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選択の時
一
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記憶喪失……。ミルビーがぽつりと呟き、困惑した顔で後ずさった。みんな驚いているようだったが、それなら、とリスリが前に出た。
「確かに……ミルビーの人格が変化したのにも納得ができる。でも、それならXはどうして輪廻転生していないんだ? 他殺者なら普通にできるんじゃないのか?」
リスリがチルギを見ながら問いかけたことで、チルギも何とか頷いたようだった。私も頷き、彼女を一瞥してミルビーに視線を戻した。
「Xは四十九日を迎えてもその日、天界へ行くことができなかったんだと思う。ミルビーの魂に融合してたから。ねえ、X。あなた、五十日目の霊でしょう」
私はミルビーの半分の方、黒髪の彼を見つめた。五十日目、と言うのは自分で言っていたことだ。
もうひとつ、四十九日を超えた魂は霊になり、色々思い出す、と聞いた。チルギたちがその例だろう、思い出し、忘れそうになって思い出し続けたはずだ。
しかしXはその上でずっとミルビーの中に潜んでいた。二つの魂は混ざりあって一体化していたのに、葛藤ミキサーに入って二つにわかれてしまったのだ。彼が葛藤ミキサーに入るのを嫌がったのはそれを察したからだろう。彼はあの中で、自分の葛藤を見たのだ。
「確かに……ミルビーの人格が変化したのにも納得ができる。でも、それならXはどうして輪廻転生していないんだ? 他殺者なら普通にできるんじゃないのか?」
リスリがチルギを見ながら問いかけたことで、チルギも何とか頷いたようだった。私も頷き、彼女を一瞥してミルビーに視線を戻した。
「Xは四十九日を迎えてもその日、天界へ行くことができなかったんだと思う。ミルビーの魂に融合してたから。ねえ、X。あなた、五十日目の霊でしょう」
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もうひとつ、四十九日を超えた魂は霊になり、色々思い出す、と聞いた。チルギたちがその例だろう、思い出し、忘れそうになって思い出し続けたはずだ。
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