魂選塔

中釡 あゆむ

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選択の時

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Xは物憂いげに目を伏せた。パステルブルーの瞳だけは私と目が合っていて、ふと、彼は……生前もそうだったらしいが、どうしていつも問いかけていたのか、気になった。ぽつりぽつりと話す彼の声に誰もが耳を傾けていた。


「死んでからも、男を見守った。男は殺人鬼らしく次もまた人を殺した。生きたいか、と問いかけてね。その理由として、手にかけていたのは自殺者のみだった。生きたいか、そう聞けば、いいえ、と答えた者だけだ。はい、と言えば彼は包丁を提げた。まるで裏切られたように。……ますます、ミルビーが気になったぼくは、一日中彼につきまとう。そうして彼が最後に訪れたのは、とある家だった」


聞きながら、ソヨカのときも思ったが、死んでから覚えているとは、どういうことだろう、と考えた。残す脳がないのに……。


私は自分が、脳もないのに考えていることに気がついた。もしかしたら、脳がなくても、覚えるのではないか。


私だってこうやって考え、未絽留とのことを覚えている。残す脳がなくても感覚で、そして言葉として具現化し、記録することで、それは新たに「覚える」ということが出来るのではないだろうか。


しかし有限ではない。それこそがまさに、脳がないから……。
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