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選択の時
七
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刺せば、彼らのどちらかは消滅してしまう。そんなの……。
しかし、包丁を投げ捨てた。ミルビーとユキナリは目を見開いて私を見守る。私はチルギたちに向き直った。
「私は神にはなりません。ミルビーも、なりません!」
「ほう、どうしてですか?」
チルギが目を細め、私を睨みつけた。ミルビーを横目で窺うと、彼は首を横に振った。
「それは出来ないよ。ボクは」
ミルビー。呼び、彼が口を噤むのを見て私は喋り始めた。
「ミルビー。あなたは……ユキナリと同じことをしようとしているんだよ。罪から逃げて消えようとしてる」
ミルビーは驚き、私を見据えた。そのまま続けた。
「私、あなたは感情なんかないんだって思ってた。けど違う、あなたには思い出がないから、感情もなかった。きっと、あなたは家族を殺した。その瞬間に全てを失ったんだよね。……ミルビー、葛藤ミキサーで私に言ったことを覚えてる? あなたは私と自分を重ねたんだよ。でもね、私は父を刺してない」
ミルビーは控えめに笑った。そんな気がした。小さく呟いて、君には感情があるから、と付け加える。
しかし、包丁を投げ捨てた。ミルビーとユキナリは目を見開いて私を見守る。私はチルギたちに向き直った。
「私は神にはなりません。ミルビーも、なりません!」
「ほう、どうしてですか?」
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「それは出来ないよ。ボクは」
ミルビー。呼び、彼が口を噤むのを見て私は喋り始めた。
「ミルビー。あなたは……ユキナリと同じことをしようとしているんだよ。罪から逃げて消えようとしてる」
ミルビーは驚き、私を見据えた。そのまま続けた。
「私、あなたは感情なんかないんだって思ってた。けど違う、あなたには思い出がないから、感情もなかった。きっと、あなたは家族を殺した。その瞬間に全てを失ったんだよね。……ミルビー、葛藤ミキサーで私に言ったことを覚えてる? あなたは私と自分を重ねたんだよ。でもね、私は父を刺してない」
ミルビーは控えめに笑った。そんな気がした。小さく呟いて、君には感情があるから、と付け加える。
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