241 / 246
選択の時
七
しおりを挟む
刺せば、彼らのどちらかは消滅してしまう。そんなの……。
しかし、包丁を投げ捨てた。ミルビーとユキナリは目を見開いて私を見守る。私はチルギたちに向き直った。
「私は神にはなりません。ミルビーも、なりません!」
「ほう、どうしてですか?」
チルギが目を細め、私を睨みつけた。ミルビーを横目で窺うと、彼は首を横に振った。
「それは出来ないよ。ボクは」
ミルビー。呼び、彼が口を噤むのを見て私は喋り始めた。
「ミルビー。あなたは……ユキナリと同じことをしようとしているんだよ。罪から逃げて消えようとしてる」
ミルビーは驚き、私を見据えた。そのまま続けた。
「私、あなたは感情なんかないんだって思ってた。けど違う、あなたには思い出がないから、感情もなかった。きっと、あなたは家族を殺した。その瞬間に全てを失ったんだよね。……ミルビー、葛藤ミキサーで私に言ったことを覚えてる? あなたは私と自分を重ねたんだよ。でもね、私は父を刺してない」
ミルビーは控えめに笑った。そんな気がした。小さく呟いて、君には感情があるから、と付け加える。
しかし、包丁を投げ捨てた。ミルビーとユキナリは目を見開いて私を見守る。私はチルギたちに向き直った。
「私は神にはなりません。ミルビーも、なりません!」
「ほう、どうしてですか?」
チルギが目を細め、私を睨みつけた。ミルビーを横目で窺うと、彼は首を横に振った。
「それは出来ないよ。ボクは」
ミルビー。呼び、彼が口を噤むのを見て私は喋り始めた。
「ミルビー。あなたは……ユキナリと同じことをしようとしているんだよ。罪から逃げて消えようとしてる」
ミルビーは驚き、私を見据えた。そのまま続けた。
「私、あなたは感情なんかないんだって思ってた。けど違う、あなたには思い出がないから、感情もなかった。きっと、あなたは家族を殺した。その瞬間に全てを失ったんだよね。……ミルビー、葛藤ミキサーで私に言ったことを覚えてる? あなたは私と自分を重ねたんだよ。でもね、私は父を刺してない」
ミルビーは控えめに笑った。そんな気がした。小さく呟いて、君には感情があるから、と付け加える。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
夜通しアンアン
戸影絵麻
ホラー
ある日、僕の前に忽然と姿を現した謎の美少女、アンアン。魔界から家出してきた王女と名乗るその少女は、強引に僕の家に住みついてしまう。アンアンを我が物にせんと、次から次へと現れる悪魔たちに、町は大混乱。僕は、ご先祖様から授かったなけなしの”超能力”で、アンアンとともに魔界の貴族たちからの侵略に立ち向かうのだったが…。
こわくて、怖くて、ごめんなさい話
くぼう無学
ホラー
怖い話を読んで、涼しい夜をお過ごしになってはいかがでしょう。
本当にあった怖い話、背筋の凍るゾッとした話などを中心に、
幾つかご紹介していきたいと思います。

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。
現在 100話 越え。
エブリスタ・カクヨム・小説家になろうに同時掲載中
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
【総文字数 700,000字 超え 文庫本 約7冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
まばたき怪談
坂本 光陽
ホラー
まばたきをしないうちに読み終えられるかも。そんな短すぎるホラー小説をまとめました。ラスト一行の恐怖。ラスト一行の地獄。ラスト一行で明かされる凄惨な事実。一話140字なので、別名「X(旧ツイッター)・ホラー」。ショートショートよりも短い「まばたき怪談」を公開します。
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる