ってない。
手を捕まえているから安心して見守っていられるけど、酔っ払った彼女はまるで警戒心がなくてなんだか危なっかしい。
時折振り返っては僕の顔を見てにっこり笑う。つられて僕が微笑むと、さらに嬉しそうにする。
こんな懐いているふうに接してもらうと、もしかして意外と心を開いてもらえてるんじゃないか、なんて勘違いしてしまいそうになる。きっと、酔っ払ったら誰にでもこうなんだと考えて、もう下手な希望は持たないようにした。
すると、いつの間にか隣に戻っていた頼子さんがじっと僕の顔を見て、つんつんと額をつついた。
「眉間にシワできてるよ。悩み事?」
どうやら胸の内が表に出てしまっていたみたいだ。
「うーん、ちょっと……」
ちらりと横目でうかがうと、心配げな表情は普段の歳上らしい雰囲気を少しだけ取り戻している。やっぱり別人ではないんだと当たり前のことに安堵した。
「どうしたの? 聞くよ?」
そんなふうに訊ねる頼子さんは、酔いのせいで昨夜の出来事など忘れているのかもしれない。
僕が悩んでいるのはあなたのことですよ。
少し意地悪な気持ちになって、言うつもりのなかった言葉が口をついた。
「僕のこと、好きですか?」
いや、だからってこれは酔った相手に聞くべきじゃない。
でも僕はずっと不安で、もう限界だったから。
頼子さんは即答した。綺麗な微笑つきで。
「好きだよ」
桃色の唇がその言葉を紡いだ途端、たまらず僕は細い身体を抱きしめていた。加減ができなくて、腕の中から微かな悲鳴が上がる。少しだけ力を抜いた僕は小さな頭に頬ずりした。
なんかもう、これだけでいい。頼子さんが好きだって口にしてくれた事実だけで満足。酔っ払いの戯れ言だってかまわないんだ。
そう思ってしまうほど、僕の精神は参っていた。
ぎゅっと隙間なく身体をくっつけたら、彼女もおずおずと背中に手を回してくれて、触れ合ったところからちょっと駆け足な鼓動が伝わる。
熱いと思っていた頼子さんの体温はいつの間にか僕にも移って、二人で寄り添っているのがとてもとても気持ちがよかった。
彼女が応じてくれたことに舞い上がって、どうせならもっと気持ちよくなりたいなんて、浅ましいことを考えてしまう。
不埒な欲求に突き動かされた僕は、さっと抱擁を解くと彼女の手をつかんで二人きりになれる場所を一心に目指した。
頼子さんの部屋に帰りついたその足でベッドに直行する。
口付けを交わし押し倒したところで、はっと思い出した。
「コンドーム……」
タイミングよく持ってたりするわけがない。
しかもよく考えたら、酔った勢いのセックスなんて頼子さんの意思を無視することにもなるんじゃないか。
こんな千載一遇のチャンス、もう二度とないかもしれないけど、我慢……。
悲壮な決意を固めていたところで、僕の下にいた頼子さんがちょいちょいと袖を引く。
「あるよ」
「え?」
「コンドーム。昨日買っておいたから……」
まるで秘密を打ち明けるように、恥ずかしそうにベッド脇の棚を指す。ドラッグストアのレジ袋に包まれた小箱がそこにあった。
「それって……」
昨日の頼子さんには、僕とそうなるつもりがあったってこと?
――喜びでどうにかなるんじゃないかと思った。
「頼子さん」
思わず呼んだ声は、速まる鼓動のせいで上擦っていた。
「なに?」
ベッドに横たわる頼子さんが僕を見上げる。それだけで胸が熱くて燃えてしまいそうだ。
「僕のこと、好きですか?」
「……うん」
「ちゃんと言葉で言ってください」
僕がせがむと、彼女の頬の赤みがじわっと増した。
「何度も言わせないで……」
顔を隠すようにシーツを引き寄せ、それでもか細い声でまた「好き」と言ってくれた。
こんな彼女を前にして、我慢なんて無理。
僕はシーツを奪いとってベッドから落とすと、頼子さんの唇に吸い付いた。
「ん、ふっ……んぅ……っ」
ちゅっちゅっとわざと音をたてながら滑らかな唇を丹念に味わった。それから隙間に舌を差し込み、奥で恥じらうそれを絡めとる。
頼子さんの舌は薄くて柔らかかった。それに敏感。ちゅうちゅうと吸い立てると「んっ、んっ」と声を漏らして身体がピクピク震える。
彼女の色っぽい声と水音で僕の興奮はぐんぐん高まっていった。
互いの口の周りがべとべとになるまでキスを堪能して、唾液を舐め取りながら頼子さんの首筋へと降りていく。手は胸元をまさぐり、ブラウスのボタンを一つずつ外す。
「はぁ……ん、は……」
デコルテのやわやわとした触れ方は少しもの足りないらしい。もどかしそうな吐息に合わせて腰のあたりがもぞもぞ動いている。それを焦らすようにじっくりと首筋から鎖骨にかけて口付けを繰り返していると、頼子さんの両手が僕の顔を挟んだ。
「も……早く、して」
眉を下げていじらしくおねだりされたら、僕なんてイチコロに決まってる。
「分かりました」
返事をしてから、僕の行動は早かった。
頼子さんの衣服をすべて剥ぎ取り、自分もワイシャツを脱ぎ捨てる。白い肌を赤く染め、恥ずかしがる頼子さんの身体を開かせて愛撫し、キスの雨を降らせた。
その傍らで忍び込ませるように指を秘裂に差し込むと、とろりとした温かい愛液に触れて僕は嬉しくなった。指をさらに押し進めると、蜜壷は抵抗なくするりと受け入れ、さらにもっとと誘い込むようにひくひくうごめいた。
「すごい。頼子さん、ここもう入れそう」
まだ前戯を始めたばかりなのに、濡れやすいんですね。
とは口に出さなかったけれど、十分伝わったようだ。頼子さんが真っ赤になった顔を両手で押えた。
「そういうの、教えてくれなくていいからっ。オミくんも早く脱いで」
顔だけじゃなく手や肩まで赤くしているのがたまらない。
いつもクールな頼子さんがベッドではこんなにも可愛らしいなんて。彼女が望むなら、めちゃくちゃ丁寧に尽くしてあげたくなる。
そんな惚けたことを考えながら、ベルトのバックルに手をやったとき、下半身の異変に気がついた。
「あれ……?」
――勃ってない。
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