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謎が解かれる
九
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「もしかして、あなたの魂に、別の魂が乗り移っているんじゃない?」
ミルビーは驚いたように黒目とパステルブルーの目を見開いた。
「しかもその人は他殺者。自殺者で空っぽのあなたが思い出はある、と思った原因でもあるんだよね。仮に、Xとしましょう。Xは他殺者で、自分のことは覚えていない。けれど他人のことは覚えている、関わった人、関わったもの、それら全てを。あなたはそれを自分のものだと思い込んだのよ」
「でも、ボクは……初めから自分の姿を覚えていたし、君たちと同じように真っ白にもなれた……」
「それが乗り移っているのではないか、と思ったポイントだよ。ミルビー自体が四十九日の魂だとしたら? だとしたらあの姿は正解なんだよ。まんまとミルビーの姿になれたのはXがあなたを覚えていたから」
ミルビーは信じられないと言ったように俯き、震え始めた。それから黒髪の方を触り始め、感触を確かめているようだった。慌てて顔を上げ、私に掴みかかつた。
「じゃあ、ボクが自分の思い出を買えなかったのはっ?」
「そう、ここに集められたのは今日この日の四十九日を迎えた自殺者たちの思い出だけ。自殺者だからあなたはここに入れたのだけど、思い出がなかったから買えなかった。……だから、私はこう考えたの。あなたが自分の思い出を持ったまま死んだわけじゃないから、だと。つまり、あなたは記憶喪失で自殺したのよ」
ミルビーは驚いたように黒目とパステルブルーの目を見開いた。
「しかもその人は他殺者。自殺者で空っぽのあなたが思い出はある、と思った原因でもあるんだよね。仮に、Xとしましょう。Xは他殺者で、自分のことは覚えていない。けれど他人のことは覚えている、関わった人、関わったもの、それら全てを。あなたはそれを自分のものだと思い込んだのよ」
「でも、ボクは……初めから自分の姿を覚えていたし、君たちと同じように真っ白にもなれた……」
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