魂選塔

中釡 あゆむ

文字の大きさ
上 下
239 / 246
選択の時

しおりを挟む
「ユキナリ……? それが、この人の名前なの?」


私はミルビーの方を見ながら、Xを指さした。ミルビーは頷く。


「葛藤ミキサーで一緒に入ったでしょ、彼の葛藤を見た。いや、ボクはそれよりも前に、彼の名前を知っていた……。今思えば、思い出の中に入った子の友達だもんね。だから、妙に彼に懐かしさを感じたんだね」


うんうんとミルビーは頷き、なにか一人で納得しているようだった。私は首を傾げながら、震え始めたユキナリを見つけた。一人二役のように動いていて忙しそうだ。


「うるさい! ああそうだよ、そうさ、ここでもヒーローを殺した。ぼくは君の手を借りて、いろんな人たちを消した! だって憎いんだ! なんでもない人達が、ぼくをいじめてた人達に見えてきて! 殺したって、消したって、憎悪が消えない……」


「だから殺人鬼のボクの手を借りた。よかったね、君は自分を殺すことに成功したんだ」


「何だって?」


「親友を殺した罪でボクに殺してくれとせがみ、ここでもう一度チャンスを与えられたのに、また、消したんだよ。ボクの手を借りて」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

透影の紅 ~悪魔が愛した少女と疑惑のアルカナ~

ぽんぽこ@書籍発売中!!
ホラー
【8秒で分かるあらすじ】 鋏を持った女に影を奪われ、八日後に死ぬ運命となった少年少女たちが、解呪のキーとなる本を探す物語。✂ (º∀º) 📓 【あらすじ】 日本有数の占い師集団、カレイドスコープの代表が殺された。 容疑者は代表の妻である日々子という女。 彼女は一冊の黒い本を持ち、次なる標的を狙う。 市立河口高校に通う高校一年生、白鳥悠真(しらとりゆうま)。 彼には、とある悩みがあった。 ――女心が分からない。 それが原因なのか、彼女である星奈(せいな)が最近、冷たいのだ。 苦労して付き合ったばかり。別れたくない悠真は幼馴染である紅莉(あかり)に週末、相談に乗ってもらうことにした。 しかしその日の帰り道。 悠真は恐ろしい見た目をした女に「本を寄越せ」と迫られ、ショックで気絶してしまう。 その後意識を取り戻すが、彼の隣りには何故か紅莉の姿があった。 鏡の中の彼から影が消えており、焦る悠真。 何か事情を知っている様子の紅莉は「このままだと八日後に死ぬ」と悠真に告げる。 助かるためには、タイムリミットまでに【悪魔の愛読書】と呼ばれる六冊の本を全て集めるか、元凶の女を見つけ出すしかない。 仕方なく紅莉と共に本を探すことにした悠真だったが――? 【透影】とかげ、すきかげ。物の隙間や薄い物を通して見える姿や形。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 表紙イラスト/イトノコ(@misokooekaki)様より

迷い家と麗しき怪画〜雨宮健の心霊事件簿〜②

蒼琉璃
ホラー
 ――――今度の依頼人は幽霊?  行方不明になった高校教師の有村克明を追って、健と梨子の前に現れたのは美しい女性が描かれた絵画だった。そして15年前に島で起こった残酷な未解決事件。点と線を結ぶ時、新たな恐怖の幕開けとなる。  健と梨子、そして強力な守護霊の楓ばぁちゃんと共に心霊事件に挑む!  ※雨宮健の心霊事件簿第二弾!  ※毎回、2000〜3000前後の文字数で更新します。  ※残酷なシーンが入る場合があります。  ※Illustration Suico様(@SuiCo_0)

渡る世間はクズばかり

翠山都
ホラー
漆器や木工を扱う製造販売会社「タケバヤシ」に勤める渡世里佳子は、オンライン販売部門を担当している。彼女のところには日に何件ものクレーム電話が持ち込まれるが、その大半はお客の理解不足だったり理不尽な要求だったりで、対応に神経をすり減らす毎日が続いていた。 ある日、里佳子は帰宅途中に見知らぬ祠を発見する。つい出来心でその祠に「この国から、クズみたいな人間がいなくなりますように」とお願いをした日から、彼女の日常は少しずつ変質しはじめる……。

ミコトサマ

都貴
ホラー
神座山並町でまことしやかに囁かれる、白い着物に長い黒髪の女の幽霊ミコトサマの噂。 その噂を検証する為、綾奈は高校の友人達と共に町外れの幽霊屋敷を訪れる。 そこで彼女達は、背筋が凍えるような恐ろしい体験をした。 恐怖はそれで終わらず、徐々に彼女達の日常を蝕みはじめ―…。 長編の純和風ホラー小説です。

・・その狂気は伝染する・・

華岡光
ホラー
蔵の中から発見されたある古い桐の箱、しかし、その箱は江戸時代の頃のある怨念が閉じ込められた曰く付きの決して開けてはいけない秘密の箱だった・・ 過去から現代へと続く呪いの自縛が今解き放たれようとしてる。

ショートホラーストーリー「帰宅途中に」

『むらさき』
ホラー
短い短編です。帰宅途中などに読んでもらうと幸いです。

二談怪

三塚 章
ホラー
「怖い話を教えてくれませんか」  動画配信者を名乗る青年は、出会う者にネタとなりそうな怖い話をねだる。 ねだられた者は、乞われるままに自身の奇妙な体験を語る。 同世界観の短編連作。

知らない子

ROSE
ホラー
これは私が小学生の頃の話。 私の周りではおかしなことがたくさんあった。 小学校を舞台にしたショートショートです。

処理中です...